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名付け

人の名前を考えるのが好きです。
というとヤバい奴のようですが、もちろん湯婆婆のように誰かの名前を勝手に改変してしまうとかいう鬼畜の所業をしたいわけではありません。
あくまで、名もなき人間の名前を考えるのが好きなのです。
名もなき人間とは、架空の人間、つまり物語の世界に息づく人のこと。
そして、もしかすると遠い将来に僕が授かるかもしれない子供のこと。
(なんか先週から子供の話ばかりしてて、気持ち悪いですね)


映画のプロットを考え始めるとき、序盤に立ちはだかるのが
登場人物の名前をどうするか、という問題です。
彼ら、彼女らに、仮の名前を与えて書き進めることも当然可能なのですが、
しっくりくる名前を与えることができた瞬間に、脚本を書くモチベーションは大きく上がります。
登場人物が、その名前で確かにその世界で生きている実感を得られるか、これは物語を紡ぐ上では非常に重要なポイントです。

名前を考えるにあたって、僕がよくやるのはFacebookを覗くことです。
Facebookに掲載されている無数の名前から、命を与えたい人物に、相応しい名前のインスピレーションを頂きます。

その人物が、息をし始める名前を与えられた瞬間の喜びは
この上ないものです。


さて、前段が長くなりましたが
とある漫画の主人公の名前が、僕はとても大好きです。
漫画のタイトルは「違国日記」。

あらすじ
中学3年生の冬、両親を突然の交通事故で失った主人公。葬儀の場で、親戚中をたらい回しにされそうになっていた彼女を引き取ったのは、叔母だった。
少女小説家を職業とし、マンションに一人で暮らす叔母のもとに身を寄せることになった主人公は、翌春に高校に入学。叔母との共同生活の中で、思春期を過ごすことになる…


両親の死とどう向き合えば良いのか、心の整理がつかない主人公。
そんな中、死んだ母の遺品の中に、日記があることを知ります。
恐る恐る開いたその日記に、主人公の名前の由来が書かれていました。

あなたの名前は
必ず来る、新しくて美しいもの
という意味をこめて、
一生けんめい考えました。
あなたが誰からも愛されるように
心から願っていますし
そのためにきっと
何でもしてやろうと思います

この漫画の主人公の名前は「朝」。

必ずくる、新しくて美しいもの。



文:ナオキ

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