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神社から見えてくる観光の可能性〜神社のブランドは参拝客がつくる〜

観光においての「神社」には可能性がまだまだあるから面白い。
どの程度の可能性を秘めているかというと、「人間の脳は10%程度しか使われていない→90%の可能性を秘めている」と同じくらいだと思う。

現在人気な神社はなぜ人気なのか?
この神社ブーム、御朱印ブームにうまく乗り、話題になっている神社がなぜブーストできたのか?
逆になぜ人が訪れないのか?

これまで多くの神社を参拝してきた中で「観光」という視点で考えると、見えてくるものが多い。


「沖縄はいいですよね。綺麗な海があるから。」と言う他県の観光関係の方々、待ってください。僕らの県には神社があります。

沖縄には20社程度しか神社はありません。僕らの県には1000社ぐらいか、それ以上あります。

「この神社をどう活かすか」そう地域は考えるでしょう。
そういった地域のかたに読んで欲しいです。絶対ヒントになるので。


地元の観光関係のかた自身が、観光客におすすめする神社のことをあまりよく知らない。

こういうことはよくあります。
これまで何度かその地域のかたに神社を案内していただいたり、ガイドツアーに参加したりすると、ほぼほぼ感じることが、

お勧めしてくれるかた自身があまりこの神社のことをよく知らない」ということです。

神社に参拝するときは、当日までに参拝予定の神社のことを調べるようにしているのですが、その一夜漬けで予習した情報のほうが詳しいことが多いです。

ここで言いたいのは「勉強していない」「知識がない」ということではありません。「観光」という視点で見た時に神社に訪れる人へのフックとなる情報は何か?

神社好きはもちろん、そうでない人がその神社を魅力に感じる情報は何なのか?というところまで落とし込めていない。というところです。

僕のほうで運営している「sanpai.」では発進する神社ごとに、表紙に二行程度のコピーを付けるようにしています。

そのコピーをつけるために以下の工程を踏みます。

①まずはその神社のことを調べる。

神社の創建の由来、お祀りしている神様やご利益、授与品や御朱印、御神事(神社で行われるお祭り)などを調べ、また他のブロガーさんやメディアがどのように取り上げているか調べます。

地方の神社を調べると、メディアやブログなどには取り上げられておらず、「神社庁」さんが掲載している情報しかないという神社もあります。

例えば、神社に祀られている神様を調べるときには「古事記」などはもちろん、こういった神様辞典にような本もとてもまとまっていてわかりやすいです。

めちゃくちゃ詳しく書いているというわけではなりませんが、神様ごとに一柱4ページほどにまとまっていてわかりやすい上によく耳にしたり神社に祀られることの多い神様を網羅しているのでおすすめです。

他にもイラストでキャラクター化してわかりやすく描かれている本も多くでいているので、気になる人は書店で探してみてください。


②情報を整理する。

神社によっては祀られている神様が複数の場合もありますが、
そうなってくると「この神社は**のご利益をいただける」と絞り込めないほど多くのご利益をいただける神社とうたうこともできます。

ただそれではユーザーには伝わりづらいので、何を主軸に伝えるか情報を整理します。もちろん複数の神様が祀られていたとしても「主祭神」という、その神社のメインのような神様がいる神社も多いので、それを前提に考えていきます。

ただし、神社の境内にいくつもの神様が祀られている神社(摂社や末社)があり、そちらのほうが特色がある。ユーザーのニーズが高い。というのであればそちらを紹介する時もあります。

例をあげるとこういう神社です。

こちらは東京の「高円寺氷川神社」の境内にある「気象神社」です。
日本唯一の天気を司る神社であること、そして映画「天気の子」の作中に気象神社が描かれていることで話題となっている神社です。


またこのような神社もあります。

こちらは名古屋にある「山田天満宮」の境内にある「金神社(こがねじんじゃ)」です。

山田天満宮も合格祈願で人気の神社ではありますが、東海地方でも随一の金運神社であること、宝くじ祈願で実際に当選しているかたも多いこと、ネズミの絵柄の「宝袋」が授与品としていただけること。などを踏まえて検討した結果、山田天満宮よりも金神社を前に出しました。

情報を整理した上でどの情報を表に前に出すかによって、話題性を生み出すか、実際に訪れてもらえるかなど大きく影響してくると思います。


③近隣の神社と比較する。

例えばこんな神社があるとします。
「願いをひとつだけ叶えてくれるパワースポットとして有名な神社」
「付けていると災いを除け、開運に導くといわれている指輪型のお守りがいただける話題の神社」

