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『願い』 #幸せをテーマに書いてみよう


その時父は
「貰ってくれるというところに行ってもらうしかない」と言った

行ってもらうしかない
この言葉の裏にはどんな思いが込められていたのだろう

女の子が生まれた時から諦めていた。父はよくそう言っていた
だからといってそれがしあわせじゃない、わけではない

普通に男の子が欲しかったんだろうと思う。名前も準備されていた
わたしの名前は慌てて付けられた…けれど気に入っている

愛されていないわけではなかった。だからこそ
わたしは反対して欲しかった

「娘は嫁には出せん!」と、怒りをあらわにして欲しかったのだ
「反対されても家を出る」そうは言ったけれど、本気じゃなかったから

結婚したくないわけではなかった
でも、もう少しもったいぶって欲しかった。わたしを惜しんで欲しかった

子どもを連れてひとりになると決めた時、わたしは自分を優先した
子どものしあわせを願わない親はいない。わたしはそれを盾にした

わたしは子どもから父親を奪ったけれど、母であることを奪わせなかった
同時に自分の笑顔を守った。子どもの前で笑っていられるように

どんな顔をしていたのか、もう思い出せないけれど
わたしがそうすることに、父は反対もしなければ賛成もしなかった

2度目は距離のある決断だった。父はなにも言わなかった
ただ、にこにこ笑っていたように思う

代わりに母が
「こぶ付きなのに大丈夫なのか」そんなようなことを言った

その時の彼の答えが、母は忘れられないという
この時のわたしは、最初とは違い引き留められたくはなかった

子どものしあわせを願わない親などいない
それは自分が親になったからいうんじゃない。わたしはそれを盾にした

ひとのしあわせはそれぞれだ
そしてしあわせに対する思いも

大切なことは言葉にするとなくなってしまうと思っていた
だから絶対に口に出して言えなかった。言わなかった

溜め息のように、自分から離れて行ってしまうように思えたからだ
だから静かにかみしめて、その言葉だけは絶対に口にしない

高速道路を使って行き来する今、帰り道に思う
「この道を選んでよかった」

形は違えど願いは同じ
だれよりも大切な人に「しあわせになってほしい」




こちらは、あきらとさんの
『#幸せをテーマに書いてみよう』に参加するために書きました



まだまだ未熟者ですが、夢に向かって邁進します