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生成モデル VQVAE(Vector Quantized Variational AutoEncoder)について


はじめに

VQVAEの基本

VQVAEは、オートエンコーダの一種で、特に高解像度の画像を生成するのに適した手法です。

深層学習の種類の中にオートエンコーダがあります
オートエンコーダ(自己符号化器, autoencoder)とは、ニューラルネットワークを利用した教師なし機械学習の手法の一つです。次元削減や特徴抽出を目的に登場しましたが、近年では生成モデルとしても用いられています

オートエンコーダについて

オートエンコーダは、コンピューターがデータを「圧縮」してから「元に戻す」ことを学ぶ方法です。例えば、たくさんの写真があるとき、これらを小さなスペースに保存するためには、写真の「大事な部分だけを抜き出して小さくする」必要があります。オートエンコーダは、まず写真を小さくする(圧縮する)方法を学び、その後、その小さなデータから元の写真をできるだけよく再現する(元に戻す)方法を学びます。

変分オートエンコーダ(VAE)について

変分オートエンコーダは、オートエンコーダの特別な形で、新しいデータを「生成」することができます。通常のオートエンコーダが写真を小さくして元に戻すだけなら、VAEは新しい写真を作り出すことができます。

VAEは、写真を小さくするときに、ただ小さくするだけでなく、その小さくしたデータ(潜在変数と呼ばれます)があるルール(正規分布という数学的なルール)に従うようにします。これにより、似たような写真は似たような小さなデータになります。そして、そのルールに従って新しい小さなデータを作り出し、それを使って新しい写真を生成することができます。

ランダムサンプリングとReparameterization trick

VAEでは、新しい小さなデータを作るときに「ランダムサンプリング」という方法を使います。これは、サイコロを振るようなもので、偶然に任せて新しいデータを作り出します。ただ、コンピューターが学習するためには、このランダムな過程をうまく扱う必要があります。そこで「Reparameterization trick」という技術を使います。これは、ランダムな部分を別の方法で表現し、コンピューターが学習しやすくするテクニックです。


自己回帰モデル(AR)について

自己回帰モデル(AR)は、過去のデータを基に現在のデータを予測する手法です。例えば、株価や気象の予測に使われます。

自己回帰モデルの生成手法

自己回帰モデルは、既知の時系列データを基に未知のデータを生成する手法としても広く使われています。この手法では、既知のデータから未知のデータの尤度(発生確率)を推定し、その尤度に基づいて新しいデータを生成します。このプロセスを繰り返すことで、徐々に全体の時系列データを構築していきます。

画像生成における応用

画像生成の分野では、PixelCNNのような自己回帰モデルが知られています。このモデルでは、画像のピクセルを時系列データとして扱い、左上から順にピクセルを生成していきます。これにより、連続したピクセルの情報を利用して、次のピクセルを予測することができます。

VQVAEと自己回帰モデル

VQVAE(Vector Quantized Variational AutoEncoder)では、自己回帰モデルを利用して、符号化された画像のパッチ(小さな画像の断片)を生成します。VQVAEにおける自己回帰モデルの利用は、パッチを個別にサンプリングする際に、学習データに存在しない組み合わせが生じる問題を緩和します。

Latent Codeの役割

VQVAEでは、Latent code(潜在コード)は離散表現を採用しています。この離散表現は、自己回帰モデルの学習を安定化させるのに役立ちます。連続表現では、データの最頻値を出力するように学習してしまう問題(posterior collapse)が発生することがありますが、VQVAEの離散表現を用いることで、この問題を回避し、自己回帰モデルを高次元の空間で適用することが可能になります。

GANとの関連

VQVAE自体はGAN(Generative Adversarial Networks)とは直接関連していませんが、VQVAEの後続の研究であるVQGANでは、GANを組み合わせることで、より高解像度でリアルな画像生成を実現しています。VQGANでは、GANの生成能力とVQVAEの離散表現の利点を組み合わせることで、画像生成の品質を向上させています。

深層生成モデルの概要について詳しく

これまでに多くの深層生成モデルが提案されてきました。特にGANとVAEによるアプローチは広く注目されています。高解像度画像生成においては、GANが黎明期から注目されていましたが、VAEに基づいたモデルも重要な役割を果たしています。

VAEとGANの比較

VAEはLatent codeをサンプリングし、復号モデルにより画像を生成します。GANと比較して、多様なデータ生成に有利ですが、画像がぼやけやすい傾向があります。

VQVAEの登場

VQVAEは、VAEベースのアプローチで、高解像度画像を生成する上で重要な役割を果たしています。Patchを離散的に符号化し、自己回帰モデルと組み合わせることで、多様で高解像度な画像生成が可能になります。

VQVAEの基本について再度説明

VQVAEは、オートエンコーダの一種で、特に高解像度の画像を生成するのに適した手法です。オートエンコーダがデータを圧縮してから元に戻すことを学ぶ方法であることは先ほど説明しましたが、VQVAEはこのプロセスに「ベクトル量子化」という特別なステップを加えます。

ベクトル量子化とは

ベクトル量子化は、データを圧縮する際に、連続的な値を一定の数の離散的な値に変換するプロセスです。これにより、データはより効率的に圧縮され、特に画像のような複雑なデータを扱う際に有効です。

VQVAEの特徴

VQVAEは、画像を小さな部分(パッチ)に分割し、それぞれのパッチを離散的に符号化します。これにより、画像の細かい部分まで詳細に捉えることができ、高解像度の画像生成に適しています。

Latent Codeの離散化とPatch符号化

VQVAEはLatent codeに離散表現を仮定し、Patchについての符号化、復号を行います。自己回帰モデルを用いてPatch集合をサンプリングし、高次元な空間での適用が可能になります。

VQVAE-2

VQVAE-2は、階層的なLatent codeの活用を加え、高解像度かつ多様な画像生成を実現しました。

Patch集合のサンプリング方法

VQVAEでは、自己回帰モデルに依存するPatch集合のサンプリングが重要です。近年は、このサンプリング方法に関する研究が注目されています。

VQGAN

VQGANは、Transformerを活用し、GANと組み合わせることで、高解像度な画像の復元を可能にしました。

VQDiffusion

VQDiffusionは、Diffusionモデルを活用し、Patch集合のサンプリングを行います。自己回帰モデルと比較して、速度と生成クオリティの良いトレードオフを達成しています。

まとめと今後の展望

VQVAEの登場により、VAEベースのアプローチでも高解像度な画像が生成可能になりました。今後は、生成速度の向上や、Diffusionモデルの実装の複雑さなどの課題に注目していきたいと思います。自己教師あり学習などの進展にも期待が寄せられています。

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