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#10 ストリーミング時代のカタログ・ビジネスとは?

#10 ストリーミング時代のカタログ・ビジネスとは?

ストリーミング時代のカタログ・ビジネス
1. カタログ・ビジネスとは?
2. ディープカタログの傾向
3. 新人アーティストのカタログの傾向



1. カタログ・ビジネスとは?

アーティストやソングライターが自分の作曲した曲に対する権利を、通常「パブリッシング」または「カタログ」と呼びます。

ストリーミングはカタログ・ビジネスをこれまで以上に魅力的なものにしました – カタログは、ここ1年で市場の約65%だったのが、昨年は約70%まで伸びています。皆さんは、成長しているカタログは、ビートルズのような過去のヒットソングかテイラースウィフトのようなメジャーアーティストのヒットソング、どちらだと思いますか?ビートルズのようなアーティストの楽曲も聞かれ続けるのですが、現在は、ドレイク、テイラー・スウィフトのような今の音楽業界をリードするようなメジャーアーティストのカタログ・ビジネスの方が伸びているのです。その成長の背景や、今後どのように成長していくかを解説していきますね。

  2.ディープカタログの傾向

ビートルズなど、数十年前に名を馳せたアーティストがストリーミング市場ではどのような傾向にあるのでしょうか?皆さんは、どう思いますか?

ビートルズに限らず、50年代から90年代までにリリースされた古い音楽が、かつて最もホットな新作を聴くというトップ40的な考え方で定義された業界で、地位を確立しつつあるということです。

数字を見てみると、2021年にリリースされた新曲のストリームが約20%減少する一方で、ディープカタログのストリームは約30%急増したそうです。

少なくともストリーミングの領域では、古い音楽が新作を成長率で上回ったのは初めてなのです。実際、古いアーティストが投資家に好まれるようになり、ディープカタログの売買が盛んになった理由の一つでもあると思います。実際、ボブ・ディラン、ブルース・スプリングスティーン、ニール・ヤング、スティービー・ニックスといった伝説のアーティストたちは、1億ドル以上の金額で様々な企業や会社に自分のカタログを売却している。

アーティストが亡くなった後でも、話題を作ることで伸びるのが、カタログ・ビジネス。新曲や最近のメジャーアーティストの「カタログ」がストリーミング・ビジネスを変革していますが、だからといって過去のヒットソングが聞かれていないというわけではありません。実は多くの過去のヒットソングはこの5年間でさらに人気が高まっています。

Spotifyでは毎日6万曲がプレイリストに追加されています。一見、現代音楽の知名度が上がりそうなものだが、逆効果になる可能性もあると言う。新人アーティストが、このような競争の激しい市場で聴かれるためには、苦しい戦いに直面します。

若いリスナーが若いアーティストのファンであるというわけではありません。どちらかといえば、若いリスナーの間では、前の世代の音楽への関心が高まっていると、業界の専門家は指摘する。実際、TikTokを中心に昔のヒットソングがバズったりするケースもよく聞きますよね!

なぜ、昔の音楽が今の市場でこれほどまでに影響力を持つのか、別の要素もありそうだ。それは、「前の時代のアーティストの方が、今のアーティストよりも優れているのか」という点である。もしくは、最近ではA Iやデータを分析し、ヒットソングの傾向を分析し、似たり寄ったりの楽曲をリリースすることで、ヒットを求めやすくなっているという背景もあるかもしれません。

Beatles
Number of tracks in the top 5,000, 2016: 23
Number of tracks in the top 5,000, 2021: 13
Top track, “Here Comes the Sun,” rank in 2016: 917
Top track, “Here Comes the Sun,” rank in 2021: 400

Michael Jackson
Number of tracks in the top 5,000, 2016: 13
Number of tracks in the top 5,000, 2021: 11
Top track, “Billie Jean,” rank in 2016: 745
Top track, “Billie Jean,” rank in 2021: 435

