配色の設計

配色の設計 ―色の知覚と相互作用、ジョセフ・アルバース(Josef Albers) (著), 永原康史(監訳)

今年25冊目書評。

写真を良くするのもそうだし、資料の出来を高めるためにも色彩はちゃんと勉強しようと本屋をうろついていたら見つけたのがこの本。バウハウスで10年教鞭をとっていた著者の本であれば間違いがなかろうということで色彩勉強の一冊目とした訳なのだけど、良い意味で一冊目としては裏切られた。

というのも、いわゆる色彩の理論は実際上あまり意味が無く、実践から良い色彩を見つけ出す他ないというのが本書の結論だからだ。著者はこう喝破する。

「そもそも理論とは、実践から生み出された結論なのである」
「理論の後に実践が来るのではなく、実践の後に理論が来るのが自然だと考えている。このような研究は、経験を通した永続的な教えや学びをもたらす。その目的は、発見や発明によって実現される創造性を養うことにある」

本書の構成はとても変わっている。まずは、いかに人間が色について倒錯した理解をしてしまう生き物であるのかを、事例を通じてこれでもかというほどに示し続ける。Aという色は、暗い色に囲まれた場合と明るい色に囲まれた場合、大きさ、素材や光の状況などで全く違う見え方をするし、人間は色温度や彩度を正確に把握することはできない。また、コンピューターでは色彩を数値化できるが、段階的な数値変更(例えばRGBでRを8,16,24…としていくこと)は人間の視覚にとっては段階的な変更に見えず、段階的に見せるためには数値変更はべき乗的にしないといけない(Rを8,16,32…とすること)。本書の英語タイトルである”Interaction of Color”の通り、僕たちは本書を通じて色は相対的なものでしかないということを何度も思い知らされることになる。

本書を通じて、色を好みではなく客観的に見るということを徹底的に叩き込まれ、僕のような一般人が持っている色彩感覚は一度ぶち壊される。そしてその上で、僕たちは実践的にどのような色合いを選ぶのか考えるようになる。それこそが本書の狙いだ。

「(光の色、光の反射、色彩を見る方向と順序の違い、異なる表現素材、対象同士の並び方などの)影響やまた別の視覚的な転移によって、最初は調和しているように見えた「理想的」なカラーコンビネーションが、変わったり、失われたり、また逆になったりすることがあっても驚くには足りないのである。
・・・
 結論はこうだ。補色、隣接補色、トライアド、テトラードといったようなおおざっぱなやり方は、しばらく忘れてもいい。それらは使いものにならない。
 さらに、機械的な色彩体系というものは、前述したような多様な可変要因に、1枚の処方箋で対応できるほどの融通性をもち合せていない。いい絵やいいカラーリングは、おいしい料理にたとえることができる。いかにレシピに従ってつくっても、調理中に繰り返し味見することが必要である。そして、最高の味見は、依然として「肥えた舌」次第なのだ。」
(Taejun注:ただし、著者は色彩調和を完全に否定している訳ではなく、それを常に唯一の理想的なものであるという考えを否定しているだけだ)

本書が提唱している実践的な色彩勉強法の一つは、巨匠の作品、例えばゴッホやマチスなどの作品をよく観察して切り紙絵にすることだ。すなわち、折り紙のようなカラーペーパーを切ったものを糊貼りして、絵を模倣していく。そうすることで、色の組み合わせがどういった影響を与えているのか、例えばゴッホの描く肌色はどういった色の組み合わせで作られているのかを痛感するようになる。 

また、先に引用した彼の言説にある「肥えた舌」すなわち肥えた目を身につけるには、美しい絵や広告を飽きずに眺めながら何がそれらを良いものにしているのかを自分の頭で考え続ける他にないのだろう。理論は後からついてくる。

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Taejun

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