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【どちらがサッカー王国にふさわしいか、決めようじゃないか】J1第51回静岡ダービープレビュー

さあ、いよいよ3年ぶりの静岡ダービーが迫ってまいりました。開幕戦は互いに追いついての1-1のドロー。早くも2戦目でのダービー激突となります。どちらのクラブにしても、勝ったほうが今季の勢いをつける戦いになるでしょう。
今季の第一戦の舞台は磐田ホームのエコパスタジアムで13:30キックオフ。チケットは見事ソールドアウト。静岡県がまん延防止地域のため、スタジアムが完璧に埋まる状況ではありませんが、最高の雰囲気での試合を大いに期待できる状況も整ったと言える。

そもそも静岡ダービーって?

ダービーの予想をしていく前に、軽く歴史に触れていこうと思う。
その名の通り、「サッカー王国」静岡を代表するクラブ、清水エスパルスとジュビロ磐田の戦いであるが、1993年のJリーグ開幕から加盟している清水と、開幕での加盟を目指したが一年遅れて加入した磐田。この一年の遅れから、互いのライバル心は加速していったように感じる(あくまでも推測にはなってしまうが)。
さらには、当時2ステージ制だった1999年の年間優勝を決めるチャンピオンシップでは、ファーストステージ王者の磐田と、セカンドステージ王者の清水がぶつかり、静岡ダービーで年間王者を決めるという伝説の戦いとなり、磐田がPK戦までもつれ込んだ戦いを制した。

サッカーだけの話ではなく、「ケンミンショー」とかでも取り上げられるように、割と清水寄りの静岡市と、磐田寄りの浜松市の静岡2大都市は割と仲が良くないことも、彼らの思いを乗せるようにダービーを掻き立てるのである。

ここまでのダービーのリーグ戦通算成績は磐田25勝、清水19勝、6引き分けとなっている。前回の2019年はリーグ戦は1勝1敗。共にアウェーチームが勝つ結果となった。
このダービーの魅力を私が一言で言うと、「リーグ戦の調子は関係ない結果が生まれる」のが魅力である。前回のダービーでは負ければ降格の危機だった磐田が勝利。対戦成績を見てもわかる通り、非常に競っており、白黒はっきりしがちである。


当然、内容がどれだけ悪くても求められるのは勝利のみ。否が応でも両チームのサポーターはこのダービーの大切さをサポーターになったその瞬間から叩き込まれる。ユースのチームも同じ。前日には地元テレビのスポーツコーナーはダービー1色に染まる。ワクワク感はサンタからのプレゼントを待つ子供のようだ。

ジュビロ磐田 見どころ

開幕の福岡戦メンバー

開幕戦は先制され、苦しい時間帯が続いたが、守護神・三浦龍輝のファインセーブ連発と、ATに途中交代のジャーメイン良が劇的な移籍後初ゴールとなる同点弾。内容が良くない中で掴んだ勝ち点1は貴重なものとなった。

システムは昨シーズンと変わらずも、杉本健勇と黒川淳史が移籍後初スタメンとなった。1トップの杉本は得意の高さを活かす場面は何度か見られたが、黒川はなかなか噛み合わず。
というわけで、カギになるのは「2列目のシャドー」である。
開幕戦は同じ2列目のシャドーポジションのライバルとなる大津祐樹、ジャーメイン良が先制されたあとの苦しい流れを変えたことで、ダービーでは大森晃太郎も含めてスタメンを変えてくるのではないかと予想する。もちろん、開幕戦だけで黒川の判断をするのは時期尚早すぎるので、彼のテクニックが試合途中で生きることも期待しているが。
さらに、このポジションにハマるべき存在の昨シーズン11得点の山田大記の不在が響いた。攻撃だけではなく守りでも奔走できる男の存在は大きい。おそらくコンディション不良でのメンバー外となったが、ダービーには戻ってこられるのか。ダービーには人一倍強い思いがあるはずの男の復帰を待ちたい。戻ってこれば最有力となるだろう。

もう一人、金子翔太の名前をあげないわけにはいかないだろう。昨シーズン、「禁断の移籍」とも言われたライバル清水からのレンタル移籍を経て、今季から完全移籍に切り替わり、「100%磐田の男」になった。清水を、ダービーを知り尽くす男が古巣相手に牙をむくか。開幕戦はベンチ外となったが、ダービーには流石に名を連ねるだろう。ベンチからのスタートが濃厚かもしれないが、スタメンで使うのも面白いかもしれない。

ルヴァンカップのFC東京戦がFC東京のコロナ大量感染で中止になり、水曜に試合をこなした清水よりも休養や体力に余裕があることもプラスに捉えられる。練習での戦術の課題の修正も図れたことだろう。
自分たちのJ2降格で遠ざかってしまった3年ぶりのダービー。青く染まったスタジアムで勝利を目指す。

⑩山田大記
昨シーズンは11ゴール。前回のダービーは負傷離脱中でベンチ入りすらできなかった。ちなみに2017年のドイツからの復帰後初ゴールはダービーだった。磐田を長年知る男で最もダービーにかける思いは強い
㊵金子翔太
オレンジからサックスブルーへユニフォームの色が変わり初のダービーとなる。清水も当然彼の特徴は知っているが、それを逆手に取れるか。100%磐田の男になったドリブラーは守備網を切り裂けるか

