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選抜大会 総括

3月30日に大阪桐蔭の優勝で幕を閉じた「第25回全国高等学校選抜ラグビーフットボール大会」。準々決勝進出校を中心に大会を振り返る。

選抜を制したのは大阪桐蔭
近畿大会を快勝で勝ち取った実力はやはり凄まじく、準々決勝、準決勝とロースコアのゲームを勝ち切ると、決勝では石見智翠館を圧倒した。
攻守に献身的なCTB名取凛之輔主将を中心に、フィジカルで前に出て、勝利をものにした。FWは昨季ほどの重量感はないが、それでも献身性と推進力は随一。PR原悠翔、FL前川竜之介、No8大門一心を中核に決定力も光った。SH川端隆馬とSO上田倭楓は視野が広く、状況判断に優れた働きで試合をドミネイト。世代をリードするハーフ団といえる実力を示した。
また、有力選手の豊富さも垣間見え、これからの陣容にも非常に注目である。決勝にて今大会初先発を果たしたWTB馬場敦輝は好タックルをみせるなど存在感を示した。先の花園では3試合の先発を含む4試合に出場したが、今大会は鋭いランの水島功太郎と力強く前に出る山添仁琴が好調で決勝が初登場だった。スピードはその二人を凌ぐ。決勝にて途中出場し圧巻の2トライを挙げた竹之下誠仁は今大会全5試合に出場したが、先発は1試合。前チームから試合に絡むが、今大会は1年生(新2年生)の手崎颯志が13番をメインで担った。ダイナミックな働きは他選手になく、違いを生み出せる。HOではセットプレーの中心となった芦高優一に加え、4試合に出場した光安翔平は水島に並ぶチームトップの5トライを挙げた。

準優勝を果たした石見智翠館
決勝では大阪桐蔭に屈したものの、相手を押し込む力は素晴らしく、準決勝ではディフェンスが光る國學院栃木から4トライを挙げるなど大会を通して決定力を発揮した。
HO/No8祝原久温主将を中心に、昨季の花園を主力として経験した面々が約半数残り、非常に完成度が高いチームだった。攻守に牽引した祝原に加え、キックで上手くコントロールしたFB新井竜之介もMVP級のパフォーマンスで、推進力をもたらした山根風雅と山本力優の両LO、プレーメイクが光った司令塔SO原田崇良らも素晴らしかった。今大会のメンバーはCTB/WTB久住洸誓を除いて新3年生が占めた。決勝戦を筆頭にリザーブから多くの選手が登場し、スタートに違わぬ実力を披露して部内競争が激しい。準決勝、決勝で先発したWTB久富洋希は何度となく鋭いランをみせ、主にリザーブで登場したFL沼壱希は高いワークレートを示すなど多くのレギュラークラスを抱える。チーム内での切磋琢磨も踏まえて、進化を遂げる今後を注視したい。

昨季高校2冠の桐蔭学園は準決勝で大阪桐蔭に接戦の末、敗れた。
前チームから多くの主力が入れ替わったが、例年のように非常に総合力が高い戦いぶりでアタック、ディフェンスともに安定感が抜群だった。長崎北陽台、東海大大阪仰星と好チームを撃破し迎えた準々決勝では今大会最も勢いをみせたといえる目黒学院をノースコアに抑える完勝をみせた。
FL申驥世を中心としたFW陣はまとまりが良く、安定したフェイズアタックのみならず、得点機に絡む働きをみせた。No8新里堅志やPR喜瑛人らのキャリーは迫力があり、好機を生み出した。SH後藤快斗がコントロールするBKは突破力があり、タックルを外しながら前進するCTB松本桂太、鋭く力強いランをみせるWTB草薙拓海とFB古賀龍人らが光った。前出のPR喜やHO堂薗尚悟、SO竹山史人ら新2年生も存在感を示し、バランスのとれた能力を誇る面々が並ぶチームの今後の研ぎ澄ましに注目が集まる。

関東王者の國學院栃木は準決勝で石見智翠館に敗れた。
昨季のタレントが残るチームはとにかくディフェンスが堅く、今大会はそのポテンシャルを遺憾なく発揮した。FW、BKともに低く刺さるタックルが際立ち、強豪との連戦が続いたが、準決勝前まで奪われたトライは2つのみだった。特に、京都成章、御所実業との一戦ではロースコアのゲームを制した。ディフェンスで圧力をかけ、迎えた好機を確実にものにして勝ち上がった。
両LOの笹本直希と横溝育朗を中心に、低く献身的なタックルが目立つFW陣は非常にワークレートが高く、各選手が攻守に前に出る力を示した。HO齋藤丈太郎のキャリーは際立った。BKは前チームから司令塔を担うSO神尾樹凛が司り、CTB福田恒秀道やFB永沢拓夢らが違いを生み出して、粘りのなかで好機を手繰り寄せた。SH下井田雄斗の嗅覚も素晴らしく、WTB井戸川ラトレルはランに加え、ハイボール処理もよかった。

ベスト8入りした御所実業。準々決勝では関東王者の國學院栃木にロースコアの接戦で敗れた。
選抜大会は5年ぶりで、花園はここ2年を天理に譲っており、久しぶりの全国の舞台となった。前チームからの主力及びU17近畿選出者を多数擁するチームは非常に前評判が高かった。FW陣によるラインアウトモールが強力で決定力が際立った。No8本多守人は7トライの活躍。長身両LOの黒木新夢と服部凰真、仕事量が豊富なFL辻口豪都らが力強く、献身的な働きが光った。BKは中心選手のCTB大久保幸汰を欠いたが、普段はWTBの篠田武志がインサイドセンターで的確なプレーをみせた。CTB若山遙斗やWTB上田悠真らの突破もよかった。前後半を担った徳重隼と森安優裕のSH陣も持ち味をみせた。
選抜大会では國栃のディフェンスを破りきれず、準々決勝で敗退したが、好選手揃うチームはまだまだ期待値が高い。次は予選会を制して出場するサニックスワールドユースでの戦いを楽しみに待ちたい。