これらの神社が半径100メートル以内にある場合、どのように差別化をするか。そして差別化をしないという選択肢もあります。

例えば「付けていると災いを除け、開運に導くといわれている指輪型のお守りがいただける話題の神社」でいただける指輪型のお守りが人気すぎて授与を中止してしまった場合。(実際そういう神社があります。)

参拝に訪れたかたが残念そうに歩く帰路にもニーズはありますよね。

縁結び神社のみを回るコースなどもいろんな地域で行われているので、あえて他の神社との導線を考えて、発信内容を固めることもあります。

①情報収集→②情報整理→③他社比較を行うと、その神社のある程度の知識はつくので、このインスタメディア運用は自分にとってはアウトプット以上にインプットのほうが収穫は大きいかもしれません。


神社のブランドは参拝客がつくる

神社を回っているなかで、気づいたことは、その神社のブランドイメージを定着させているのは参拝客(ユーザー)側だということです。

多くのユーザーがSNSでの発信を行う昨今、「観光」でも観光スポットのブランディングはユーザーが行うといわれるようになりましたが、神社も同様です。

面白い事例を紹介します。

愛知県犬山市にある「三光稲荷神社」。
お稲荷さんというと、五穀豊穣や商売繁盛の神様「宇迦之御魂大神」が祀られています。

でもこちらのお稲荷さんは最近インスタグラムですごく人気となっています。

ハッシュタグで上がっている写真の多くは「縁」と書いてあるハートの絵馬の前で撮影された写真ですね。

実際にこちらの神社へ参拝した時に感じたのは、参拝客の属性が他の神社とはかなり違っていることです。

神社が好きで参拝している人が2~3割、このハートの絵馬を目当てにきている若い女の子たち6~7割といったところでしょうか(感覚ですみません。)

インスタ映えをうまく活用して集客をしている。と言ったらそうなのでしょうが、ここまで世に広めたのはハッシュタグで投稿した参拝客なのです。

五穀繁盛や商売繁盛のご利益があるといわれるお稲荷さんに「縁結び」目当てにくるかたが多いというのは一見不思議ですが、

こちらの神社の境内社の「姫亀神社」のご祭神が大宮女大神(別称:天鈿女命)という芸能や縁結びなどで有名な神様なのです。

先ほども書いた、摂社や末社のほうをユーザー自身がピックアップしてSNSで発信したわけです。

もちろん、この「三光稲荷神社」は東海地域でも珍しい銭洗いの池などもあるのですが、ユーザーにとっては「縁むすび」ブランドのほうが強いわけですね。


神社ブームとはいえ御朱印や授与品にもストーリーが必要

可愛い御朱印やお守りが話題で人気になっている神社も沢山ありますが、そこを同じように狙っていくのにはリスクが多いです。

ひとつは神社の由来やご祭神、ご利益などとはズレた授与品などを作ってしまうと、薄く感じてします。

歴史ある神社なのにユーザーが違和感を抱くブランド化を行ってしまうと、客足を減らしてしまうか、あくまで授与品目当て、御朱印目当ての参拝客に偏ってしまい、長期的に考えるとリスクは大きいです。

こういう話をするのはあまりよくないですが、すごく人気の神社さんの宮司さんや巫女さんが「あなたも御朱印ブームにのっているかたでしょ」と思っているのではないかというぐらい雑な対応をされる時もあります。

確かに神社さん側の気持ちもわかります。
神社のことも知ろうともしなければどんな神様が祀られているかもわからない、さらには授与品や御朱印を転売する人もいる・・・。

そんな人たちが存在するのを知ってしまったら純粋に参拝客に「ようお参りでした」と言えなくなってしまうのかな・・・。

そう思いますが、純粋に神社が好きで参拝しにきている人は悲しいです。


神社にお祀りする神様と向き合う

ラーメン屋さんで例えると、あっさりの塩ラーメンがうける時期もあれば、濃厚な魚介とんこつラーメンがうける時もあるので、ラーメン屋さんであれば極論、塩ラーメンがウケなければ、「塩ラーメンを美味しくする」「魚介とんこつラーメンの新メニューを作る」ということはできます。

ただ神社は歴史を書き換えたり、祀っている神様を簡単には変えたり、新しくスカウトしたりなんてできません。

ただどの神社にも歴史があり、神様にはストーリーがあり、その歴史やストーリーを落とし込めばそれが魅力としてユーザーには伝わると思うんです。

「古事記」が壮大な神話ストーリーものの小説だとして、脇役みたいな登場のしかたをする神様も多いですが、でも小説の脇役と、古事記に脇役のように登場する神様の大きな違いは、ひとつひとつの神様に古事記や日本書紀だけでは語りきれないしっかりとしたストーリーがあるということです。


