改革の評価は改革後5年が経ってから

会社の立て直しとか経営改善って、その当事者が「私はこれを成し遂げた」とか言っているときでなくて、その目に見える成果が出てから3年とか5年とか経ったあとの状況を見る必要があるんだと思う。

というのも、3年後の数字を見ても、良い改革か悪い改革かがわからないからだ。どちらも数字上は会社が良くなっているように見えるのだけど、良い改革では会社の体質が改善して、好業績が続き、人材が輩出され続ける。一方で、悪い改革は焼畑農業的に会社にある無形資産(取引先との信頼関係とか、心意気に基づいたものづくりへのこだわりに基づくブランドとか)を短期で食いつぶして実現されて、改革が達成されたと言われてから3年〜5年も経つとボロがではじめる。

悪い改革では、例えば、義理人情と信頼関係で働いてきた取引先に強引な交渉をけしかけたりする。そのときも、取引先の人たちは最初の数年は「まあ昔の恩もあるし」と思って大目に見てくれるけど、そのうちにそれは怒りへと変わり、結果として仕入れる品物の質が落ちたりする。もしくは、とてもこだわって作る服がブランドとなっていた会社で、「ブランドの横展開」と称して服以外の様々なものを妥協して作りまくる。最初は人がついてくるけど、長いこと大勢の人をごまかすことは誰にもできないので、そのうち客は離れていく。

こんな「改革」でも、数字の上では3年で不振企業が一気にV字回復したように見える。でも、その本当の評価は5年目〜8年目とかにされるべきものだ。だから、経営者が改革を成し遂げたと主張しているような場合は、その時を見るのでなく、数年置いてから見たほうがよい(もちろん、良い改革をしていても、色んな事情が重なって不調になってしまうこともあるのだろうけど)。

そして、ターンアラウンドをやるファンドで悩ましいことのひとつは、改革の本当の評価は8年とかの時間軸でされるべきものであるのに対し、多くのファンドはそんなに長い年月会社の株を持ち続けられないということにある。圧倒的な情報の非対称性はDDとかでは埋まらないことが多いので、「改革に成功した」とする企業のExitはいつまでも玉石混交となる。


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