科学的アプローチを軽視する人たち

世の中のどの領域にも専門家がいる。その人たちは、ある専門領域について他の人々よりもはるかに高い専門性を有することでお金を稼いでいる。

例えば、ある程度M&Aに慣れている投資銀行の人が「今回の買収案件、ものすごい節税スキームを思いついたんです!」と案を持ってきたとする。その時、まず行うのは、信頼できる税理士に確認することであり、それを行う前にその案に飛びつく人はあまりいない(期待はするけど)。

そういう訓練を受けているはずのビジネスの人たちが、下の仮説を高く評価しているのに驚く。

この仮説は立証されていない。かつ、高橋教授は医学博士ではあるけど感染症の専門家ではない。専門家の多くがこの仮説の不足点を指摘している。

ある仮説の「説得力が高い」と僕たち素人が感じることと、その仮説が確かである蓋然性の相関は低い。というのも、仮説にとって都合のよいデータだけを集めれば、素人を説得することは容易だから。それっぽいけど実は立証されなかった仮説なんて沢山ある(なお、ある仮説の棄却も科学の進歩にとっては極めて意味のあることだ)。

仮説は科学的に誠実な方法で立証されてこそ意味を持つし、それ以前の段階では占いにしか過ぎない。占いに依拠して重要な行動方針を決めるのは、(そういう人もいるけど)科学的なアプローチを否定することだ。

だけど、世界中で政治家や大きな企業の経営者が科学を軽視しているように感じている。そのために割を食うのは最新鋭の医療設備へのアクセスを持っている要人たちではなく、それを持たない普通の人たちであって、それに静かな怒りを感じている。


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