45歳はじめての転職 第8話 ある外資の人事担当者の話

第8話 ある外資の人事担当者の話

ある外資で面接することが決まり、面接者に会いにいった。相手は30歳後半のアメリカ人、但し日本語もぺらぺら。彼はもともとコンサルタントで、現在は契約社員としてその会社に勤めているそうだ。Fさんとしておく。

外資といっても様々だが、この会社はいわゆるIT業界の大手。IT業界はいわゆるドッグイヤーといわれる猛烈な製品サイクルで動いている。

Fさん「うちは1300人の社員がいるのだけれど、人事は10人。常に不足状態ですよ。やらなければならないことは山積です。営業の会社だから、営業がいばっていますね。人事は存在感が少なくて、これを乗り越えるのが課題です。例えば、営業はいつまでに何人採用してくれといったような話をもってきますが、現場の協力がなければ採用はできません。また、人事は誰が、何回、面接をすべきかというようなシステムがきちっとできていないんです。」

私「Fさんは、今まで色々な会社のコンサルティングをやってこられたのでしょう。この会社をどう思いますか?」

Fさん「コンサルティングの入る会社は課題が多いからですよ。いずれわかることですから正直にお話しますがやることはたくさんありますね。」

私「問題がわかっているのになぜ解決しないのですか?」

Fさん「人事担当が不足しているので、皆今やるべきことで手一杯なんですよ。なかなか制度の改革まで手がまわらないのです。」

Fさんは打ち合わせの時間に10分遅れてきて、会話中にも誰かに呼ばれ中座。45分のインタビュー後は次の会議に入っていった。Fさんは本当に仕事に追いまくられているように思えた。

一般に転職求人がある会社は何か問題があり、新しい人に今の状態を改善してもらいたいと思っている。だから課題が山積なのは構わないと思う。

しかしあまりにも忙しくて仕事の質までもが落ちてしまい、またそれをどうすることもできない状態というのはつらいものがある。IT業界などはまさに超多忙でそういう会社も多いようだ。もちろん会社は急激に成長する可能性を秘めている。大きな成功を収めれるかもしれない。だから30歳台で自分もがむしゃらに何かに取り組んでみたいと思う人にはよいかもしれない。自分がどのように働きたいかにかかってくる。

後日、私はヘッドハンターにこういった。

「面接者は本当に聡明で感じのよい方でした。でも、会社の話を聞いてじっくりと仕事ができないように感じましたので今回はお断りします。30歳台なら実績を作るのにがむしゃらに働くこともできますが、40歳も半ばになっていますから、腰をすえてきちっと結果をだせる会社で働きたいと思います。」

Fさんは本当に正直な人だった。彼には申し訳ないと思ったがこの会社は私には違うと思った。


45歳はじめての転職 プロローグ・目次 に戻る

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?