やりたい仕事を見つける方法

先日高校生・大学生らと話していて、「やりたいことがないんですけれどもどうしたらいいですか」「慎さんはどうやってやりたいことを見つけたんですか」という質問をもらった。あくまでも少ない経験に基づいてのことだけど、この類の質問は就活とか進学とか転職とかを考えないといけないタイミングで増える傾向にあると思う。

結論からいうと、「ベストな仕事」なんてまず見つからない。むしろ大切なことは、取り組む仕事を決めることだと思う。僕自身、いまの仕事をしているのは、「これをやる」と決めたからであって、絶対にこれが自分にとって最高の仕事だからと思ってのことではない。実際、起業する前には、最後まで複数のビジネスプランが残っていた。

取り組むべき仕事を決める以外の手段が基本的にないのは、(1)世の中に存在する仕事の情報は多すぎるし、(2)自分の素養について理解するのも簡単ではないのに対し、(3)人生は有限だからだ。

まず、ある仕事についてきちんと理解するのには相応に時間がかかる。大抵のケースにおいては、働いてみないと分からないことが多い。でも、人生で転職できる回数は多くても40回くらいだ。さらに、業種はその会社に入れば分かるけれども、職責についての情報は実際にそのポジションになってみないと分からない。往々にして、経営者経験は初期にすることができない。例えば、飲食業の営業社員は向いていないけれども、飲食業の経営者は向いている、なんて人とかもいる。
 もちろん、人の話を聞いたり本を読んだりして、ある程度あたりをつけることはできるけれども、それでも極めて膨大な情報を処理しないといけない。大抵の人の脳みそだとキャパオーバーするだろう。

次に、僕はいまも自分自身のことが完全に分からない。ある程度は理解しているつもりだけれども、それでも自分が何を得意で何が不得意かというのは、40歳になっても発見し続けている。多くの人にとっても同様なのじゃないかと思う。自分のことは意外と分からないものだ。
 それに加えて、自分の好みを理解するのも簡単ではない。好き嫌いというのも、ある程度時間をかけることで変わったりすることがあるからだ。僕が囲碁をある程度好きになったのは、碁を打ち始めて6年くらい経ってからだった。

理論的には、世の中の全ての仕事・職責の情報を把握して、自分の好みや能力も把握して最適解を見出すことができるはずだけれども、有限な人生においてそれができる確率は極めて低い。だから、自分にとって最適な仕事を見つける、というのはそもそも無理な話なんだと思う。

だからこそ、やるべき仕事を決めるのが重要だと思っている。これは、課題解決において、まず仮説を設定してみるのと似ている。業種・職責・自分について、ある程度までの知識をつけて、ある程度まで選択肢を絞り込んだら、「自分はこれをする、なぜならXYZだから」と決めて、一定期間はあまり思い悩まず一生懸命に取り組む。ある程度時間が経ったら、自分の当初仮説を検証する。当初仮説が悪くなかったら今の仕事を続ければいいし、だいぶズレているなと思ったら次を探せばいい。

僕の場合は、20代は学習期間と定義していたので、20代で仕事を選ぶ基準は「資本主義を深く学べること」だった。自分で何かを始めるときには、「意義があると信じられるか」、「自分が他人よりは相対的にうまくできそうなことか」、「ユニークなことか」という三つの基準を立てていた。それでNPOをつくり、起業もした。たらればの話をしてもキリがないけれども、他の仕事をたまたま選び取ったとしても、一生懸命に取り組んでいるんだろうと思う。とても幸いなことに、23歳で就職して以来、会社に行きたくないと思った日は一日もなかった。

学生の頃は選択肢が無限にあるように感じて、だからこそ悩むかもしれないけれども、人生短いのだから、ある程度まで考えたら、行動するほうがずっといいんだと思う。

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