45歳からの外資転職ノート 第1話 会社のお金、自分のお金

第1話 会社のお金、自分のお金

外資系企業に入って驚いたことの1つにお金の使い方がある。

入社から2、3日経った時のこと、同じ部門の人たちが歓迎のランチ会を開いてくれ、皆で近くのホテルへ食事にいった。お開きになった後、精算をしてくれた部下の1人が私に近づいてきてこう言った。「これは職場の経費にしますので、後で承認をお願します。」

自分の歓迎会の承認を自分がおこなうのはまずいと思い、後で経理部長に承認してもらうこととした。それにしても、自分の歓迎会が会社の経費で行われることは初めての経験で、なんとも奇妙な感じがした。私の感覚では、歓迎会はゲストを除いて会費制にすることが普通だと思っていた。会社の経費でということになると「仕事の一環」のようで、ありがたみを感じることができない。

またこんなこともあった。アメリカ本社から出張で役員が日本にきたので、職場の関係者と食事会をすることになった。部下にアレンジを頼むと高級ステーキハウスを予約したという。「内部の人には贅沢すぎないかなあ」というとすぐさま「いつもここでやっていますよ」と返ってきた。直前だったこともあり、店を変更することもできず食べにいったが、私の印象では社内の飲み会には豪華すぎる店だった。

本社の役員とのコミュニケーションが大切だということは理解できるものの、私の感覚としてはあまりに贅沢だったと気になって経理部門に相談にいくと「問題ありませんよ。年間のバジェットに則していれば個々の食事の上限までコントロールしませんよ」といわれる。このようなお金に関する感覚について、私にはちょっと違うように思えたし、社内で豪華な接待を行う感覚も理解できなかった。

一方でものすごくお金にうるさいところもある。人件費管理に対する考え方は、日本の会社とは比べ物にならない。派遣社員を雇うのでも社長決裁が必要なのだ。特に業績が厳しい時期だと、なんとアメリカ本社の社長にまでお伺いをたてるという。

これとは逆に、海外出張時の飛行機のクラスは、職位と関係なく、7時間以上はビジネスクラスでよいというのも面白い考え方だ。一般従業員からトップまで扱いが同じなのだ。日本では、部長以上はビジネスクラスとか職位によって扱いが異なるのが通例だ。ただし、外資系企業ではビジネス状況が思わしくないと、海外出張は一律エコノミークラスになってしまうこともある。

会社のお金と自分のお金をどう切り分けるか、またその区分や判断基準をどこに置くべきか、これは企業文化の問題でもあり、簡単に良い悪いは言えないが、根底には外資はロジック重視、日本企業は風習や社会的コモンセンス重視になっているように思える。


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