「人生の折り返し地点で、僕は少しだけ世界を変えたいと思った。」

今年8冊目。「人生の折り返し地点で、僕は少しだけ世界を変えたいと思った。」

今年は公衆衛生分野も勉強する必要があり、英治出版から献本頂いたので読んでみた。オリセットネットを作った住友化学でアフリカ事業を担当していた著者が、マラリア撲滅NPOに参画するまでのお話。このテーマについて知りたいことはほとんど書かれていなかったけど、読書メモ。

著者自身がノーモアマラリア・ジャパンの専務理事になったとき、まだ著者は住友化学に在籍している。もちろんいわゆる出世街道まっしぐら、という訳ではないとしても、会社に在籍をしてある程度給料の心配をしないで済む状態でNPOをすれば、家族の事情などで大きなリスクを取れない人もこの分野に参画することができる。

ということは、日本で社会起業分野を盛り上げるために、大企業がNPOを作って、そこに社員を投入することは効果的なのかもしれない。多分、そういうNPOを立ち上げて社内でやりたい人を募ったら、手を挙げる人は結構いると思う。それが社会「起業」なのかはさておき、日本で必要なことの一つは裾野の広がりだと思う。


さて、マラリアの話を。

日本でも瘧として知られていたマラリア。発熱からはじまり場合によっては内蔵障害までに至る病気で、特に小さい子どもの場合死に至ることが少なくない。肺炎、赤痢とならんでマラリアは世界の子どもの死因のトップ3位を占めている。マラリアによって亡くなる子どもの数は年間30万人。死には至らないまでも、マラリア罹患のために仕事ができないことなどによる経済損失は1.1兆円になるとされている。

感染経路は明確で、マラリア原虫に感染したハマダラカ。夜に活動をする蚊で、夜に無防備なまま刺されることでマラリアに感染する。殺虫成分を織り込み、薬剤に定期的に漬け込まなくても威力を維持するオリセットネットは、8年くらい前にはマラリア対策の担い手、BOPビジネスの典型として注目を浴びていた記憶がある(少なくとも日本では)。

しかし、著者も書いているように、プロダクト一つだけで問題を解決しようという発想は大抵うまくいかない。ネットをもらったとしても、それが破れても補修していなかったり、子どもを蚊帳の外に放っておいたりして、結局マラリアを防げないことがある。大人が「マラリアは誰でもかかるもので気にする必要はない」という考えを改めなかったり、子どもの生命を本当に大切に思ったりしない限り、すなわち意識改革を伴う仕組み設計がされないかぎり、こういった問題は解決されない。

こういったインセンティブ設計上のまずさにより大量の支援が無駄に終わっていることはよく知られているはずなのだが、今もおなじ失敗が繰り返される。自戒も込めてだけど、自分たちが問題をよく分かっていると思い上がったりはせず、現地の人の(多くの場合決して分かりやすくはない)話を辛抱強く聞きながら、問題に対して真摯に向かい合う姿勢が必要なのだろう。

にも拘らず、本書はこの肝心のインセンティブ設計について、ほとんど沈黙している。個人的にはどういった方法論を採用して、プロダクト一本槍にならない課題解決に取り組んでいるのかを知りたかった。


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Taejun

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