45歳からの外資転職ノート 第6話 アメリカ本社での経験

第6話 アメリカ本社での経験

外資系企業に入って初めて米国本社へ出張にいった。10日間の長い出張だ。その間、日本人との接触はまったくない。つらい話だが、これも外資系の勤めとあきらめた。出張初日に体験した驚きについて話したい。

私の入社した会社は医療系の研究者向けの製品を製造・販売している。本社には製造部門も併設されている。出張初日、緊張して会社にいくと、挨拶もそうそうに工場を見学することになった。製造部門のある別棟に連れて行かれ、製造現場を仕切る管理者と会った時の話だ。

そこには70歳くらいの老婆がちょこんと椅子に座っていたのだ。「千と千尋の神隠し」にでてくる老婆のような風貌で、日本でいえばどう見てもご隠居さんだ。心の中では唖然としながらも、彼女と握手をした。彼女は部門を統括するマネジャーなのだ。

アメリカでは年齢は関係ないということなのだが「本当に大丈夫か?」と思わせるような風貌である。日本では考えられない話だ。当然のことながら、彼女としばらく話をするうちに、彼女が優秀なマネジャーであるのを納得したのだが。

次に彼女の部下につれられて製造現場にいくことになった。そこで働いていた人がまたユニークだった。50歳を超えたくらいのおやじがモヒカン刈りのヘアースタイルをしていたり、テレビで見かける悪役プロレスラーのような風貌の人(もちろんいれずみ入り)もいた。

圧巻だったのは仕事を説明してくれたラインリーダーだ。40歳台の彼女は、まさに極めつけのヤンキー風貌だ(ある意味アメリカ人だからヤンキーそのものなのだが)。彼女は5センチくらいのショッキングピンクの付け爪をしていた。日本の工場だと、この格好ではまず入り口で入れてもらえない。しかしここではラインの責任者だ。もちろん説明の内容はしっかりしていたが、この容姿にはびっくりだ。

今までアメリカの製造業はもうほとんどないと考えていたが、そんなことはないようだ。医療や宇宙関係など、先進分野ではアメリカ本土にも工場があるのだ。いずれにしても、外資のホワイトカラーの世界しか知らなかった自分にとって、まったく別の世界だった。人を見かけで判断してはいけない。見た目や年齢差別がない、まさに“自由の国”の会社で働いていることを痛感した。


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