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Jリーグマッチレビュー⑫J2第11節 群馬vs秋田【いざ初参戦超秋田一体!堅守速攻&ハードワーク対決】

さて、今回は群馬県の正田醤油スタジアムで行われたJ2第11節、ザスパクサツ群馬vsブラウブリッツ秋田のマッチレビュー書いていきます。
私の友人に田舎が秋田の者がいた事と、一昨年に圧倒的な強さでJ3を勝ち上がって気になっていた事もあり、いつかは見に行きたいなと思っていたブラウブリッツ秋田の試合。昨年、実はひっそりユニフォームまで買っていたのですがなかなか予定が合わなかったこと、アウェイ席が設けられなかったこともあり、今回が2年越しの初参戦。楽しみにしていました!
会場は昨年ジュビロでJ2優勝を決めた正田醤油スタジアムだということもあり、いいイメージもある。17:00キックオフとやや遅めの時間ではあるが、初応援なので初心に帰ったような気持ちで見届けたい。

ゴール裏スタンドについたタイミングで、ちょうど群馬のマスコット湯友(ゆうと)がお出迎え。温泉地らしく赤い顔だけど結構かわいい
秋田サポーターはこのぐらい
「大いなる秋田」の弾幕はDAZNの中継とかでも目立っててかっこいい

今日の私の観戦ユニフォーム

2021年 1stユニフォーム(㊿加賀健一)

今回の観戦ユニフォームは昨年先に買っていた2021年の1stユニフォーム(アスレタ製)。
地元秋田の選手かつ、元ジュビロの選手でもある加賀健一のもの。歴史的なJ2初年度の記念すべきユニフォームでもあります。
コンセプトは疾風雷神の如く攻め立てる姿勢を稲妻モチーフ(ベースの柄)で表し、恐れることなく、目標に向かって勇敢に突き進んでいく姿勢を、トリコロールカラーのRising line(上昇線)で表したもの。青いクラブカラーはたくさんありますが、オリジナリティーはかなり感じてすごく好きですね。

本日のメンバーと見どころ

ザスパクサツ群馬

予想フォーメーションは4-4-2。
前節からスタメンの変更はなし。リザーブは久保田和音が外れ、髙木彰人が入った。

前節のアウェー琉球戦は、岩上祐三の強烈ミドルを守り切り0-1の勝利。現在3連勝中だ。
最終節になんとか残留を決め18位で終えた昨シーズンとは一転、過去に浦和を率いた「組長」こと大槻毅監督のもと、今シーズンはここまで6位と大躍進。今シーズンのJ2においてのビッグサプライズを提供している。
持ち味は浦和時代にも植え付けたハードワーク。そして堅守。なんとここまで無失点試合が7試合。失点数も8とリーグ2番目の少なさで、ロースコアやウノゼロ(1-0完封)も多い。今節の対戦相手の秋田とスタイルは似ており、1点勝負の堅いゲームが予想されるが、そこに持ち込めば良さは出てくる。ちなみに今季あげた5勝は全て先制点を奪っている。ロースコアかつ、先制点を奪うことがカギとなるだろう。
注目選手は今シーズンから10番を背負う田中稔也。昨シーズンまで10番を背負い、今季秋田に移籍した青木翔大との初対決となる。今季ここまでゴールはないが、前任者の前で決めて勝利へ導くことができるか。

ブラウブリッツ秋田

予想フォーメーションは4-4-2。
前節からの変更点はGKに出場停止明けの新井栄聡が復帰。最終ラインは右SBが才藤龍治に替えて藤山智史が6試合ぶりの先発起用。中盤は2列目の両サイドを変更し、右には中村亮太に替えて三上陽輔、左には茂平に替えて高瀬優孝が古巣相手に今季初スタメンとなった。ちなみに元群馬の選手はDF小柳達司、FW青木翔大も含めて計3人スタメンに名を連ねた。
リザーブには安田祐生、普光院誠、武颯が外れ、前節のスタメンから田中雄大、茂平がベンチに。そして前節不在だったメンバーからは小暮大器が入る顔ぶれとなった。

