走ることについて。12


ランニングを再開する前日に都内の整形外科に行ってみた。なんと、二つ行ったら二つとも休診で、痛い足を抱えながら時速2.5kmで病院を探してさまよい、やっとの思いで病院を見つけた(タクシーに乗ればよかったが、無職の自分にそんなことをする権利はないと思っている)。

結果はアキレス腱炎。原因は「走りすぎ」と言われた。その診断は僕でもできる気がする。

お医者さんは「どうせ止めないんでしょ」とあきらめ気味で、本当に危ない状態の兆候を教えてくれた。アキレス腱のうち、足首が痛いうちは(それはそれで良くないけれど)大丈夫で、踵のあたりが痛くなってきたら本当にまずいのでストップすること、だそうだ。一度アキレス腱ごと踵の骨が剥がれてしまうと、元に戻すのが大変らしい。


14日目(黒部駅→射水市)

朝に東京の自宅を出て、黒部駅まで向かう。なかなか電車の接続が悪く、駅到着は13時。

そこから走りはじめる。テーピングもなれてきたもので、今日は特に問題なく淡々と7時間走る。42km強走ったところで、目的地の射水市に到着。この時期の北陸は、噂には聞いていたものの、とにかく空が低い。雲がどんよりと垂れ込めていて、寒いし気分も暗くなる。

今日の最大のトピックは、冗談抜きで車に轢かれそうになったこと。横断歩道の青信号を渡ろうとしたら、左折車が一時停止も何もせずに猛スピードでカーブしてきて、文字通り鼻先をかすめていった。運転手は、一瞬スピードを緩めたのち、僕の無事を確認すると走り去っていった。

思うに危険というのは注意しているとき(例えば歩道のない道など)は意外と低くて、安全だろうと思っている時にこそ大きいのだろう。できるだけ夜道を走るのは避けよう。

今日の宿泊場所はホテルイナホという、健康ランドが隣についているホテル。温泉にゆっくり浸かって体調を整える。


15日目(射水市→小松市粟津温泉)

とにかく長かった一日。

朝6時前に起床して、カロリーメイトを食べながらテーピングを済ませ、6時40分に出発。天気予報によると今日はこの時期の北陸としては珍しく晴れ。明日の天気は大荒れと聞いたので、可能な限り遠くまで走ることに決める。

最初はずっと平地で、高岡市、矢田部市と走る。不思議なもので、歴史のある町というのは、その町に足を踏み入れただけでなんとなく分かる。人間がそこに長く住んでいたしるしというものを、僕たちはどうやって感じることができるのだろう。古めかしい町並みであれば100年もあれば作ることができるはずだけど、それだけではない何かがある。

(高岡市の町中)

矢田部市から石川県との県境までは登り坂。登りを走るとアキレス腱がひどく痛むので、ここは全歩き。20分と歩くうちに、源平合戦のあった倶利伽羅峠へ。そして、ここから噂の倶利伽羅トンネル。上越市のホテルで会ったトラックの運転手さんが、「とにかく事故がよく起きるし、トンネルを通ろうとする自転車が轢かれること多数。注意して進むように」と教えてくれた道。歩行者用の道もなく、交通量も多いので、とにかく足早に通り過ぎる。

(倶利伽羅トンネル。富山県あたりからのウルトラマラソンの道中では、こういう歩道なしトンネルばかりだった)

ヒヤヒヤしながら倶利伽羅トンネルを抜けたらもう石川県。一休みしてストレッチをして、走りはじめる。昼過ぎからはLIPのミーティングにSkypeで参加。二つのプロジェクトのミーティングが2時間なので、併せて4時間はSkypeをしながら走ることに。

(金沢駅周辺はこの地域では圧倒的な都会だった。地元の人にとっての都会が金沢というのがよく分かる)

金沢駅を通り過ぎたあたりで暗くなる。そこからはライトをつけて走りはじめるが、ここでやっぱりアキレス腱の痛みがやってきた。声にはできないようなズキューンとした痛み。アキレス腱だけでなく、アキレス腱とふくらはぎの筋肉の繋ぎ目辺りもものすごい痛みに。歩いても痛い。

辺りは真っ暗で、能美市の小さな山を登ったあたり。もう11時間走り続けているから、テーピングも緩み始めたのかもしれないと思い、右足のテーピングを張り替える。こうしているうちにも身体が冷えていき、冷えた分身体が固まり動いたときの痛みも強くなるので、なるべく早く。でもテーピングを間違えると痛みがひどくなるので、可能な限り慎重に。

