45歳からの外資転職ノート 第2話 ホスピタリティ

第2話 ホスピタリティ

同僚の欧米人とのやりとりの中で、ホスピタリティという言葉がわりと頻繁にでてきた。ホスピタリティとは何か。辞書によると以下のように書いてあった。

手厚いもてなし、歓待{かんたい}、もてなしの心、温かいもてなし、親切{しんせつ}なもてなし、厚遇{こうぐう}

外資の世界において、ホスピタリティは意外と重要だ。我々日本人は、自分たちをとても思いやりのある民族だと思っており、おもてなし文化という言葉もあるが、日本人以上に欧米人はホスピタリティを重視する人が多いように感じる。

彼らと付き合う時は、どのようにホスピタリティを発揮するかを強く意識しなくてはいけない。必ずしもお金をかけるということがホスピタリティにはつながらない。「あなただけのために」という気持ちが大事であり、その気持ちが相手にきちんと伝わらなければならない。

私がアメリカへ初めて出張にいった時、本社ロビーには「Welcome Kenji」とプレートが掲げてあってびっくりした。社内の人間に対しても、こんな心遣いがある。また、誕生日には上司からバースデイカードが届いて、皆でケーキでお祝いするということもよくみかける光景だ。

また、欧米人は知り合うとすぐに「Hi, Kenji」などとファーストネームで呼び合うようになるが、会話の中でも相手の名前を織り込む。「Good Morning」ではなく、「Good Morning,Kenji」なのだ。そんな時、こちらもそのホスピタリティに応えなくてはならないが、とっさに相手のファーストネームがでるようになるにはかなり訓練が必要だ。

会えば必ず「How are you doing, Kenji?」と聞かれる。日本人ならめんどうくさいと思うかもしれないが、きちんとファーストネームを付けて返事をするほうが親密さを表現できる。また、相手に何かをしてもらえば、必ず「Thank you」という言葉がでるし、「ここがよかった」「これはすばらしいね」などという心のこもったコメントを付け加えられる。

日本のように、相手の目を見て黙って微笑むだけではコミュニケーションとしては成り立たない。わかっていても、慣れないうちはなかなかうまくふるまうことができない。実践あるのみだが、いかに相手に伝わりやすい表現でコミュニケーションするかということが、色々な国の人の混ざったグローバル社会ではとても重要だと思う。


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