前節は長崎相手にホームで0-1の敗戦。前半に許した先制点から後半攻撃シーンが増えてはいたが破ることはできなかった。
現在リーグ19位。開幕連敗スタートとなったが連勝で持ち直したものの、今ひとつ波に乗り切れていない。課題はリーグワースト2位の8得点と苦しむ攻撃。堅守の群馬相手にこじ開けることはなお難しくなるが、群馬と似たハードワークかつ縦に速い堅守速攻でこじ開けたいところだ。群馬と同様、こちらもリーグ戦であげた3連勝は全て先制点を奪っているため、秋田としても先制点がほしい。
注目選手は初の古巣対戦となる青木翔大。昨シーズンまで群馬で10番を背負った男は新天地でも前線でのボールキープを中心に貢献している。ゴール自体は未だ1ゴールだが、古巣相手に感謝を口にする男の恩返し弾はあるか。

前半

予想通り、互いに守りを軸に入る展開でなかなか惜しいシーンや決定的な形は生まれない。群馬が裏を狙おうとするボールには秋田のGK新井栄聡とDFラインがうまくコントロールしてシュートを打たせない。一方の秋田も中盤でボールを奪うことはあっても、なかなか相手ゴールを脅かすシュートには繋げられないまま時間が過ぎていった。「先制点」がカギになる試合なだけに、絶対に与えたくないとどちらも強く意識していたであろう入り方、進め方だった。

それでも、41分に試合が動く。
群馬の最終ラインのビルドアップに、秋田の持ち味の前線のハイプレスが襲いかかる。これには群馬のDFラインが少しびびったのか、下げたボールが若干乱れてしまう。これを見逃さなかった秋田はうまくボールを引っ掛けて奪うと、左サイドへ展開し、ボールを受けた左SBの飯尾竜太朗がうまく切り返して右足でクロス。これを中で待っていた青木翔大のヘディングが右下隅へ決まった。同じ2トップの齋藤恵太がDF二人を引き付けた背後にうまく走り込んだ青木の恩返し弾が見事に決まり、欲しかった先制点は秋田へ。少ないチャンスを確実に仕留めた秋田の1点リードで前半を折り返す。

後半

選手交代で先に動いたのは群馬。HTに10番、田中稔也を下げて奥村晃司を投入する。
両チーム最初の決定機は秋田。ショートカウンターの流れから左サイドの高瀬優孝がチャンスを迎えてシュートを放つもうまく飛び出した群馬GK櫛引政敏がファインセーブ。ここまで群馬躍進の原動力となっている男が立ちはだかる。その後秋田は群馬DFラインにプレッシャーをかけ続けていた2トップと高瀬を下げ、吉田伊吹、井上直輝、茂平を投入。
ピンチを凌いだ群馬も攻勢をかける。スピードのある山根永遠、高さのある平松宗、北川柊斗といった攻撃の切り札を次々に切って秋田の堅守に迫る。ここからは群馬が基本攻めていく展開になり、中盤の主将・岩上祐三を軸にセットプレーの機会も増えてくる。特にCKは秋田のDFラインも、群馬の前線も強力なため激しい肉弾戦となるも、なかなか群馬はゴールを割れない。
最大のチャンスは40分、群馬はセットプレーの流れから残っていたDF畑尾大翔が山根永遠のクロスにドンピシャヘッドも、秋田GK新井栄聡がセーブ。その跳ね返りがポストに当たり再び畑尾の足元へ行くも倒れ込みながら足でセーブ。この試合を大きく分けたビッグプレーだった。
ATにも、平松のヘディングが若干飛び出すタイミングを誤った新井の頭上へ飛ぶもポスト直撃。跳ね返りを拾うも今度はゴールネットの上。群馬は10本のシュートを放つも最後までゴールを割れなかった。一方の秋田が放ったシュートは僅か3本。限りなく少ないワンチャンスを生かした秋田らしいサッカーで、秋田が勝ち点3をもぎ取り連敗を2で止め、群馬の連勝も3でストップした。

