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沢尻エリカ主演舞台『欲望という名の電車』を観た

★ストーリー
行き場を失った女(沢尻エリカ)が、場末のボロ屋で暮らす妹夫婦の元に身を寄せるが、義弟との折り合いが悪く…

★女優
沢尻エリカ38歳。
僕は芸能人が問題を起こした際に、なぜ、テレビ(ラジオや映画)から復帰するのか疑問があった。芸は〝板〟(=舞台)から始まるのが基本なのだから、そこから再出発をすればいい。そこから這い上がってきてこそ、〝リスタート〟を目指す人々へのメッセージにもなる。すごろくに例えれば、〝3コマ下がる〟ではなくて、〝振り出しに戻る〟ことこそが、業界の寛容さではないか。だって一般社会なら、一発アウト、すごろくさえも取り上げられるのだから。
特にお笑いの場合は、M-1王者でさえもが、以前ほど笑えなくなる。

そういう意味では、沢尻エリカの復帰は最高だった。
彼女は初舞台(初主演)になるらしいが、映像から出てきた人であり、板を知らない。だから、振り出しはドラマや映画のはずだ。もちろん、復帰オファーは山ほど届いてたに違いない。そのなかから舞台を選んだ感性は素晴らしい。
カーテンコールで万雷の拍手に、何度も頭を下げ、笑顔でいつまでも手を振る沢尻エリカは、ファンへの感謝を思い、自分の居場所を確保出来た安堵もあったはずだ。
何があっても〝戻る〟場所があるということは、人間の心にゆとりを生む。
ちなみに僕にとっては〝講談〟がそれである。

とはいえ沢尻エリカの映画や芝居を、そうたくさん見た記憶はないが、
芝居は初舞台とは思えない声量、滑舌、表現で、これまでの沢尻エリカという看板を遥かに上回る力を証明した。
特にラストの場面の美しさは息を呑んだ。

沢尻エリカのこれまでの素行だが、今回生沢尻を観て、感じたことは、基本的に〝良い人〟であり、〝悩み〟ではなかったか。
良い人というのは、周りの環境に乗せられやすい。だから結構、勘違いをしてしまったり、逃避するために、あらぬ行動をとってしまうことがある。良い人というのは、悪に染まりやすい。
そして〝悩み〟。沢尻エリカは美しい。沢尻エリカは可愛い。沢尻エリカは神秘的。全てを兼ね備えている。ただ、それは声にも当てはまるかと言えば、そうとも言えない。とは言っても、声ももちろん可愛らしい。少し幼げな響きにさえ感じた。だから、3時間出ずっぱり、喋りっぱなしのエキセントリックな演技が続いたが、観ている側に不快感を与えなかった。それは素晴らしいことだが、幼げというのは、同世代の女優と比較したとき、背伸びをしてしまう要因になったりしないだろうか。
悪ぶっちゃう要因となっても不思議ではない。
沢尻エリカのこれまでの黒歴史は、そうした人としての本質が影響したのだろう。
今後は〝戻る場所〟(舞台)を見つけたのだから、心にゆとりをもって芝居に取り組んでほしい。
最高峰の女優となる資質の大きな女優だ。
また舞台は観たい。

★長澤まさみ研究
まずは沢尻エリカに感謝したい。
僕は生沢尻エリカを観て、益々、長澤まさみが好きになった。
今回、カーテンコールが始まっても寂しさを感じることはなかったり
長澤まさみの芝居のときは、幕が開いた瞬間から寂しくなる。1分でも1秒でも同じ時を共有したいと思うからだ。

長澤まさみと沢尻エリカ。
〝絵〟になるかどうかの部分では、互角かもしれないし、シチュエーションによっては沢尻エリカが上かもしれない。いずれにしても、長澤まさみ級の女優であることは間違いない。
でも、光の強さ、スター性は断然、長澤まさみだった。沢尻エリカは初舞台だけに、今後、益々磨きをかけてくるだろうし、もちろん、相当に強く光っているが、でも、光というのは天賦の才であって、磨いたからといって、おいそれ簡単に増すものではない。
『メタルマクベス』で生長澤まさみを初めて観たときの衝撃の比ではなかった。
ふたりを比較すると、年齢は沢尻エリカが一つ上。
デビューも沢尻エリカは1997年〝リボン〟のモデルとしてキャリアをスタートさせ、長澤まさみは2000年と少し遅れる。だがこちらは〝東宝シンデレラグランプリ〟とケタ違いのスタートだ。映画は沢尻2004年『問題のない私たち』が初出演だが、その年、長澤まさみは言わずと知れた『世界の中心で、愛をさけぶ』で、アカデミー賞最優秀助演女優賞を史上最年少で受賞した。負けじと沢尻も翌05年『パッチギ!』でアカデミー賞新人俳優賞を得ている。
とはいえ、このデビューから数年のキャリアこそが、光の違いだ。もちろん、光はかげることはある。だが、長澤まさみの光はかげることはなく放たれ続けている。
そして、演技においても、清く正しく経験を重ねてきた長澤まさみは、感性を磨き、技を習得して、今や引き出しの豊富さは、国内外に関係なくナンバー1の存在だ。
沢尻エリカとて、簡単にその域に追いつくことは出来ないだろう。

でも、生沢尻エリカを観て、僕は長澤まさみを欲した。生宮沢りえと生天海祐希の芝居のあとよりも、その衝動は強かったように思う。
ふたりが同世代ということもあるだろうけど、帰宅後、コンフィデンスJPを観て、心は落ち着いた。そして改めて、長澤まさみフリムンで良かったと思えた。


★パンフレット
芝居自体の空気より、軽妙なパンフレットで読みやすい。写真も多くて、沢尻エリカファンには垂涎の一冊になる。だって、この構成で、長澤まさみの芝居パンフレットがほしいもん。

★まとめ
今回は、チケット発売後に「沢尻エリカの芝居っていつやったかなぁ」と気づき、一般販売は完売してたんやけど、立ち見席が売り出される好運を得た。
ま、今日はその立ち見の反動がモロに出た。尻から膝、足首足の平と痛いどころだらけやけど、それでも好運やったと思える。
正直、名作らしいけど、あまり意味のない内容に思えた。いや、面白くないわけではない。第一幕110分、第二幕80分の長編の立ち見やったけど、最後まで見切るに値するし、その時間ほどは長く感じさせなかった。だから面白かったのだと思うけど、感動や興奮することはなかった。

それと今回から、オペラグラス(双眼鏡)を持って行った。

4月の宮沢りえ観劇用に買ったんやけど、沢尻エリカで初使用。
オペラグラス、芝居観賞には必需品やね。
最後尾の立ち見席から出てでも、沢尻エリカの細かな表情まで、はっきりと見えた。
でも、少し露出の大きな衣装のときは、ちょっと見づらいんよなぁ。

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