他人から信託されるために必要なこと

僕の社長として最も大切な仕事は、他人から様々なものを託されることだ。投資家からはお金を託されるし、一緒に働く人からは時間(人生の一部だ)を託されるし、応援してくれる人からはその人の社会的な信用を託される。 僕には自分がつくりたい世界の姿があるし、そのためには結構な数の人から信託される必要がある。しかも、文化や民族、宗教が違う人たちから。

起業して様々な壁にぶつかりながら、ずっと考えていたのは、どうやったら託される人になるのか、ということだった。この点に関連して常に念頭に置いていたのは孫正義さんとイーロン・マスク。なぜ彼らは一部で「いつかあの会社は潰れる」と言われながら、投資家と従業員の信任を得続けることができたのか。もしくはマハトマ・ガンジーやキング牧師。なぜ人々は、死や投獄を覚悟して彼らに命を預けたのか。それをずっと考えていた。

問いかけを始めてからもう2年くらいになり、ようやく暫定的に答えを見出すことができたので、とりあえず書いておく。なお、想定しているのは先にあげた起業家とか偉大な社会変革者とかで、このnoteではこれらの人をまとめて起業家と書くことにする(よって、世間的な意味での起業家とは異なる)。

信託されるには、魅力のあるビジョンを掲げ、その実現確率が高いと信じてもらえる必要がある。この主観的な実現確率を高めるものは、ビジョンと生活の首尾一貫 、現在および将来における素養、コミットメントの3つだ。これらが揃ってこそ、その起業家は大勢の人から信託されるのではないか。

組織がミッションを達成すると、どのような世界が現れるのか。それによって僕たちの生活はどう変わり、その組織はどう変わるのか。それを多くの人がありありと思い浮かべられるようなストーリーを語る必要がある。まだ起きていない将来の物語をつくる力が起業家には必要だ。

会社のビジョンとミッションは、それを掲げた起業家の原体験やこれまで経験してきたこと、今やっていることに根付いていないといけない。これまでの人生のテーマと守備一貫した事業をしている人を見ると、周囲の人は「この人は本気なんだな」と考える。その人がこれまでの人生でどのような意思決定をしてきたのか、またしてこなかったのかを見れば一目瞭然だ。ガンジーがずっとただの弁護士でいきなりインドの独立運動を始めたって、誰も彼が本気だとは思わなかっただろう。本気であれば成功確率は高い。

首尾一貫しているだけではだめだ。その起業家にはミッションを達成するのに十分な素養があると、周囲から信じてもらえないといけない。必要な素養は事業の性質と組織の発展段階によって変わり続ける。起業直後にそれが全て揃っている人はいないだろうけど、常に理想状態と自分の今の状態のギャップを把握して、そのギャップを埋め続けるために自己変革を続けられないといけない。そして、そういう自己変革ができるかどうかは、これまでのその人が困難に直面したとき、どのようにそれと対峙してきたのかをみれば分かるのだろう。

そして最後はコミットメント。事業の成長を信じている人でないとしないような賭けをしていること。言い換えれば、失敗したら何かを大きく失わないといけない。革命家は失敗したら死ぬ、すなわち文字通り命賭けで仕事しているのでコミットしていることは明確だ。平和な社会における起業家の場合であっても何らかの形でそれを示さないと身の程以上の信託を受けることができない。イーロン・マスクや孫正義さんは負けたら財産のほとんどを失うような勝負をし続けている。起業したての起業家に賭けられるお金は少ないけど、それでも賭けられるものはあるはずで、それを自分なりに考えて差し出す必要があるんじゃないかなと思っている。例えば、ピーターティールは創業社長が給料を取りすぎている会社には投資しないと言っているけど、それも同様の趣旨だと思っている。


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オークン!(クメール語)
93

Taejun

自省録

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コメント1件

自分の夢が笑われる程度ならまだ良い方で、夢を語っても周りが何も言ってくれない、無関心で笑ってくれさえしない、のがもっと問題なのだと痛感していた所でしたので、大変勉強になりました。ピーターティールの言葉で、「スタートアップとは、君が世界を変えられると、君自身が説得できた人たちの集まりだ」というのがあるのを思い出します。
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