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『地獄の黙示録』~AV稼業と漫画家稼業~

「 地獄だ。 ただ、 地獄だ」

映画『 地獄の黙示録』 を初めて見たのは 20歳になって直ぐだった。

強烈に魅入られてビデオを買い 繰り返し見た。

長い長い メイキングや、 特番でやっていた 制作時の ドキュメンタリー 番組まで見た。

繰り返し繰り返し、 何度見ても 感想は出てこない。

言葉を飲むばかりである。

AV 女優時代 の私は、『 地獄の黙示録』 そのものや、 当時 見た メイキングや ドキュメンタリー番組 から、 非常に影響を受けていた。

『 地獄の黙示録』 と並んで 強く影響を受けていたのは、 高校の頃から 繰り返し見てきた『 ゆきゆきて神軍』 であった。

「 一番好きな映画は?」

私はずっと『 地獄の黙示録』 と『 ゆきゆきて神軍』 の ふたつばかりを挙げている。

私自身が 出た アダルトビデオは、 グロテスクではあっても ほんわか としていて さわやかな 物が ほとんどである。

私がアダルトビデオで出す企画は『 ゆきゆきて神軍』 が 好き でしょう? 原一男 監督が好きでしょう? と言われるものばかりだった。

自分自身は それとは また別に、『 地獄の黙示録』の メイキングや 制作時のドキュメンタリー番組に 強く影響を受けていた。

グロテスクなことども を徹底してやりたい、 没頭したい、 没入仕切って あらゆる限界を超えたい、 自分を 追い込んで 追い込んで 超えてしまいたい、 そんな感情が強かったかと思う。

『 地獄の黙示録』 という映画の制作過程が、 長い年数をかけており、 特にも主人公の追い込まれた冒頭からの精神状態を 演じるために、 主人公役をやった 役者さん自身も 相当な極限に 自分を追い込み 作り上げたものであった。

ラストシーンの、

「地獄だ。 ただ、 地獄だ」

という この一言が 出てくるまでの制作過程は、 監督である コッポラ と 主人公役の役者さんとの、 生々しく無残な戦争であるかのようである。

私は AV 女優時代、 自分がこの 主人公の役者さんのようでありたかった。

アダルトビデオという 普通なら 美しい 方面でのエロス。

若かりし 私は、 アダルトビデオ の 何たるかを知らなかった。

それで実験に次ぐ 実験を行い、 グロテスクな方向を 自分なりに 極めることに夢中になったのであった。

よく 性癖について 問われた。
いまだに、 NG なしは性癖だったの? と聞かれ、 面白かったから と答えると、 非常にがっかりされる。

よもや 私の頭の中が『 地獄の黙示録』に 強く影響を受けていた とは言いづらい。

当時の私の頭の中は、 女性性というものとも ちょっとちがく、 性癖がどうのと言うのとも ちょっと違く、 自分が常に『 地獄の黙示録』 の 主人公の 役者さん足らんと そればかり考えていた。

アダルトビデオの本番で 良い絵 面を作るために、 友達という友達に協力してもらい、ゲロだうんこだ と あれこれと 実験 しまくった。

日々家で、 洗面器に ぬるい 塩水を作り、 鼻から 吸い上げて 胃袋を満タンにし、 一気に吐く、 ということも欠かさなかった。

そして本番の時は、 自分が もう まさに『 地獄の黙示録』の 主人公の役者さん になりきって、「 自分の 究極をやるんだ!!」 と、 それしか考えていなかったのである。

よって私のアダルトビデオは、 美的なエロティックなものが少ない。

『 うんことゲロとミミズ』が 代名詞になっているが、 自分の肉体を使って 限界までの 究極を 体現したいと、 頭の中ではワルキューレがかかり ナパーム弾の匂いがし、 体液はまるで 血液の代わり、 そんなめちゃめちゃな 頭の中の状態でやっていた。

「 地獄だ。 ただ、 地獄だ」

あの ラストシーン、 主人公 の役者さんが言った一言に 向かって、 ただひたすら突っ走ったのが、 私の 出たアダルトビデオの ほとんどである。

今日、 20代 ぶりに『 地獄の黙示録』を テレビで見た。

やはり どうにも 感想は出ない。
言葉をなくす。

しかし掻き立てられるものがある。

それは、 例えば「 戦争がどうの」 というのとは違う。

『 地獄の黙示録』 という この 作品を作り出した 異常な熱量と 正気の 狂気、 この化け物のような 作品を作り出した コッポラ と 全ての 役者さん、 スタッフさんや 音楽、 カメラ など。

この圧倒的な 圧力でもって、 圧倒的な 気迫でもって、 やはり私は 1日1日を、最大限 自分を追い込んででも、 この異常な 生々しさ の 究極で 在りたいと 思ってしまう。

20歳の頃から 思考回路が全く変わらないなあと、 我ながら 呆れるのだが、 やはり私は私自身が、『 地獄の黙示録』 の主人公の役者さん の ようでありたいし、『 地獄の黙示録』の ような 有無を言わせぬ 圧倒的な作品が作りたい。

いつか、

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