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【映画業界激動】企業とメジャーが支えた業界は、「分散型」へ

“個人”が主役の時代。企業が先導した歴史は終わり、あらゆる業界が分散型へと激変している。このトピックでは、「次世代型アーティストの日常」を、知ることができる。生活と創作に明け暮れながらしかし社会と業界の推移に自身を照らして不安を感じるばかりなアーティストの、ために書く。

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アーティスト情報局:太一監督
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日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、
監督がスタジオから発する生存の記
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『 企業主導から、個人主導へ 』

業界は、企業が管理運営してきた。世界一時停止以降に企業は自社を維持することに忙しく、業界の管理に手が回っていない。一方、テレワークを契機に加速したプラットフォームの利便性とガジェットの有効性認知がさらに、社会を生きる一般人に“価値観の変化”をうながした。それは、衝撃手的な規模で。

もう一般人は、企業を信じない。
自ら情報分析を行えるようになった一般人たちは激増した情報発信に溺れることなく「本質」を見極める術を得た。

一方、企業はその風潮を見逃さない、
一部にはトップダウンのピラミッドを崩せず、中央集権型のままに瓦解しはじめている大企業がありつつも多くのメジャーがまた、「分散型」を支持した。自ら分散型業態へとシフトするスピードは無くとも彼らは、極小規模ながら活力あるスタートアップのクラスターを支え、“機能のみを分散化”し始めている。

企業が支え、“個人が主役”の業界が動き出した、ということだ。それは当然に、国際社会でのデファクトスタンダードへと向かっている。

そこで、日本に入っていないニュースをお知らせしておこう。

■ 最新国際ニュース:メキシコのインディーズ制作会社TresTres FilmsがMorbido Labプロジェクトで始動

長年の同僚であり、大学時代の友人3人が集結し、メキシコシティを拠点とする若くてフレッシュな独立プロダクション、TresTres Filmsを立ち上げた。

3人は現在、Sanfic Industria Morbido Labの長編ジャンルプロジェクトに参加している。このプロジェクトは、投資家、共同プロデューサー、販売代理店、映画祭や市場の代表者を対象とした6つのプロジェクトの1つで、Morbidoの創設者兼CEOであるPablo Guisa氏による予算支援や制作支援を受ける。

「TresTresTres Filmsは、映画への愛と、映画が私たちに感じさせるものから生まれました」と創業者のゴヴェラが語っている。「理想やビジョンを共有し、自分たちが楽しんでやっていることをスクリーン上で実現することに献身する友人たちと会社を設立することは、喜びであり、スリルでもあります。私たちは、祖国の名を称え、皆が誇りに思えるようなコンテンツを作りたいと思っています、」

TresTresTres Filmsのモンテスが語る。「私たちの夢は、心に触れ、心を揺さぶるような物語を提供し、メキシコの映画産業の成長と向上に貢献する、多作な制作会社になることです」と語る。現在、TresTresTres Filmsは3つのプロジェクトを開発中だ。 - NOVEMBER 05, 2021 VARIETY -

『 ニュースのよみかた: 』

メキシコの極小インディペンデント映画スタジオが心意気だけで始動したが、大手の支援を受けて母国の映画産業を背負う決意を表明、という記事。

若々しい剛気に初老が目を細めるほのぼの記事だと感じるならもしかしたら、“時代”を読み違えているかもしれない。エンターテインメント頂点の本紙が独占で取り上げているこの記事には、業界の激変、マーケットの推移を示す重要な現実が詰まっている。

・実績の無いスタートアップが台頭:過去の成果よりも現在の実行力重視
・メジャーがインディペンデントを支援:企業存続のためのゲームチェンジ
・事業ビジョンは業績よりも貢献:企業単位の目標が通用しない現実
・業務単位の事業化でプロジェクトを分散化:リスクヘッジの解像度Up
・メキシコで起きている:商業映画産業構造のハリウッド中央集権終焉

本記事が内包するすべては現況に則しており、業界の向かう先を示しているといえる。国際映画人をはじめとする全体が気付くのは、まだまだ先。ここ「アーティスト情報局」のメンバーにはあらかじめ、共有しておこうと考えた次第。

『 気付く者、行動する者、その他 』

情報リテラシーの高い人々が注目され少し前、“ビジネス芸人”と呼称されるムーヴメントがあった。そこには、ルール度外視の成功法則が描かれ、再現性を謳う事業モデルも存在していた。しかし残念ながら“会員ビジネス”と“視聴者獲得”の色が濃くなり、飽きられた。それはさておき、「気付く者」を量産してくれた功績を賞賛したい。“業界ルール”という絶対領域をも再考させる“考える習慣”は、実にすばらしかった。

“気付く者”たちの中からやがて、“点をストーリー化”できる者たちが現れ、再現性を実証しようとするコミュニティが発生した。“中央集権型サロン”に隣接していながら依存性のない才能による、平静なテストだった。彼らは気負うこと無く、「行動する者」になった。目先を追わず、業績よりも貢献を掲げる、俯瞰目線に長けた彼らは互いにスキームを持ち寄り、「価値の共有」を実践しはじめた。

「分散型業界」の誕生である。
歴史上のどんなに巨大な業界も最初は、数名の行動から始まっている。
彼らの少人数、小規模、業績無しは一切、ネガティヴな要素にはならない。現状を維持できず人材的負債を抱えている大企業と比べれば、遥かに有利なのだから。

『 ルール無用、マナーは絶対 』

業界が掲げるルールとは、企業都合にあり。現代が遵守する、意味が無い。一方で「業界マナー」は、未来へと伝承すべき価値である。

構造はシンプル。
「ルール」が企業の業績に則して都度変更され続けてきた状況に対して「マナー」とは、誰もが一代では生み出せない“継承されてきた業界資産”であるためだ。“業界”という概念を観える化するならばそれは、ブランドとしての姿であろう。「業界マナー=ブランド価値」なのである。どこまでルールを変えても支持母体の企業を変更すれば、業界は存続できるしかし、業界マナーという意思を失えば、業界というブランドは消滅する。

業界マナーとは、“文化貢献への地図”である。

『 次世代型アーティストの姿 』

ストイックな創作姿勢はそのままに、至って自然体だとされる。彼らが求める価値とは“本質”であり、その課程に惑わされることはない。

一方で、創作活動そのものの在り方にも本質を求め、“完成作品”という理想の手前にある“苦悩”というストーリーが発する価値を、見逃さない。“プロセス エコノミー”という言葉に描かれる“感性までの課程”をもコンテンツ化し、日常的な情報発信の重要性を理解している。

つまりは、徹底的な情報開示こそがマナーであり、成果という価値を共有することを目的として、あらゆる可能性と連携する日々を生きる。

個人が追求するのは業績ではなく、完全に分散化された活動が獲得する「全体への貢献」である。そこにもう、“敵”はいない。

『 編集後記:』

若さの事業スピードに、圧倒される日々だ。
彼らはあらゆる価値を共有することで使命をかかげて連携し、巨大化し続けている。それはさながら、京セラの稲盛和夫さんが提唱した“アメーバ経営”の実践。一方、中高年事業家たちは資産売却でピラミッド型企業の温存に必死で。この量極端な構造はそのまま、アーティストの日常を直撃する。

連携し、共有しよう。もう、敵はいない。

可能性の中に正義を求めて、映画製作の現場へ帰るとしよう。では、また明日。

■ 太一(映画家):アーティスト業界情報局 × 日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、 監督がスタジオから発する生存の記