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あの日の備忘録から1年~小さな宇宙飛行士を乗せて

岸田さん主催のキナリ杯を機に、
1年前に自分が書いた文章を元に、これまでの1年で起きた出来事やそれを通じて感じたことを今一度書き起こしてみたいと思う。
去年はてなブログに投稿した時のタイトルは「備忘録」だったが、今書いているこの文章も相変わらず今の自分の気持ちを忘れないための備忘録である。

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小さな宇宙飛行士

宇宙飛行士になりたい。

そう思ったのは確か小学6年生か中学1年生のときだ。文集に将来の夢を書く欄があり、「宇宙飛行士」と書いたのであった。なぜ宇宙飛行士になりたくなったのかは正直覚えていないが、子どもの頃から夜空を見上げて星座を探したりプラネタリウムに行ったりするのが好きだったので、遠い宇宙に思いを馳せるうちに宇宙に行きたくなったのだろう。

地元は田舎で家の周りには街灯がほとんどなかったので、晴れた日はよく星見をしていた。

「隣の山からイノシシが、暗闇から幽霊が出てくるんじゃないか」という恐怖と、「いつまでもいつまでも星を見ていたい。今日こそは流れ星が見れるはず!」という期待の間でいつも揺れていた。(子どもの頃は、流れ星は自分が空を見るのやめた途端に流れるものだって思ってたなぁ)

とにかく宇宙が好きだった。

 
中学校高学年になると、国語・英語・社会が得意で、理科と数学が苦手な典型的な、いわゆる「文系人間」になっていた。

中学の卒業文集では、おちゃらけて「立派な大人になること」「デュエリストになること」などと書いたのを覚えている。宇宙大好き少年も思春期特有の恥ずかしさを覚えてしまったのだ。


高校に上がると、「文系人間」に拍車がかかることになった。今思えばただただ数学や理系教科を勉強することから、逃げていただけだったのだが。勉強したくなかったから、「わかったふり」をしていたのだと思う。
「わかったふり」をしたまま問題を解くのだから、解けるわけがない。。
そんな状態だったので、なんとなくただなんとなく文系の国立に行ければいいやと思っていた。数年前に憧れた夢色の宇宙服は子どもの頃に遊んで放っておいたおもちゃのように、いつの間にかほこりを被っていた。


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見せかけの重力を振り払え

高校には文理選択なるものがある。
将来自分が何をしたいのかを考え、そのためには文系と理系どちらに進んだら良いのかを考えるー(普通科の)高校生にとっては究極の二択だ。

最初は上述の通り、自分の得意科目に合った分野に進もうと思っていた。

しかし、文理選択のその先ー

将来自分がやりたいこと、なっていたい姿を思い浮かべてみると、

辺り一帯暗黒の中に散りばめられたきらきら輝く宝石たちが思い起こされた。


「そこそこ偏差値の高い国立文系に行ければいいんだっけ?」
「違うよ、ぼくが行きたいのは宇宙だよ」。
あの頃の、ただ純粋に宇宙が好きな少年はまだぼくの中に生きていた。

「自分はブンケイニンゲンなのだからリケイは無理、ブンケイの道に進もう」
「皆子どもの頃の将来の夢とかもう追いかけてないし」
「文系だとそこそこ良いところにいけそうやけど、理系だと親が望むような良い大学に行けんかも」
そんなものは全てくだらない、見せかけの重力だったのだ。

思春期を迎えても、周りにバカにされても、理系科目より文系科目が得意だと気付いても、親に反対されても、
そんなのお構い無しに少年は重力を振り払って再び宇宙を目指した。

将来の夢は?と聞かれると必ず「宇宙飛行士!」と答えるようになっていた。夢を聞かれると嬉しかったし、答えるときは得意気だった。

「宇宙飛行士になるには」と、Google検索で探したところ、理系の大学を卒業することが最低条件の1つであることを知った。もう一度走り出した宇宙への夢は、勢いよく空へ駆けて行った。

 
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打ち上げ失敗のその先へ

宇宙への夢を掲げアクセルを入れ直したはずだったのだが、数学と物理から正面から向き合うことができず、志望校へは行けなかった。
志望通りではなかったが、理系学部の大学には進学できた。
学科では、地震学や火山学、分析化学や多様性生物学が学べた。でも僕は宇宙について学びたかった。
そこで、入学前から考えていた「転科試験」を受験したが、試験範囲を正確に把握しておらず、不合格となってしまった…
 

そんなこんなで在学中は地球の構造や地殻変動、地球の地質や鉱物について学んだ。宇宙を学べる学科に入ることはできなかったが、それでも宇宙が好きだったので、もぐりで他学科の講義を受けたり、ロケットを作るサークルに入ったり、宇宙系のイベントにはお金の許す範囲で参加したりと、できる限り宇宙に浸かっていた。
本当に諦めの悪い人間だと思う。

そんな中で出会った同じような宇宙好きな友達とは今も、切磋琢磨してそれぞれの道で夢に向かって頑張っている(つもりだ)。

研究室配属は”人”で選んだ。
自分がおもしろいと思える人を探した。

中でも自分の指導教員となった先生は、
「自分がおもしろいと思ったことを自分の専門分野を問わずやる」
という自由な人でその姿勢には大きく影響を受けた。

大学時代に、他に影響を受けた人物として、NASAのJPLで働いている小野雅裕さん、自分と同じ大学を卒業後某宇宙開発機構で有人宇宙開発に携わっている先輩の2人が挙げられる。
小野さんの著書の「宇宙を目指して海を渡る」は自分の人生のバイブルとも言える。人生で一番読んだ本だと胸を張って言える。