天照大神の長男「天之忍穂耳命」という神様の別称「正勝吾勝勝速日天之忍穂耳命(マサカツアカツカチハヤヒアメノオシホミミ)」という名前には「まさに勝った、私は勝った。朝日が昇るかのように、鮮やかに、速やかに勝利を得た」という意味が込められています。

最速、最強の勝利の神様っぽい名前でかっこいいですね。

写真は「天之忍穂耳命」をお祀りする滋賀県の「太郎坊宮(阿賀神社)」。
鳥居の下から見える山に鎮座する神社です。

自然信仰が今も伝わるスケールの大きな神社です。

ご祭神の「勝利の神」にふさわしい勝守がいただけます。ちなみにこちらは吉田沙織さんも大会の時に海外に持っていったお守りみたいですね。

まだ圧倒的に全国で認知されている神社ではないかもしれませんが、確実にファンを増やしている神社だと感じました。


名前のとおりファンが神社をブランド化(聖地化)した神社「大野神社」と「竈門神社」

滋賀県にある「大野神社」と福岡県にある「竈門神社」。
この二つの神社の名前で気づくかたもいるかもしれませんが、

「大野神社」は嵐の大野くん、「竈門神社」は鬼滅の刃の主人公の竈門炭治郎です。

嵐ファンの聖地となった「大野神社」でいただける「豆だるま五色セット」は嵐のメンバーになぞらえて五色の豆だるまになっています。
元々は嵐ファンのかたが大野神社に五色の豆だるまを奉納したことから、訪れるファンからの問合せが増え、授与品となったそうです。

竈門神社は授与所がすごくお洒落で、可愛いお守りなども沢山置いてあるので元々人気の神社ですが、去年ぐらいから「鬼滅の刃」ファンの聖地にもなっているそうです。


『翔んで埼玉』で何もないと言われる埼玉は関東神社オールスターなエリアだ。

映画「翔んで埼玉」を見たのですが、違和感を覚え、そして気づいたことがあります。違和感と言っているけど、映画自体はとても面白かったです。

ただ、作中で「埼玉には何もない」という表現が多かったこと。
えっ?埼玉といったら関東最強のパワースポットといわれる「三峯神社」を筆頭に、アニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」の聖地にもなっている「秩父神社」、ミシュランが認定する「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」の一つ星に認定された「宝登山神社」、貨幣発祥の地とされ関東を代表する金運アップのパワースポットでも有名な「聖神社」があります。しかもこの四社、全て秩父にあるんです!


さらに同じく埼玉の川越には縁結びとしても若者に人気な「川越氷川神社」があります。川越の街に観光で訪れたけど「川越氷川神社」には行かなかった。という人を探す方が難しそうです。

まさにオールスターというぐらい埼玉にはめちゃくちゃ参拝したい神社があったので、「何もない」という話になっていた「翔んで埼玉」を見ている時に、ええ!こんなに神社あるのに。と思った次第です。(もちろんネタなのはわかっていますw)

何が言いたいかといいますと、このように神社を目的地として見てみると、本当に全国には「わざわざこの地に訪れたくなる神社」がそれぞれの都道府県にあるんです。



観光の目的地に神社を定めるからこそ、ブランドストーリー作りは繊細に。

いくつかの事例を紹介してきましたが、どの神社もその日訪れるひとの観光の目的地となっている神社です。

ユーザーがブランドを作る。というと大袈裟に聞こえるかもしれませんが、少なくともブランド定着には大きくユーザーの力が関わっています。

観光においても同じで、「お客さんにはこういう風に回って欲しい」「これもみて欲しい」という思いを抱くのが当然ですが、実際にお客さんが魅力に感じる部分は発信側の想定していなかったものかもしれません。

どちらにしても言えることは「神社を入り口にその街の魅力を知ることができる」ということ。

だからこそ、何がお客さんにとって魅力なのかを実際に参拝客に話を聞いてみてもいいかもしれません。


神社旅メディア「sanpai.」は神社の発信のお手伝いをしていきます。

神社旅メディア「sanpai.」はSNSメディア発信だけでなく、神社が大好きで多くの神社に参拝をしているかたがたの声を実際に神社さん側に届けていきます。

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様々な視点から意見を聞けると思いますのでぜひお声がけ下さい。

#神社 #神社旅 #観光

東京出身。7年間の沖縄移住を経て三重県津市へ。沖縄移住応援WEBマガジン『おきなわマグネット』元編集長。神社メディア『sanpai. 』運営。Webデザイン、マーケティング、他制作ディレクションなどを生業としています。年間200社ペースで全国の神社を参拝しております。