3. モダンなアーティストのカタログ
ストリーミングが牽引している明らかな傾向として、以前は60年代や70年代のアーティストの「ディープカタログ」ではなく、新しいアーティストの古いアルバム「シャローカタログ」が成長を牽引しています。今世紀にリリースされた音楽が、2021 年の米国のオンデマンド オーディオ ストリーミングの約 90% を占めており、ドレイクが 1980 年以前にリリースされたすべての楽曲よりも多い再生回数を生み出したことを考えると、この変化がいかに深刻かが分かります。

カタログビジネスがどのように変化しているかをより理解するために、ビルボードは、この一年で米国のオンデマンドストリームで約1兆再生された全ての楽曲をリリース日で10年おきにカテゴライズして、分析しました。それによると、2020年と2021年にリリースされた楽曲は、全体の約40%にあたる約4000億再生回数を生み出していることがわかります。また、40%にあたる約4000億再生回数は、2010年から2019年末までの過去10年間のものなので、つまり過去12年間にリリースされた楽曲は、全体の約80%にあたる約8000億再生という圧倒的な割合を占めていることになる。

そして残りの20%のうち、10%が2000-2009年までにリリースされた楽曲なので、そうストリーミング数の90%が今世紀にリリースされた楽曲が占めていることになります。

その中には、古いアーティストがリリースした音楽もありますが、カタログがいかに若いアーティストのものとなっているかを示しています。

ドレイクは、約80億再生回数、つまり全体の0.8%を生み出しているのですが、やばいですよね。1アーティストが、全体のオンディマンドストリーミングの0.8%シェアを持っているって、時代をリードしていることがわかりますよね。

■まとめ
日々スポティファイでは、6万曲以上の楽曲がリリースされる中、マーケティングや楽曲制作に今まで以上に力を入れなくてはなりません。若いオーディエンスの獲得に繋がるようにストリーミングに最適なレパートリーを最大限に活かすことが重要です。もし、自分達が抱えるアーティストが、20年も30年も音楽活動を続けているメジャーアーティストであれば、今もアナログ派だったり過去の音楽活動のままで続けたいというマインドがあるかもしれません。そして、ストリーミングに力を入れなくても、ファンクラブやライブで十分な稼ぎがあるため、危機感がないかもしれません。

ストリーミングを開始しつつも、いまだにツアーでC Dを売っていたり、高い年齢層との付き合い方も維持しながら、若い層にリーチすることで、うまく具合のバランスをみつけながら過去のヒットソングをストリーミングで再生され続ける仕組みを作らなければなりません。

Spotifyなどのプレイリストで見ると、90年代のプレイリスト、平成ヒットソングなど、若い層でも過去のヒットソングを発見しやすいようなタッチポイントが多くありますので、そういったプレイリストにも入れてもらえるようなアプローチは必要ですよね。

また、90年代や2000年初期に一発屋と言われていたアーティストもいますが、そういったアーティストも、ストリーミングでは今も大人気で聴かれ続けていることもある。メジャーレーベルとしても、そういったヒット曲にも注目して、ストリーミングでの人気を上げることが重要です。どこでどうやってユーザーにこれらの曲を思い出させるか。ファン層や持ち曲の人気度に応じて、楽曲ごと、アーティストごとに戦略を立てていくことが重要。

若い層は1日に何十曲も流し聞をしてくれるのに対し、親世代は過去の曲を生涯のベストソングとし、1年に数回聞いたり、あとはカラオケで毎回歌うことで満足するというように、音楽との向き合い方が年齢層や世代、ジャンルによって大きく違っているため、それぞれに違ったマーケティングが必要です。

今までのようにアナログやバイナルを作って打ったり、逆にストリーミングに移行するだけではうまくいくとは限りません。ユーザーの反応を予測して、どういう流れで商品をリリースするべきか、クリエイティブな宣伝戦略や今の消費者の動向を見てアプローチすることが大事です。

アーティストの音楽性やファンの傾向から、どのようなカタログ・ビジネスを展開するべきか、戦略的に考えていけると良いかと思います。

今日も、最後までご視聴ありがとうございました。
Music Business Japan, 國井大河でした!


國井大河です!よろしくお願い致します! さらに、活動を大きく進めてまいります!