ざっくり感想

ザスパクサツ群馬

「らしさ」は見せたがゴールは割れず連勝ストップ。与えたくなかった先制点を奪われると、決定力が課題となっているチームの弱みを露呈した結果となった。
前半は秋田よりもゴールに迫る場面は多かったが、時間の経過とともにトーンダウンしていき、最終ラインのパスミスから失点してしまったのは勿体なかった。後半はセットプレーやロングスローをこなすキャプテン・岩上祐三の存在感は良かったが、フィニッシュの精度が足りず。ラスト10分は秋田GK新井栄聡の好守や、最後の平松宗が放ったヘディングシュートがバーを叩くなどツキもなかった。攻撃のカードを増やし、山根永遠など相手の脅威になっていた選手もいたが、最後までゴールを割れなかった。

とはいえ、ここまで堅守を続けてきた守備は相変わらず力強かった。青木翔大には恩返し弾を食らったものの、ハードワークと球際の力強さは随所に見られた。大槻毅監督はこの数年に群馬になかったものをかなり注入し、変えてきているなという好印象も受けたことは書いておきたい。

山雅の時も非常に頼りになった岩上祐三。敵だとロングスロー、セットプレーのキックの質などやはり脅威に感じられた。まだまだ衰え知らずの素晴らしい選手
「組長」こと大槻毅監督。ピッチ内にも大きな声が聞こえた。確実にこの人のおかげで群馬は変わってきている。連勝こそ止まったがやっていることは間違っていない

ブラウブリッツ秋田

秋田らしく全員がひたむきに走り、泥臭く耐えて掴んだ勝ち点3。連敗ストップかつ、群馬の連勝を止めたこの勝利は大きい。チャンスが決して多かったわけではないが前半のワンチャンスを青木翔大が生かし、欲しかった先制点を取ってからおよそ50分耐え続ける結果となったが、最後まで高い集中力で無失点に抑えたことは評価できる。

光っていたのは「横のつながりのコンビネーションの息のあった動き」である。それは相手の波状攻撃に力強く身体を貼り続け、跳ね返したCBコンビの小柳達司と池田樹雷人。中盤で豊富な運動量を武器に何度もボールを奪ったボランチコンビの輪笠祐士と稲葉修土。前線で積極的にプレスをかけ、時に身体を張り、先制点もその頑張りが生んだと言える齋藤恵太と青木翔大の2トップ。それらの連動の質の高さは個の力がなくても、チーム力は非常に高い秋田らしさがあった。

とはいえ、まだまだ課題の攻撃力が完全に改善されたとは言えない。ボランチコンビがボールを奪ったあとの前線へのボールを奪われる場面は少なくなかったのが勿体なかった。奪ってからの縦への速さの選手の意識は悪くないだけに、制度を高めて複数得点を奪う試合を増やしていくことがさらなる上位へのカギとなるだろう。

勝利の「秋田オレオレ」の様子。ピッチ全員が集中力を切らさなかった執念の勝ち点3
古巣相手に大仕事の恩返し弾を決めた青木翔大。献身性も含めて移籍一年目ながらスムーズにフィットした実に秋田らしい選手

MOM

新井栄聡(秋田GK)

山形戦で🟥になり前節の出場停止明けとなった試合で見事なパフォーマンス。前半は決定的なセーブは少なかったが、群馬の裏を狙おうとするボールへの果敢な飛び出しでチャンスの目を確実に摘み取り続けた。
先制したあとの後半は攻められる時間が多い中でも冷静な対応を続けた。群馬が数えたCKは10本だったが、的確なコーチングとハイボールの対応も安定。
そしてハイライトは後半40分。畑尾大翔のシュートの2連続セーブはチームに勇気を与えるスーパーセーブだった。特に2本目は完全に態勢が崩れた中でとっさに出した足に見事に当て、ゴールと同じぐらい価値のあるビッグプレーだった。