清水エスパルス 見どころ

開幕の札幌戦メンバー
ルヴァン杯名古屋戦のメンバー

開幕戦は磐田同様、攻め込まれながらも追いつきドロー。早い時間帯に先制されるも、日本代表守護神・権田修一が見事なPKストップ。後半は今季さらなる飛躍が期待される鈴木唯人がスーパートラップで抜け出し、角度のないところから右足で決めた。昨シーズンの湘南戦のゴラッソを思い起こさせる角度からのゴールで勝ち点1をもたらした。ルヴァンカップの名古屋戦は、8人先発を入れ替えてスコアレス。それでも相模原からの期限付き移籍から復帰した成岡輝瑠やルーキー、菊地脩太が無失点に貢献するなど、若手が躍動したことはポジティブな材料だ。

開幕戦のシステムは昨シーズンの継続となったが、カギとなるのは「2トップの組み合わせ」である。現在チームとしては「ケガによる本職FWのレギュラー不在」という大きな不安材料を抱える。確かに鈴木唯人は昨シーズンも2トップの一角として多くの試合には出ていたが、何と言っても得点源のチアゴ・サンタナの穴は大きい。基準となる強さはもちろん、足元のうまさを活かした突破や意表を突く強烈ミドルもあるだけに、序盤に抜けるのは試練となる。さらには昨シーズン途中出場の多かったディサロ燦シルヴァーノも怪我で離脱中。開幕戦は鈴木唯人と新戦力の神谷優太、ルヴァンはベンジャミン・コロリと滝裕太という本来2列目の選手である。経験は過去にある選手ではあったものの、ポストプレー以外の打開策でゴールに迫りたい。

選手として注目したいのは、白崎凌兵の名前を挙げたい。2017年のダービーでは背番号10をつけて戦ったが3連敗と屈辱を味わった。今シーズン、鹿島→鳥栖で経験を積んで帰ってきた男は若いチームの中ではすでに中堅の領域に。ダービーの悔しさと重みを知る男が、あの頃とは違ったプレーで勝利に導けるか。

もう一人、ユース出身の立田悠悟にも期待している。2018年のデビュー時はSBで5-1の大勝だったり、翌年の2019年はCBで苦しんでいたチームの初勝利をダービーで挙げて涙を流していた姿も印象的だ。ここ数年はレギュラー定着とはいっていないが、今季は開幕スタメンを掴み、ルヴァンカップの途中出場ではキャプテンマークも巻いた。もう一度2018年の躍動を期す男の高さに注目したい。

開幕から松岡大起、西澤健太も含めた主力の離脱のアクシデントもある中、選手時代にもダービーを知る平岡宏章監督がこの一戦にかける思いも相当なものだろう。監督が常々口にするチームのために走れる男たちのプレーが勝利を引き寄せる。前回のダービーで敗れた悔しさは忘れていないだろう。3年間J1で待ち続けた思いをぶつける。

⑱白崎凌兵
4年ぶりに帰ってきたかつての10番。もともと光るテクニックに献身性も兼ね備え、走行距離も毎試合上位に入ることも多い。ボランチでの先発出場が濃厚で勝利へのカギを握る
②立田悠悟
清水の中でも特にダービーへの気持ちが強い男の1人。2019年は勝って涙したアウェーと、途中出場で結果を残せなかったホームと極端な結果だった。復活へダービーでさらに波に乗りたい


「3年」待ったダービー復活

3年という時の流れは早いもので、静岡ダービーを知る選手が少なくなった。3年前のアイスタでのダービーにベンチ入りした選手で、現在も在籍している選手は磐田が6人(八田直樹・大井健太郎・小川大貴・松本昌也・山本康裕・上原力也)、清水が4人(大久保択生、立田悠悟、竹内涼、西澤健太)とめっきり減った。前向きに捉えれば、怖いもの知らずの選手が躍動するのか?新たなダービー男が誕生するのか?という流れにもなるだろう。誰が名乗りを上げるのか、新時代の幕開けを告げるダービーになってほしい。

そして、未経験者の中では遠藤保仁、権田修一といった日本代表やクラブで百戦錬磨の経験を持つベテランの名前もある。互いに昨シーズンのレンタルから完全移籍に切り替えた理由の1つにはダービーに出たいという思いもあるだろう。それは非常に嬉しいことである。
かつては中村俊輔、鄭大世といった大物も感銘を受け、躍動した静岡ダービー。この二人の駆け引きにも注目だ。

そして、この対戦を待ちわびるサポーターの思い。チケット完売という事実からして、熱意は衰えていない。でも3年前とは違って、声が出せなくなった。ダービー特有の煽りやブーイングもしにくくなり、迫力には欠けるかもしれない。
けど、あえて言いたい。

中身と気持ちはバチバチにぶつかり合う、思わず声が出てしまうような、最高のゲームを見せてほしい。

個人的には3-2とか、打ち合い大歓迎です。

過去の自己紹介でも書いた通り、いずれはもう一度、頂点を競い合う戦いにしたい。
この静岡ダービーは常に王国の火付け役、そして一大イベントであってほしい。


過去の自己紹介はこちらから。
今回はあえて中立な立場で書かせていただきました。

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