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サビカスの著書を初めて読む方へ

私がキャリア理論を学ぶ多くの人におすすめしたい本に「サビカス キャリア・カウンセリング理論」があります。大学に入学してから読んだ本の中で一番のお気に入りで、今も繰り返し読んでいます。この本を多くの人に紹介したいという思いで、毎週少しずつ読み進めていく読書会も開催していました。

しかし、ひとつ問題なのは「文章が難しい」という声が多いことです。確かに、特に最初のあたりの章は表現が難しいと感じます。せっかく良い本なのに、最初の数十ページを読んで断念されてしまってはもったいない!そう思ったので、ここでサビカスの著書をこれから読み進めていく人に向けて、読み方のガイドとなる文章を残しておこうと思います。

1.最初の章が難しい

サビカスの原著がとっつきにくい理由は、やはり実践的な内容に入る前(第1章~第4章)に抽象的な概念の説明が続いていることにあると思います。どうしても読みたくないという方は、先に実践的な内容が書いてある第4章から読み進めることもできますが、私はできれば最初から順に読んだ方がよいのではないかと思います。

なぜかと言うと、最初の章に書いてある抽象的な概念はサビカスが提唱するカウンセリングモデルの哲学や原理が詰め込まれており、実践的な内容を理解するときにそれらの用語をなんとなくでも知っていたほうがいいと考えるからです。

例えば、13ページにある以下の文章は、カウンセリングプロセス(本書の内容)全体の要約になっています。

カウンセラーは、キャリア・カウンセリングを行う時、キャリア構成理論を適用し、(a)小さなストーリーを通じてキャリアを構成(construct)し、(b)小さなストーリーを大きなストーリーへと脱構成(deconstruct)し、さらに再構成(reconstruct)し、(c)そのストーリーの中で次のエピソードを共に構成(coconstruct)する。

他にも、バイオグラフィシティとアイデンティティ・ワークという作業を通してアイデンティティ資本を生み出すことが重要であるという主張(22ページ)。断絶について語るストーリーを作ることが、アイデンティティ・ワークの本質であるという記述(37ページ)。さらに、キャリア・テーマという人生で最重要と言っても過言ではない概念の説明(39-44ページ)。キャラクター・アークについての説明(45ページ)。人生を追求として理解すると言うナラティブ・パラダイムの説明(45ページ)などは重要です。

2.書籍全体のおおまかな構成

最初の抽象的な説明のパートを抜けたら、本は大きく3部構成になっています。

① 71ページから93ページまで(主に第4章)は、1回目のカウンセリングに相当します。クライエントにインタビューをすることで、人生の物語を引き出す方法が説明されています。

② 94ページから159ページ(第5章~第7章)は、本書でもっとも分量があるパートです。1回目のカウンセリングで引き出した内容を、どのように解釈すればいいのかが書いてあります。カウンセラーは1回目のカウンセリングと2回目のカウンセリングの間にこのようなことを考えます。

③ 160ページから終わりまで(第8章と第9章)は、2回目のカウンセリングに相当します。ライフ・ポートレートという、クライエントの人生物語を文章にしたものを作成して、それをもとにこれから先どのような行動をとっていけばいいのかを考えるパートです。

3.なかなかイメージがわかない方へ

読んでいても、なかなかイメージがわかないという方が、先に193ページに載っている、カウンセリングの実例を見てみるといいと思います。サビカス博士とキャリア構成カウンセリングの魅力に惹かれ、ほれぼれしてしまうかもしれません(笑)。

また、205ページの用語集も便利に活用できるでしょう。

4.私が最もすきなパート

この本の中で、私が最も好きな部分をお伝えします。それは、いちばん最後(200ページ)の文章です。

カウンセリングの最後の瞬間、カウンセラーはクライエントに、自分自身について最も真実であると心を打つストーリーを生きてチャンスをつかみ取るようにと励まし、さよならを言う。カウンセラーは、そのとき、クライエント自身の言葉が彼らの人生を前進させると確信して、クライエントのお気に入りの格言を何度も繰り返しつぶやく。

なんて素敵な(面白い)表現なのでしょう。最初にこれを読んだとき、「クライエントのお気に入りの格言を何度も繰り返しつぶやく」という詩的な表現に思わず笑ってしまいました。サビカス博士のお人柄と、翻訳者の方の努力が垣間見えます。

5.もっと学びたいかたに

サビカス博士自身の著書で、日本語で読めるものは、今回紹介した本の他に「サビカス ライフデザイン・カウンセリング・マニュアル」(遠見書房)があります。この本には、ライフポートレートを作成するための穴埋め式のテンプレートなど、サビカスのカウンセリングを実施する上でのヒントが載っているので、今回の本を読んで次にぜひ読んでほしい本です。

<今回紹介した本>

<次に読むおすすめ本>


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