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好きな作品や美術展について勝手に語ろう【運慶について】

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を毎週楽しみに観ていますが、5月29日の放送で、源九郎義経がいなくなった後を継ぐかのように”破天荒な天才型”人物として仏師の運慶が登場しました。今回は「運慶」について、2017年に東京国立博物館で開催された「特別展 運慶」の感想をベースに記してみたいと思います。

仏像は子どもの頃から好きで、百科事典に載っている”〇〇美術”の仏像コーナーをうっとり眺めているような娘でした。中でも運慶の造った仏像は男性的で筋骨隆々、まるで生きているかのような肌の張りと躍動感が強く印象に残り、一度実見したいと思っていました。

2017年秋、東京国立博物館で「興福寺中金堂再建記念特別展 運慶」が開催されると聞き、満を持して上野に向かいました。

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駅にあるチケット売り場にはすでに行列ができていました(前売り券は購入済み)。
入場するとすぐ奈良・円成寺の大日如来像がお出迎え。
(写真は絵葉書を撮影。)

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運慶の仏師デビュー作といわれる本像。張りのある若々しい肌が実に美しい!美術鑑賞仲間より単眼鏡持参を勧められていたので、玉眼(仏像の目に水晶の板をはめ込む技法)や装身具などの細部を単眼鏡でじっくり拝見させていただきました。

このほか印象に残ったのは、静岡・願成就院の毘沙門天像。
大河ドラマの”紀行”でも紹介された願成就院の阿弥陀如来坐像の右側に安置されている仏像です。(写真は絵葉書を撮影。)

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張りつめたような筋肉と頬、玉眼でギロっと睨みを利かせ力みなぎる戦いの神は美しく、腰をひねって立つお姿は余裕すら感じさせるものでした。

そして奈良・興福寺北円堂にある無著・世親菩薩像。
こちらは絵はがきを購入しておらず「美しい日本の仏像」のツイートを貼付します。

どっしりと落ち着いたそのお姿は、深い精神世界を感じさせるようでした。

運慶の息子と周辺の仏師の作品も展示されていました。
運慶の三男、康弁作の奈良・興福寺の天燈鬼立像、龍燈鬼立像。
こちらも絵はがきを購入しておらずツイートを貼付。

四天王に踏みつけられていた邪鬼がここでは出世(?)し燈明を捧げ持っており、そのユニークな姿は写実的であり実にユーモラス、可愛らしいものでした。


今「鎌倉殿の13人」を観ながら運慶の仏像を思い出すと、武家社会の黎明期に写実的・男性的な力強い運慶の作品が坂東武者に好まれた理由が、わかるような気がします。時に血も涙もない冷酷な場面さえ展開する鎌倉。シリアスな現実を前にして、ひたすら極楽浄土に救いを求め貴族的な美を追求した平安の仏ではなく、より生身の人間に近いリアルな運慶仏が好まれたのではないかと思うのです。


余談ですが、この運慶展より後日になりますが、横須賀にある「浄楽寺」が国の重要文化財に指定された5体の運慶仏を収める収蔵庫の補修工事費用をクラウドファンディングで集めていました。運慶展があまりに素晴らしかったので、後世への貴重な文化財を伝えるべく、幾ばくかの寄付をしました。

浄楽寺は、「鎌倉殿の13人」にも登場する「侍所別当」である武骨で剛毅な坂東武者、和田義盛が発願したお寺です。収蔵庫の運慶仏は年に2回公開されているそうです。一度拝観したいですね。

ちなみに大河イヤーの今年(2022年)、7月6日~9月4日横須賀美術館で開催される企画展「運慶 鎌倉幕府と三浦一族」で浄楽寺の運慶仏も展示されるそうです。

博物館の照明の下でじっくりと、美術品として仏像を観るのも良し、お寺の御堂で信仰の対象として仏像を拝観するのもまた良し・・。

*これは2017年10月4日のFacebookへの投稿を加筆・修正したものです。





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