走ることについて。5

川の道フットレース その1

走ることと自分との関係性が変わるにつれ、人がたくさん走るレースがどんどん億劫になっていって、一人で走ることが増えていた。

2012年に参加したレースといえば、会津の伊南川の美しい紅葉を見ながら走る100kmマラソンのみ。これはほぼファンランに近くて、忍者の格好をして、地下足袋のようなVibramの五本指シューズを履いて出場した。この地下足袋シューズのために足が大変なことになり、50km地点からシューズを履き替えて、痛みながらもなんとか完走した。

転機が訪れたのは、その年の末。たまたま参加できることになった、Infinity Ventures Summitというベンチャーのカンファレンスで、小野裕史さんに出会ったことだった。もともと運動をしていなかったのに、一念発起してサハラマラソンを目指してランニングを始め、ウルトラマラソンその他沢山の超人的なレースをすごいタイムで走っている彼の様子は、いつもTwitterで見ていた。

会場で小野さんに会い、「いつもTwitter見ています」とお話をしたところ、小野さんはこう話してくれた。

「じゃあ、一緒に川の道フットレース走らない?」

「小野さんが走るのなら一緒に走ります!」

正直なところ、これがどういうレースなのかを知らなかった僕は、あとでこのレースの概要を知り、衝撃を受ける。川の道フットレースは、荒川と信濃川をつたって東京は葛西臨海公園から、新潟までを走り切るという、太平洋と日本海をつなぐとんでもないレースだった。その総距離は520km、埼玉から長野に入るときは三国峠を越えて入る。

それにしても、ウルトラマラソンのレースの名前にはなぜこうも可愛らしいものが多いのだろう。やっとの思いで走った佐渡のレースの名前は「佐渡島一周エコ・ジャーニーウルトラ遠足」だった。これは「遠足」と書いて「とおあし」と読むらしい。佐渡島の大きさを知らない限り、ゴミ捨てをしながら楽しく散歩する絵しか想像できない。「川の道フットレース」も、その名前からすれば河原をちょっと走るくらいの想像しかできない。

見た目はかわいいけれど、とんでもないモンスターって何かいたな。そうだ、ギズモだ。

皇居を8周したり、つくばまで走っていったりとしながら、レースの出走に向けて、12月から準備を始めていった。

一つだけ、準備段階で迷いがあった。川の道フットレースはGW期間に走るのだけど、その数日前の4月末に、朝まで生テレビへの出演依頼がきていたからだ。

正直なところ、かなり悩んだ。出演依頼を頂いた後、自分のいるNPOである、Living in Peaceのメンバーと話しあう。以下が、主なメールのやりとり(行数詰めや組織内用語だけ修正したものの、全て原文ママ)。

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(出演依頼メールを転送して)慎 wrote to ALL LIP members:
こちら、「調整中なので、少しお待ちください」とお伝え頂けますでしょうか。面白そうではあるのですが、レース直前でこの不健康な時間はどうなのか、悩んでいます。。

H wrote:
広報、宣伝という意味では非常に良い機会かと。慎さんの体調管理を無視するわけではないのですが、出て頂けると嬉しいな、と個人的に思っておりまする。一応意見を書かせて頂きました。あ、無理はしないでくださいね。体が資本ですから^^

K wrote:
そうです、まずは慎さんの体調管理が最優先ですので、慎さんの身体と相談してみてください!あー、でもあのテーマソングの中で慎さんが登場するとこが見たーい見たーい。と、無責任な発言を小さくしてみる。

慎 wrote:
こういう場に出ることって、本当にLIPのような団体のイメージアップに繋がるんですかね。。炎上してTwitterのフォロワーが増えるとは思いますけれども。。議論慣れしているので、誰かに一方的にやられるとは思いませんが、果たしてこういう場所で侃々諤々議論するのが良いのか。

S wrote:
イメージアップかどうかは、わからないし、測れないと思います。むしろ番組にでてイメージアップするにはどうすればいいかを考えたほうが…。慎さんの営業は、LIPが最終的に集められるお金の最大化のためなのでまずは知ってもらわなきゃ、どうにもならないしね。やっぱり、出るんだったらテレビが一番いいな。

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 基本的に、「最後は慎さんが決めたらいいけど、出て欲しい」という意見が大半。一部では、「500km走ることに集中するべきだ、個人の幸せや達成が第一」という意見もあったが、現在副理事長であるIの次の意見を読んだ時に、覚悟を決めた。彼はいつも明晰に物事を説明する。

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I wrote:
LIPへの寄付者拡大への影響を大雑把に試算してみます。朝生の視聴率を3%とすると、1%が120万人相当らしいので、だいたい360万人が見ている計算です。  パネラー10人が視聴者の関心を均等に引いたとしたら、視聴者の10人に1人くらいは慎さんの話を心に留めてくれることになります。つまり36万人。  ここからは完全な推定ですが、夜中のこの時間に起きて討論番組を視聴する人たちは20代~40代の主に男性な気がする。また、ひとりで見ながら、twiiterやら2chやらを読んだり書き込んだりする人も多そう。番組見ながら慎泰俊のことを検索したりLIPのサイトをのぞいたりもしてくれそうで、通常のテレビ番組よりはラジオに近い視聴行動が期待されると思います。  以上の想定のもと、36万人のうち仮に5%がLIPのCMサイトに来てくれたら、1.8万人。これに3月の実績のCM登録率0.3%をかけると、54人がCMになってくれる計算になります。  机上の計算は以上です。コミットメントの達成には寄与してくれるけど、ベースケースを一夜で達成するまではない、というところでしょうか。

慎 wrote:
皆様、諸々のご意見、有難うございました。参加する方向で調整します。結果としてLIPのイメージが変な方向に行ったら、その後は控えれば良い話ですしね。  肝心の体調ですが、ウルトラマラソンの時は、なるべく太陽が出ている時間には走り続けたくて日が沈んだら眠ろうと思っているのですが、9時ー3時で睡眠をとる生活に調整して、その延長線上で参加することにします。なので、金曜日は特別に18時には一回眠って、その後24時に起きるという風にします。

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ウルトラマラソンのレースそのものもそうだけど、予定通りいくことなんて何一つない。寄付が拡大し、子どもがよりよい環境で暮らすことに一歩でも近づくのであれば、それを断るという理由は考えられない。今回の出演依頼は、レース中に大雨がいきなりやってきたようなもので、それに不平を言っても詮無いことだ。それが、僕が走ることから学んできたことの一つだった。状況に文句を言わず、今自分に出来ることをするのに全力を尽くすこと。

そして出演した朝まで生テレビ、変な時間に寝起きしたので最初は眠くてしょうがなく、かつ話に割って入る方法もよく分からなかったが、コーヒーを2杯飲んだのが効いたのか、後半になるにつれて目も覚め、テレビでの討論のやり方も分かってきて、楽しく参加することができた。のってきたところで、番組が終わった。この番組の、寄付拡大への効果は確かにあった。LIPのメンバーたちも、テレビ露出がうまく寄付につながるように、僕が起きているのと同じ時間帯に寝ずにTwitterやFacebookでの発信を続けてくれた。

六本木にあるテレビ局から自宅に帰ってきたのが、4月27日の午前7時頃。

そして、4月30日にレースの日を迎えた。

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