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育休を取得した話(&男性こそ育休取得ができたらよいなと思うようになった話)

五常・アンド・カンパニーは男女ともに14週間の育休を取れるようにしていて、毎月6500ドルまでは育休中も給与が100%支給される。

去年取得していた育休について、記憶が風化する前にメモを書いておきたい。

この育休制度をつくった理由

会社で男女ともに育休を取得できる制度をつくったのには理由がある。

まず、ジェンダー平等を実現するには、男女ともに育休をとることが社会の当たり前になる必要があると思うからだ。いくつかの統計が示しているけれども(参考までにこちら)、男女の賃金ギャップは出産後に極端に広がり、埋まらない。具体的には、女性のみが育休を取ることで給与がガタッと落ち、復帰後も昇進がしにくかったり、専業主婦になったりすることでギャップが縮まらなくなる。

ソースにも書いているように、これは日本よりは遥かにジェンダー平等が進んでいる
デンマークの話なので、日本のデータはもっと深刻だと思う

男女の賃金ギャップが小さい国ほど、男女ともに育休をとるようになっている。ジェンダー平等ランキングでいつも上位にいるアイスランドなどでは、2000年に男女育休制度を導入し、休暇中の給与支払い分の大部分を政府が負担しており、企業も男性も育休を取得する前提で人材採用がされている。

それに、五常のエンド顧客の大多数は働くお母さんたちだ。ジェンダー平等を進めることに取り組んでいる企業としては、男女皆育休制度を推進するべきだと思った。相応に太っ腹な制度だったにもかかわらず、普段はコスト意識が高い役員らもほとんど反対意見を述べず、承認された。

また、会社の持続可能性を考えると、誰が抜けても回る組織をつくるべきであり、すべての人に対して育休取得を奨励することで、組織が強くなるという考えもあった。

実際に育休取得をして気づいたこと

というような、ジェンダー平等と組織の持続可能性の向上という教科書的な理由で育休制度をつくり、自分も育休を取得した。わけだけれども、実際にとってみた結果、男性も育休を取ることが当然になる社会をつくるのが良いとより強く思うようになった。理由はいくつかある。

第一に、これは考えてみたら当たり前だけど当時は気づいていなかったことで、新生児と時間を過ごすのはすごく楽しい。生まれたての子どもの顔は毎日変わっていく(最初の三ヶ月は毎日写真を撮っていた)。それを見逃すのはもったいない。

この時期の子どもの脳は一番はやく成長しているので、子どもへの行動一つ一つが将来に極めて大きな影響を与える(だからこそ、この時期の児童虐待は本当に深刻でもある)。これは素晴らしい経験で、子どもがいる親は皆経験できたほうがいいと思う。

ちなみに、自分のDNAを一部引き継いでいる子どもだから特別かわいく感じるという感覚はない。もし親子の絆というのがあるのだとしたら、それはDNAよりも、一緒に過ごした時間を通じてつくられるんだと思う。

第二に、男性が育休を取ることで家族が幸せになる。

最近だとCovidの影響もあって、出産直後の数日間は母親だけが病院内で子どもと過ごすことになる。そして、この数日で相当なレベルの「育児IQ格差」が生じる。男性が育休を取らないと、この育児IQ格差を埋めることはほぼ不可能になる。

格差が埋まらないと、片方の親(往々にして母親)だけが育児に時間を割くように家庭内役割分担が「最適化」されていく。育児に時間を割く側は「なんで自分だけ」と思い、もう片方は「なんか疎外されているな」と感じるようになる。「子どもが生まれたあとに、自分が家族のATMになった気分になった」という言葉はその典型だ。

それに、男性は子どもを産むことができないので、出産までは女性側が一方的に身体的な苦労を負担をしている。出産前後の痛み、身重、ホルモンバランス変化、つわり、腰痛、などなど。それなのに出産後も女性に男性より大きな負担がかかり続けるのはアンフェアだろうと僕は思う。

育休期間においては、女性は出産後の身体を休めることに専念し、男性がこれまで貢献できなかったぶん育児に時間を多く割くくらいがちょうどよいのではないか。なお、それでも壁になるのが母乳なのだけれども、これもミルクと混合にする、搾乳して取り置くなどを選ぶことである程度乗り越えられる。「お母さんにしかできないこと」というのは神話であって、実際にはほとんど存在しないと思う。

僕のほうがパートナーよりも長く育休をとり、4週間ほど専業主夫をしていた。お陰で、家庭内労働がまさしく労働であり、それは熟達を必要とし敬意を払われるべきものだと確信するようになった(専業主夫・主婦のみなさんに敬意を表します)。

育休が終わった今も、夫婦の育児負担はちょうど半分ずつ。どうしても子どもが頻繁に起きるので、眠る時間はシフト制になった(僕は早朝起床担当)。子どもの出産後には夫婦喧嘩が増えるらしいのだけれども、うちの場合は子どもの出産後に夫婦仲がよりよくなった。


自分が幸運であることは理解しているつもりだ。そもそも子どもが生まれるかはある程度偶然に依存するし、社員の育休取得を嫌がる企業は今も多いし、何割かは育休給付金が出るとしても、夫婦の片方が働き続けないと家計が回らない世帯も少なくない。そもそも育休給付金を取ることが難しいような仕事についている人もいる。だからこそ、政府がより支援を拡充させ、企業が男女育休を当然のこととして組織設計をするのが望ましいと思っている。

なお、育休取得前にチームがきちんと準備をしてくれた結果、育休期間中も会社は問題なく回っていた。復帰後に経営会議の議事録・ビデオ録画を見ていたのだけれども、僕がいなくても必要な課題が俎上に載せられ、必要な議論が行われ、必要な打ち手が実行されていた。

その結果、組織における自分の存在意義についてより深く考えるようになった。創業者&CEOとして僕だけができることはそんなに多くなく、僕は自分にしかできない領域に自分のリソースを割くべきだと痛感した。苦手なことに首を突っ込まず、仲間に任せればよい。それに気がつけただけでも、会社としてプラスだったなと思う。

民間セクターの世界銀行をつくることを目指す五常・アンド・カンパニーは、メンバーをいつも募集しています。関心のある方は下記まで!
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(英語必須の職場なので、申請書類は英語でのみ受け付けています)


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