セカンドハーフ通信 第64話 佐久の鉄板焼き屋さん

佐久の鉄板焼き屋さん

軽井沢から車で30分ほどの佐久は昔からの宿場町があり、新幹線の駅もある中規模の地方都市だ。軽井沢にはない生活用品などを買いに時々訪れ、ある日小さな鉄板焼き屋さんを見つけた。

その店のご主人はまだ30歳代前半という感じだが、長く関西のホテルの厨房で勤められたということで繊細な鉄板焼きを出してくれる。一流店そのものの味で、失礼ながらちょっと場違いなくらい美味しい。

料理のレパートリーも幅広く、本日のおすすめでタンシチューや手の込んだ肉料理などに巡り合えることもある。

そんな彼が店の向かいにラーメン屋さんを開店した。彼は自分の味をもっと広めたいと思ったのだろう。確かに鉄板焼き店で仕入れた肉を使ってスープをとれば間違いなくうまいスープとなり、おいしいラーメンができる。

開店後、我が家は喜び勇んで食べに行った。実際期待通りのうまさだと思った。

彼のラーメンは清湯(ちんたん)といわれるスープのラーメンだ。お酒でいえば大吟醸のようなものだ。清湯は時間もコストもかかる。いわば肉のうまみを精製し凝縮したものだ。ただ澄み切ったシンプルな味わいは強烈な個性をアピールするわけではない。そのおいしさをお客側が理解するには時間がかかるだろう。

この味なら間違いなしと我が家では思っているが、今のところまだブレイクには至っていない。

街ではインパクトのある背脂ラーメンや鶏白湯スープのラーメンが人気のようだが、本当に腕もあって繊細な味付けの彼のラーメンはいずれ多くの人に支持されるだろう。

料理人としての志の高い彼のようなな人を微力ながら応援したい。

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