よりによって、この真っ暗闇でテーピングを張り替えているタイミングで携帯電話のSIMカードがエラーになり、自分がどこにいるのかもよく分からなくなった。今回のAUのiPhone5は僕の使ってきたiPhone史上最もトラブルが多い。渋谷駅内でも圏外になる。

テーピングを張り替えたら、また足は動くようにはなった。目的地の粟津温泉まで残り20km。記憶にある道を信じて走り続ける。

最後の20kmでは、小さな山を20くらい登り降り。これはなかなか厳しかった。何もない山道なので、車は高速道路並みのスピードで走り抜けていく。途中でいきなり歩道も無くなったりするところを、黙々と進む。

10時から入っていた電話会議を終えて、目的地の粟津温泉に着いたのは23時頃。GPS機能を使ったスマホアプリ”Runtastic”の表示では走行距離は90km以上。16時間かかった。途中15kmくらいずっとコンビニが無かったので、夜ご飯を買って、旅館に入る。テーピングをとったら、もう立つだけで痛い。少しでも足の負担を減らそうと、基本的に四つん這いで移動する。廊下を歩くときも、手すりを最大限活用する。

こんな姿を見ていた旅館の女将さんに「そんなんで本当に明日走れるのかね」と心配されてしまった(ところで、石川県に入ったあたりから、方言が少し関西弁ぽくなった)。川の道フットレースの反省の一つでもあるけれど、人に心配されないように走らなければなと思う。


16日目(小松市粟津温泉→越前開発駅)

午後5時に電話して唯一開いていたこの旅館で、朝7時、部屋のドアを叩くおばさんの声で目が覚める。朝食を部屋に持ってこようとしていたみたいだ。昨日は洗濯物を干して右足に氷の入った袋を入れた時点で前後不覚になっていたことに気づく。氷水が一部漏れていたようで、布団が大変なことになっていた。おねしょをしたみたいに水模様が拡がる。「いいですよ」と布団をたたむおばさんが言ってくれた。ありがたい。

朝ごはんを食べながらニュースを見るが、今日は大荒れの予想との予報で気が滅入る。ご飯を4杯食べたせいか食後眠くなり二度寝してしまい、9時40分頃に出発。

今日は本当にきつかった。移動距離は最短で40km程度だったが、とにかく雨がすごい。16時ごろまでずっと雨。特に昼前後は豪雨で、パタゴニアのレインウェアを二重で着ていても雨が身体に染み込み、レインウェアの中にあるバックパックの中にも水が侵食してくる。たぶん、このレインウェアは古くなりすぎているので、新しくひとつ買おう。道路はそこらへんが大きな水たまりになっているし、横を走り抜ける車の水しぶきもすごい。

(写真ではなぜか雨が大したことないように映るけど、ものすごい豪雨)

そして、道はところどころ工事中のため迂回をする必要があり、デコボコで足首に負担がかかる。歩道がない道もたくさん。さらに、Google mapの言うとおりに進んでいったら、あぜ道すら存在しない草むらがあったりして、かなり遠回りしたり。

(Google Mapによるとここをまっすぐ進むらしい)

足はもう本当に動かなくて、最初から走っても時速が6km以上でない。今日の平均時速は5km程度。健康な人の早歩きと同じスピード。

そして、最後の最後にやっぱりやってきたアキレス腱の痛み。残り10kmなので、歩きに切り替えるが、5kmも歩いたところで、今度は歩いても激痛が走る。テーピングを張り替えても効果なし。アキレス腱に負担がかからないように全神経を足に集中して、這うようにして進む。時速2.5kmしかでない。

(福井市に入る頃には歩いてもアキレス腱が激痛に。数キロが遠かった)

福井駅の2km手前の越前開発駅に着いたのは7時。次の日の仕事の用事に向けて東京まで終電で帰る。いつもいつもそうなのだけど、東京までに戻る電車が、50kmなり100kmを30分や1時間足らずで通り過ぎるのをみると、技術進歩のすごさを思う。地球の裏側まで飛行機で半日あれば行ける時代に、僕は何をしているのだろう。

これで、第三ラウンドも終了し、残り約700km。最短でも710km&山道&雨の日本海側を行くか、680km&平地&晴れがちの太平洋側を行くか。というか、そもそもこの足で700kmを走れるのか。700kmは多分気合で走りきれる距離ではないから。


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