情報戦争を生き抜く

情報戦争を生き抜く 武器としてのメディアリテラシー
(朝日新書) 2018/11/13

現在起きている情報戦争の本質とは何か。それは、ソーシャルメディアの影響力がマスメディアを超えつつあることで、事実が軽視されるようになり、その結果として、論理や理屈よりも感情が優越し、分断の感覚が増大しているということである。

世界のほぼ全ての国で、お金をかけて取材して作られた情報が売れにくくなる一方で、人々が無料で不確かなソーシャルメディア上の情報を読むようになった。そして、ソーシャルメディアを通じて人々が少しずつ真実を見出しにくくなっている。

そうなった一因は、人間の本能である知的好奇心にあるのだろう。知的好奇心はもともとは生き残るために必要な本能だった。人が新聞や雑誌を読んでいた一因は、それが価値ある情報だからだけではなく、(当時としては)比較的安い値段で知的好奇心を活かしてくれるからという側面もあった。

だからこそ、無料で手に入る情報があふれるようになったとき、多くの人がお金をかけて作られた情報を入手しなくなり、タダの情報に飛びつくようになった。昨日Twitterでたまたま「Twitterって活字中毒の人には夢のようなツールだ。次から次へと字が流れてくる」と言ったのはまさに言い得て妙だ。

また、知的好奇心のために、人は当たり前の情報よりも驚くべき情報に飛びつきやすい。それがフェイクニュースを真実よりも遥かに早く遠くに伝播させる力になった。

人々の感情が巨大ネットメディア企業たちにハックされているのは皆が知る通りだ。FacebookもGoogleもYahooもTwitterも、ビジネスモデル的にはテクノロジーを駆使したメディア企業だ。人々の時間消費対象となり、その人々に広告を提供することで収益をあげる、という点でテレビや新聞・雑誌などとやっていることに変わりはない(というラベリングをテクノロジー企業はとても嫌うけど)。にもかかわらず、メディア企業としての「正しい情報を伝える」という責任から逃れ、正しい情報を維持することに必要な労力を割くのを放棄している、とスコット・ギャロウェイとかが指摘している。

どのようにしてメディアが企業や政府によって歪められ利用されているのか、それに対してどのような対応策が世界中で打たれているのか、を本書のレベルで詳しく取り上げた日本語の本はないように思う。著者個人の主義主張がほとんど入っておらず、著者本人と対立する意見であってもきちんと掲載されていることから、どのような立場の人でもあまり感情を波立てず読めると思う。感情が排されており、事実だけが紹介されているため、文字あたりの情報量も多い。


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