成果発表会の意義とは?

当校では年度末に学習成果発表会のようなものが行われます。学生がチームで作成したアプリに対するプレゼンテーションを行い、日ごろの学習成果を公表するものです。

あるチームが、持ち時間のほとんどでプロモーションビデオ風の動画を流しました。それもアニメーション+音声合成ツールによるナレーションだったので、動画中には人間は全く出て来ませんでした。ストーリー自体は大変面白く、見ていた学生からの評価も高く、また外部審査員の方からプレゼンテーション賞に選出されるなど一定の評価をいただきました。
ところが教員の間では賛否両論あり、音声合成ツールの使用や、プレゼンテーション時間のほとんどを動画に費やすことを禁止しようとしている動きが出てきました。

背景等について少しだけ説明を。

我々教員は、学生に対して教育と言うサービスを提供して対価を得ています。なので教員が推奨するにしろ禁止するにしろ、何かしら学生に対してバリュー(価値)を提供する結果に繋がらなければならないと考えています。これは大原則でしょう。

学生が作ったアプリはアンドロイドで動作するアプリでした。教員側からもGoogle Playに登録してはどうか、登録するならプロモーションビデオもあったほうがいいねという意見は元々出ていました。プロモーションビデオを作成すること自体は禁止されていないどころか、むしろ推奨されていました。外部審査員(IT系企業の経営者の方を中心にお願いしています。)の方からも、この種の技術の必要性に関するコメントをいただいています。

部分的に動画で説明するチームは多くあります。特にIoT作品の発表を行うチームの場合、交代時間の制約等で、実際にハードウェアを持ち込んでデモをするのは難しいです。

成果発表会には、全学生が参加できるわけではありません。あらかじめ学生と教員が全員参加する予選会のようなものを学年単位で行い、最終的には、教員の判断で出場チームを選抜します。要するに、出場チームの判定の時に、例の全面動画チームは出場に対して教員側から特に問題視されていなかったということです。私も判定会議に参加していたのですが、動画についての懸念を表明した教員は、確かにいなかったように思います。


個人的な感想ですが、

ビデオの出来については、これはもう個人の主観で語るしかないのですが、私としてはアプリケーションの説明としてはよくできていると思っています。アプリケーションの想定ユーザ層は、YouTubeなどの動画を頻繁に見ている人であり、そういう人に対して動画で訴えると言う作戦も良かったと思います。ただの機能説明ではなく、ペルソナとなったユーザの体験をストーリー仕立てに説明しており、映画のような没入感があって、動画に引き込まれる印象はありました。


次に、個人的にちょっと残念に思っている点ですが

他のチームはプレゼンテーションの時間に開発プロセスの説明や開発で苦労した点なども交えて説明を行っています。今回話題としている動画にはそういうものは一切含まれず、完全にアプリケーションとその世界観の説明に終始していました。アプリケーションの操作方法等の説明であれば、動画を用いて視覚的効果などを交えた説明を行った方がよりわかりやすくなると思います。
一方、開発における苦労話などは、発表している学生からすると、観客からいかに共感してもらえるかが、重要だと思います。プリレコーデッドな動画を流すよりも、学生がリアルタイムで観客の反応を見ながら説明したほうがより伝わったと思います。

観客として見ていた学生にも、話を聞いたりアンケートを取ったりしているのですが、他のチームが何を考えながらアプリを作っていたんだろう?と言う点に興味を持つ学生は多いです。

今回動画を使ったチームは、チームでのアプリ制作に相当工夫をしており、マニュアル等もしっかり整備していました。GitHubのログを見ただけで、彼らがいかに濃密な開発していたかと言うのはよくわかると思います。
そういう成果をプレゼンテーションの場で後輩に伝えていただきたかったなと言う思いは正直あります。


ちなみに、成果発表会は成績に全く影響しません。出場チームが限られていることもあり、発表会に出れば加点されると言うルールはありません。
だからこそ、学生は何をモチベーションに成果発表会にチャレンジするのかと言う点を教員側は常に確認し、学生に対して出場する価値を説明し続けなければならないと考えています。
そうでなければ、学生たちは成果発表会をスルーしてより高い目標(起業化、収益化等)を目指して活動することになるでしょう。
個人的には推奨したいところですが、一方、成果発表会は学内でも最高峰のイベントなので、それが学生に相手にされなくなるのはできるだけ避けるべきだと考えています。
今のままでは、正直難しいと考えていて。教員間で何とか次の目標を見つけたいと考えています。

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