先輩が講演会で言っていた
「何をやれば良いのかわからない時は、とりあえず目の前のことをやり続ければいい。私はそうしてここまでやってこれました。」という言葉は、転科試験で不合格になって不貞腐れていた自分を奮い立たせてくれた。


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社会の海原

僕は元々宇宙飛行士になりたくて今の道に進んだと書いた。
宇宙飛行士になると、今まで従事していた仕事を辞めなければならない。
宇宙飛行士に求められる資質はとてつもなく高く、宇宙飛行士になれる確率はとてつもなく低い。2008年の募集では、最大3人の採用に対して963人もの応募があったそうだ。

大学3,4年のとき
宇宙飛行士になれなくてもずっと続けたいと思う仕事はなんだろうか、と考えた。

そうして考え出した答えは、
「自分がおもしろいと思える仕事がしたい」
ということ。
そして自分の中で一番おもしろいと思えるのはやっぱり宇宙だということだった。

そうした思いから、大学院や教師という他の選択肢を振り払って、ご縁があって合格をいただいた宇宙に関わる会社に進んだ。


正直、1年目の時は希望していた部署ではなかったのと、職場の人間関係で毎日心が死んでいた。
夜勤業務のときは今なんのために仕事をしているのかわからなくなり頭がおかしくなりそうな時もあった。
本当に死にたくなって突然高校の恩師に会いに行ったこともある。
次の長期休みにまた飲みに行くという約束をしてくださり僕を支えてくれた。
恩師だけではなく、職場の先輩や友達にも本当に助けられた。
職場の先輩がくれた「仕事もお金も自分が幸せになるための手段でしかない」という言葉は自分の生きる指針の1つになった。

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光の射す方へ


そして、今は当初希望していた場所で働いている。
望んでいた通りの場所に進んでも、進路や人間関係などの悩みは尽きなかった。
不思議なもんだ。
今が一番自分のやりたいことに対して考えて、真正面から向き合っている。

自分の本音と向き合い続けた結果、ぼくは研究がしたいことに気付かされ、
今は大学院へ進学するため勉強中だ。
表層で宇宙に関わるよりも、もっと宇宙の深い部分が知りたい(特に、地球外の宇宙において生命がいるのか)のと、医療に関わりたいという気持ちが強くなったのが理由だ。
それに、宇宙飛行士を目指すならやはりドクターの資格を持っていないと箔が付かないという思いもある。


仕事面では沈む時もあったが、趣味の宇宙の面では今までで一番宇宙に浸かることができた。

最近は昔みたいなただ純粋で宇宙が大好きな気持ちになれることが多くて嬉しい。
振り返ってみると、無駄だと思っていたことも今の自分の糧になっていて、深い深い絶望もずっと高く遠くに行くためには必要なんじゃないかと今は思う。
正にスティーブ・ジョブズの、
「you can’t connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards.
ー 人は、後から振り返ってみてやっと点の繋がりに気付く」
という言葉通りだと思う。

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銀河鉄道の行く先

今日、noteを書こうと思った理由が2つある。

1つは、仕事で回ってきたメールの差出人がなんか見たことある名前で、よく確認してみると、
大学1年生の時、転科試験で不合格となり不貞腐れていた自分に、講演会を通して鞭を打ってくれた先輩だったからだ。
メーリングリストの1人に過ぎないが、確かにあの頃思い描いた未来に、宇宙に繋がってるぞ!と1人熱くなった。

もう1つは、以前ご縁があり一緒に食事をさせていただいた油井宇宙飛行士と偶然出会えたからだ。
光栄にも、自分のことを覚えてくださってて、沈んでいたあの時には信じられなかったようなまぎれもない現実に目の前が明るくなった。
 

高校の頃くらいから事あるごとに宇宙飛行士になることが夢だと口にしてきた。
最初は馬鹿にされることが多かったが、言い続けることで応援してくれる人も増えた。
口に出すことで、その度に自分に、
自分のやりたいことは何なのか確認していた。

信じていれば、あきらめなければ夢が叶うとは思わないが、たとえ宇宙飛行士になれなかったとしても、目標を高く設定しておき、夢に向かって一つ一つやるべきことをやっていくことで、自分の能力も上がっていくし選択肢も広がっていくので結果として宇宙飛行士に近づくことができると思っている。

これからもつまづくことや思い悩むこと、時には最悪の選択肢が過ぎる時だってあるだろう。
何か一つ解決しても、また新しい問題が現れる、人生なんてそんな感じだ。今までの人生で学んだ。
それでも、自分の好きなことや人、抱いた夢がいる方へ進み続けていれば、思いもよらぬ明日を連れて来てくれる。
晴天とは程遠い終わらない暗闇にも、星を思い浮かべたなら、すぐ銀河の中だ。
人生なんてそんな感じだ。これは今までの人生とBUMPから学んだ。

1年、あっという間だったな。


おそらくこんな感じで人生の砂時計はさらさらと落ちて行く。気が付けばあっち側だ。
終着駅は何処にあるのか分からないが、気が付けば宇宙遊泳していられるよう、目の前のことを頑張り続けるしかない。
小さな宇宙少年が舵を取る、このちっぽけな銀河鉄道に乗って。

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