セカンドハーフ通信 第87話 姉の出世

姉の出世

私には5歳上の姉がいる。彼女は世に言うキャリアウーマンだ。今は65歳を過ぎているが、政令指定都市の要職を務め、今も現役で働いている。地方公務員の中では最も出世した部類の人だ。

姉はもともとエリートというわけではない。普通の短大を卒業して、市役所の市民課に配属された。そんな彼女がなぜそこまで出世したのだろうか?私の知っている姉は確かに気が利く人だが、ごく普通の人であった。

彼女はフットワークがよく、気配りもできる人なので、市民課で働くうちに市長の秘書に抜擢された。たぶん秘書をしている間に多くのお偉いさんとの関係を構築したのだろう。

市長が引退するころには、管理職として部門を統括するようになった。その後、一般の部門にでて、出世の階段を上って行った。ついには理事職までいって60歳を迎えたが、その後も関連組織の専務理事になったりと、いわゆる重要ポストを歴任している。

彼女にはあまり野心がない。会う度に、もういつ辞めてもいいといっている。そのことが逆に信頼を勝ち得ているのかもしれない。また、人当たりがよく、誰とでもやあやあと仲良くすることができる。

でもそれだけではそんなに偉くはなれない。私の知らない才能が開花したのだろう。保守的な組織のなかで女性が男性を追い越し、出世していくのは大変なことだ。彼女は才能の上に努力を重ね、実績を積んでいった。ねたみやひがみもあったようだ。他人の悪口は言わないが、我慢をしながら乗り切ってきたのだろう。

近年はだいぶ風格も出てきて私の知る姉とはギャップがある。仕事が人を作るのだなと思う。偉くなっても姉は姉であり、兄弟間では昔のままだ。

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