WIRED AI特集

WIRED(ワイアード)VOL.20

今年18冊目。

いつか詳しく書くけど、元囲碁プロ養成所にいた人間として、Alpha Goの衝撃は予想以上だった。本書でも書かれているように、AIが碁のトッププロを打ち負かすのは10年後くらいの話だと思っていたからだ。囲碁のグローバル版羽生善治さんのようなイ・セドルが人工知能に敗れたことのショックは本当に大きかった。

それで、最近はAI関連のものをよく読むようになったのだけど、ものの話としての導入編として、本書はまあまあ役立った。特にケヴィン・ケリーのインタビューとDeep Mindに関する記事を読めるだけでも本書には価値があるように思う。とはいえ、雑誌は雑誌なので、何かを深掘りしているわけではないのだけれども。

いくつか面白いと思った話を。
・Googleは昔からAIを作っていた。2002年にケヴィン・ケリーがラリー・ペイジに「なんで検索なんかするんだ?」と聞いた時の答えは「ぼくらが本当につくっているのは、AIなんだよ」だったという。要は検索を通じた学習ということ。本当に昔からこう考えていたのであれば、本当に恐るべき会社だなと思う。(とはいえ、学者の間でこれがくると分かっているものであっても、それが実際に来るタイミングには色んな波があるわけだが)

・AIが本格化できるようになったのは、並列計算ができるようになったこと、ビッグデータの存在、アルゴリズムの改良だった。数十年前からそのアイデアは存在していたものの、近年になってそれがやっと可能となった。

・既存ビジネスにAIを組み合わせたら何ができるのかを考えると、様々な可能性がみえてくる。

・コンピューターが世界チャンピオンを20年前に破ったチェスにおいても、一番強いのは人間とコンピュータの混成チーム。これは驚くべきことで、囲碁や将棋なども同じようなことになるのではないか。更にいえば、競争そのものが、機械との競争でなく、機械と人間が組んでの競争になる。

・実際プロダクトを作る際には、コストの他にデザインも大切になる。例えば、工業用ロボのバクスターは300万円程度。ロボットがどこに注意を向けているのかが人間にも分かるようになっているので、人間が巻き込まれて怪我をする可能性は低いし、人間が実際にバクスターを動かしながら作業を教えることもできる。

・今度読む本のひとつは、The inevitable, Kevin Kelly

・Deep MindのDemis Hassabisは、ピーター・ティールから出資を受けるために、1分間プレゼンを考える。ティールがチェス好きということをつきとめたので、「なぜチェスが生き延びてきたのか分かりますか?その理由は、ナイトとビショップのバランスが完璧で、そこから多様で独創的で非対称な緊張が生まれるからです」と話したという。その結果、ゆっくりと話す機会をもらえたらしい。こういうの自分も考えなきゃなあと思った。

・Deep Mindが4億ドルでGoogleからの買収提案を受け入れた理由は、資金調達活動に時間をとられすぎて、事業開発に時間の10%くらいしか使えなかったことらしい。これは重たい話だなと思った。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?