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民間セクターの世界銀行づくり、第二フェーズ開始

誰もが自分の宿命を乗り越えることができる世界をつくることを目指して、民間セクターの世界銀行として世界中の人に金融アクセスを届けることをミッションとして五常・アンド・カンパニーを創業してから4年半が経った。僕たちの目標は、廉価で高品質な金融サービスを2030年までに50カ国1億人以上に届けることだ。

ちょうど今日の日経ウェブ(紙では2月11日)に掲載されたのだけど、シリーズC調達の第一次クローズが無事に終了した。これで累計資本調達額は45億円。感謝。まだ最終クローズまで投資家候補対応がずっと続いているけど、とりあえずまた一歩前に踏み出した感じがする。

これからの事業

ちょうどいい機会なので、これからのことを書いておきたい。

改めて創業時事業計画を見直してみた。日本語版の日付は2014年6月。読んでみると、あまり野心的に過ぎたなと思われる箇所もあるのだけど、大枠では予定通り進んでいることがわかる。

計画は三つのフェーズに分かれていた。
■第一フェーズ:現地でマイクロファイナンス機関を子会社化もしくは設立して事業を始め、経営をきちんと行うこと
■第二フェーズ:テクノロジーを用いてサービスをアップデートする。地域も拡大
■第三フェーズ:全大陸(北米はないかな)に拠点を拡げること

第一フェーズが無事終わった

当時は「本当にマイクロファイナンス機関の子会社化や設立ができるのか」、「途上国企業に対して意味のある経営支援ができるのか(日本の大企業でも苦戦しているのに)」、「この事業に機関投資家のお金がつくのか」などがよく疑問視された。

当時はこういう質問に対して「やってみないと分からない」としか答えようがなかったのだけど、これらは全部クリアできた。4カ国で1,600人の従業員とともに30万人のお客様に金融サービスを届けている。各種KPIも同業他社より優れているので、経営支援もまあうまくいっているのだろう(まだまだ問題多いけど)。

一番苦労したのが資本調達で、一時期までは「僕みたいな人間が途上国でマイクロファイナンスやっていても、機関投資家のお金はつかないのかな」とか不安もあったのだけど、なんとかなった。友人らの「いいか、資本調達は100回大丈夫といえば大丈夫になる」というアドバイス、この期間もらったファンドレイジング上のアドバイスのうち最良のものだったと今も思っている。

グループ全体の資産規模は2019年3月までに200億円になるかな。まだ目標としている事業規模の0.3%程度なんだけど、着実に前進している。創業事業計画では第一フェーズは2017までとなっていたけど、1年ずれ込んだ。

第二フェーズのはじまり

ここから第二フェーズが始まる。目標は大きく二つ。
(1)テクノロジーを用いてマイクロファイナンスのサービスを刷新することと
(2)グローバル経営システムをつくること

ようやくテクノロジーについて話す理由
創業時事業計画ではずっと書いてきたのに(しかも、P2Pファイナンスとかシェアリングエコノミーの本を僕は2012年に書いている)、僕はこれまでほとんどテクノロジーのことを話してこなかった。なぜかというと、特にマイクロファイナンスにおいて、経営がちゃんとしてないのにテクノロジーを語るのは正しくないと思っていたからだ。

全てのテクノロジーは日常業務が完璧に回っていてこそ現場に実装される。というのも、テクノロジーの実装は混乱と試行錯誤に溢れていて、訓練され意欲に溢れた現場社員なくして実現しないからだ。これは、モルスタ時代に新システム導入とか信用リスクDB導入の社内プロジェクトをやってて痛感したことだ。それに、大抵の企業において、テクノロジーは事業の裏方として静かに・着実に業務を改善するものであって、主役は常に主業務そのものであるべきだと思っている。

今年はキャッシュレス・ペーパーレス・審査モデル
創業4年半を経て、ようやく僕たちはテクノロジーを語る段階に達した。まず行うのはキャッシュレス化とペーパーレス化だ。途上国の女性向けのマイクロファイナンスにおけるキャッシュレス化は、お客様には安心安全を提供するとともに、業務効率を高め不正リスクを下げる。すでにインドでやっているものを全拠点で広げていく。

また、ペーパーレス化は業務効率改善と今後の各種業務革新の基礎になる。金融セクターだと当局対応でどうしても紙が残るのだけど、どうしても必要なもの以外は紙を可能な限り減らしていく。当たり前のことから、当たり前に。

それと、今年から融資の審査モデルをより拡充させる。伝統的な信用リスクモデルに深層学習を用いたアルゴリズムを加えるために、収集するデータを増やしていく。個人的に関心があるのは音声で、最近の研究だと脈拍、性格、顔の形、精神状態などが測定できることが示唆されている。数十万人の顧客の声を収集することで、審査の質が向上する可能性があるので、試してみたい。審査の精度が上がれば、金融サービスはよりフェアかつ効率的に提供されるようになる。

他にもテーマは多くあるのだけど、僕は結構物事を現実的に見るほうなので、事業の状況を踏まえて最善のタイミングで導入していきたい。

(完全な余談だけど、既存金融機関がフィンテック導入で最も成功している国の一つはモンゴル。これはそのうちまとめて書きたい)

グローバル経営システム
第二フェーズにおけるもう一つの主要目標はグローバル経営システムづくりだ。これまで4カ国の事業拠点の経営は問題なく行うことができているのだけど、3〜5年後には大陸をまたいでアフリカ大陸でも事業を行う可能性が非常に高くなっている(本当はもう少し先だと思ってたのだけど、結構現実的になってきた)。アジアだけならまだしも、大陸をまたいで事業を経営するための経営システムが必要になる。

結構辛いのが、僕たちにはGEその他グローバル大企業のような資金力がないので、自分たちなりにワークする仕組みをつくる必要があることだ。これはかなり大変だと思うのだけど、仲間と一緒になんとかやりきりたい。

残り99.7%

テクノロジーを用いたサービス刷新も、グローバル経営システムの確立も簡単じゃない。だけど、五常は民間セクターの世界銀行を作るために創業されたので、やるかどうか悩む余地すらない。

繰り返しになるけど、目標に対する到達度がまだ0.3%にしかなっていないという現実をきちんと直視して、創業した時のひたむきさのまま、粛々と仕事を続けたい。第二フェーズの主要課題をクリアできたら、民間セクターの世界銀行づくり実現が遠くない未来になる。

五常は2017年以降連結黒字だったんだけど、今年と来年は多少赤字を掘るかもしれない。だけど、それは避けられないことなので、一時的な赤字よりも長期の社会的・金銭的リターン最大化を目指してこれからもがんばる。


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