Jリーグで一番インタビューを見てほしい監督と、ちょっとだけ欲張りで頑張り屋さんなマスコットの話

友人だけではなく、私が秋田が気になっていた理由の一つに、吉田謙監督の存在がある。

何よりこの人が放つ深い言葉は人を引きつける。

極論だが、試合内容よりも試合前後の監督インタビューの方が楽しみなぐらいだ(笑)。基本的にはインタビュアーの質問には体言止めで答え、とても力がこもる。DAZNに入っている人はぜひ見てほしい。間違いなくJリーグで1番インタビューが面白い監督だ。

その言葉はJリーグ好きでお馴染みのペナルティ・ワッキーさんも絶賛し、モノマネするほどである。


日めくりカレンダーを作って欲しいは、私も激しく同意する(笑)。
勝利を秋田らしく雪の結晶に例えたり、冬の時期の試合で、「雪が練習場にたまった中での練習で選手がひたむきにボールを追っていた光景こそ戦術」と答えたり。「球際」ではなく「魂際」とか。とにかくワードセンスが唸らされるものばかり。

もちろん、言葉の深さだけではなく、実績も素晴らしい。秋田を率いる前にいた沼津では、J3参入初年度で最終節まで上位争いをし、いきなり3位に入る衝撃を与えた。
そして2020年から就任した秋田では、就任初年度で21勝10分3敗の圧倒的な成績でJ3チャンピオンに輝き、秋田を史上初のJ2へ導いた。昨シーズンのJ2初年度も余裕を持って残留を決め、特に上位争いをしているチームからも勝点を多く積み上げる上位キラーぶりも発揮した。

ちなみに、今節の勝利後に「試合を振り返ってください」とインタビュアーに振られたときの開口一番のコメントは

「ひたむき×全力×根気、素晴らしかったです」

でした。インタビューでは必ず常に相手の素晴らしさ、自分たちの選手、そして秋田県民の皆さんへの感謝を忘れないところもすごく素敵な監督さんなので、これからも応援しています。
名言の数々はウィキペディアにも載っていた。
まあ、映像を見てもらうのがいいのは言うまでもないですが。

生ではじめて見られた吉田謙監督。試合中はずっとタッチライン際で指示を送り選手たちを鼓舞していた

そして、もう一つ気になる存在が。
一時期人気を博した秋田犬、わさおのように(?)ちょっぴりブサカワな感じで語尾にはいつも「ゴン」がつく龍のマスコットのブラウゴンである。
彼の試合前のツイートを見てほしい。

そう、ちょっと欲張りなんです。
堅守が持ち味の秋田ではあるが、勝利だけでなくクリーンシートまで要求してくるマスコットはなかなかいない。でも今回、見事に達成できて私も謎の達成感がある(笑)

ちなみに彼がツイッターを始めた年は昇格を決めた2020年。この年は昇格が決まるまで負けなしの快進撃。そしてリーグ最少失点でクリーンシートの山を築いていき、いつもブラウゴンが歓喜するという流れが出来上がっていた。
彼の特技はeスポーツ。動画も以前上がっていました。そしてツイッターのアイコンが田植え。これもなかなか面白い。同じ龍のマスコットの水戸ホーリーホックのホーリーくんとは、「ドラゴンダービー」と銘打ち、互いのホームに遠征し、対決も行うなど盛り上げ役も買って出る。

そんな監督とマスコットのいる秋田を、私も全然初心者だがちょっとでも興味を持って知ってもらえたら。


試合結果

群馬0-1秋田
得点
【秋田】青木翔大(前半41分)
🟨
【秋田】青木翔大(後半7分)、茂平(後半21分)

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