初のベスト8入りを果たした東海大相模。準々決勝では優勝した大阪桐蔭に敗れたものの、接戦を繰り広げた。
チームの魅力の一つはサイズ感のある力強いFW陣。選抜大会ではその実力を遺憾なく発揮。三木監督が「2パック作れる」という豊富さを誇り、3試合で14人が先発し、計16人が出場した。誰が出ても高品質な陣容となる。準々決勝をみても、主将のHO矢澤翼、大駒のPR佐野零樹とNo8藤久保陸、188cmのLO加賀谷太惟らが先発し、昨季から主力のLO笹部隆毅とNo8小池颯太、好キャリーを連発したHO金澤壱樹らがリザーブから登場した。他校も羨む面々を今後もより注視したい。また、BKは一昨季の花園を経験したSO長濱堅が上手いコントロールで、WTB恩田暖が違いを生むランで中核となり、SH紺谷隼太郎とCTB中尾思らも高い実力を示した。
新人戦で敗れた桐蔭学園の牙城を秋に崩すため、研鑽を積む。

興国、茗溪学園を下し、準々決勝にて石見智翠館に敗れたものの、ベスト8入りを果たした中部大春日丘
スタメンには実に12人の1年生(新2年生)が名を連ねた。HO伊藤尚、SH荒木奨陽、FB加藤秀悟は先の花園でも主力としてプレーした。現1年生(新2年生)は中3時に愛知県スクール代表として全国ジュニアにて大阪府中学校代表と引き分けた面々が中心となっている。BKからNo8に転向した坂口湊眞は今大会4トライを挙げる活躍を披露した。186cmのLO三治蒼生も存在感抜群。10番を背負った芦高弘晟も安定した働きをみせた(ちなみに報徳学園のSH日比野陽穂や天理のWTB小松駿太郎、御所実業のPR仲井陸人らも当時の愛知県スクール代表のメンバー)。
若いチームを牽引するPR川島大虎主将や1年からレギュラーのWTB鬼頭慶らを踏まえ、伸び代を多いに残すチームに期待したい。

1回戦で東福岡を撃破するなど今大会際立つ活躍で初のベスト8を達成した目黒学院。桐蔭学園には敗れたものの、勝ち切る強さを披露した。
最注目だったNo8ブルースネオル・ロケティはその抜群な破壊力を遺憾なく発揮。FWはLOフィッシャー慶音、HO岩崎ヴィージェー純、FLカヴェインガフォラウ・ラトゥ、FL阿部史門ら力強さが際立った。BKは昨季から主力の1年生(新2年生)SO及川拓巳とFB中村理応のコントロールが素晴らしく、CTB石掛諒眞の突破、SH渡邉幹太のテンポがチームに勢いをもたらした。好選手が揃うチームのさらなる飛躍に期待したい。

関東勢が4校、近畿勢が2校、ベスト8に駒を進めるなかで、九州勢は準々決勝に進出できなった。九州勢が8強を逃したのは大会史上初の出来事だった。

一回戦敗退に終わった東福岡は選抜大会ではここ3年連続で決勝に進み、花園でもここ2年続けて決勝の舞台に立っているだけにまさかの結果となった。
新チームは前チームからの主力がごっそり抜けた。先の花園決勝で先発したのはCTB/WTB深田衣咲のみ。これは前年とほぼ同様の状況で、昨季も新チームでは公式戦出場経験の少ない面々が主力となった。昨季の同時期にはタイトファイブやSH利守晴らU17トレセンに選出された面々や、花園を経験していたNo8高比良恭介やCTB神拓実ら2年生(新3年生)陣がチームを牽引した。
今季は新人戦から、先の花園で先発を経験しているFL/LO古澤将太とCTB/WTB半田悦翔を含め、多くの1年生(新2年生)が出場。No8古田学央主将を含め、2年生(新3年生)陣も台頭し、U17九州選出のSH中嶋優成、LO梁瀬将斗らも名を連ねたが、1回戦では相手の勢いと勝負強さに屈し、逆転を許した(1年生が多くても勝ち上がった中部大春日丘や目黒学院などはその数名は前チームからの主力で、経験に差はあった)。
たらればになるが、紙一重で目黒学院に勝利して勝ち上がっていれば間違いなく選抜大会での成長があった。
それでも、多くの下級生がひしめくチームは伸び代十分で今後、必ず強さをみせるはず。次は昨季の花園準優勝校として出場する今月末から開催のサニックスワールドユースでの戦いぶりに期待したい。

また、大分東明長崎北陽台は昨季からの主力が多く残り、期待値が高かったが、それぞれ石見智翠館、桐蔭学園に敗れた。

その他のチームを含めて印象に残った選手などについては改めて別投稿にて触れていきたい。

大阪桐蔭の強さを感じた大会だったが、関東勢の充実ぶりも印象的だった。また、石見智翠館、中部大春日丘はやはり実力を示した。ベスト8に入った御所実業をはじめ、その他の近畿勢もこれからが楽しみ。九州勢の巻き返しにも期待。

花園はもっと面白くなる。

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