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「Zoom疲れ」とオンライン環境における「存在感」の関係

こばやししょーたです。
例のごとく、唐突に文章を書きたい欲にかられ、またつらつらと考えていることを書き留めようと思います。

まずは自分の近況。およそ1ヶ月の引きこもり生活。

ご存知の通り、新型コロナウイルスの感染防止のため、緊急事態宣言が出て早数週間。ぼくが勤めている会社では、3月の末からリモートワークが開始。この4月から社会人大学院生になったぼくは、それに先んじて、3月頭ごろから徐々にリモートワークに切り替えを始めていました。

結果として、現時点でおよそ30日ほど、家の下にゴミを捨てに行くことと、郵便受けを見に行く以外で、一歩も外に出ない生活を送っています。ほとんどの生活用品はネットスーパーやAmazonに任せ、ヤマトや郵便局には足を向けて寝れない日々です。そんな日々の中、ありがたいことに会社も大学院もOffice365やZoomをフル活用できる環境にあり、特に不便なく仕事も勉強も研究も進められているのがぼくの現状です。

教育工学と、オンラインでの「在り方」について

さて前述の大学院ですが、ぼくの専門は教育工学と呼ばれる分野で、今話題になっているオンライン教育をまさに対象として学部時代から勉強を進めていました。特に学部では、ビデオを視聴するインタフェースに関心があり、ウェブ空間で受講者の感じる「存在感」が、学習効果に影響を与えているのではという仮説のもと、研究を進めていました。

つまり言い方は悪いものの、この社会の現状はまさに自分が関心を持っている領域がぐんぐんと成長している段階と捉えることができます。いまだかつて、ここまで日本中、世界中でオンラインの学びが真剣に捉えられたことはないはずです。また同様にオンラインでの働き方、より大きく言えば、オンラインでの「在り方」に注目が集まっていると考えています。

存在感、Presenceとはなにか

ここで少し「存在感」について解説をします。この記事自体、後述しますが誰かのために、というよりは自分のために書いているので、特に引用などせず記載しますので、詳しく知りたい方は改めて調べてみてください。

存在感、Presenceという概念は、Virtual Realityなどのバーチャル環境において、自分自身が「存在している」と感じられる度合いを表すものです。複数の下位概念が提唱されており、わかりやすいものとして今回は「Telepresence」と「Social Presence」を紹介します。

Telepresenceとは、teleportなどのteleが入っていることからも分かる通り、バーチャル空間上で「自分の身体があるかのように感じられるか」を表す指標です。VRで高いところから落ちる体験をしたり、なにかに襲われる体験をすると、自分があたかもそこにいるような感覚になりますが、それを指標として考えています。何もVRに限らず、いろいろな体験でTelepresenceを感じることはできるはずです。

Social Presenceとは、社会的存在感と訳されますが、バーチャル空間上で「他者が存在していると感じられるか」を表す指標です。例えばYouTubeをただ見ているときには、他のユーザがいることを意識しづらいですが、YouTubeLiveでコメントを見ながら視聴していれば、自分以外の他者を感じ取ることができます。

少し余談ですが、ニコニコ動画のコメント機能は、各自がバラバラに見ているにも関わらず、全員で盛り上がりポイントを作る弾幕などにより「社会的存在感」を感じ取ることができる稀有なサービスと言えたと思います。

「存在感のコントロール」こそが重要になる

さて、ここで「存在感」という概念を導入したのには理由があります。それはぼくらが引きこもり生活を始め、オンライン上での人との関わりに頼り始めたとき、この「存在感のコントロール」こそが重要になってくるのではないかと考えているのです。

リモートの環境では、リアルに表出できていた存在感は通用しません。リアルでは「その場にいること」が存在感を表出していましたが、リモートではオンライン環境にアクセスし、声をあげ、コミュニケーションをとることでしか「存在感」を表出することができません。

存在感を表出することができないというのは、要するに「他者がいない世界に生きる」ということとほとんど同義です。これは自分を喪失することともほとんどイコールと言えます。他者無しで自分を規定することほど困難なことはないはずです。

「存在感のコントロール」がうまい人・へたな人

今回の騒動によって、様々なイベントがオンライン化され、学校ではオンライン授業が始まり、働き方が変わりました。しかしそれまでにも、同様の在り方をしてきた人はいるはずです。在り方がそのまま同じでなくとも、オンラインでの存在感の表出がうまい人というのは、皆さんイメージがわくのではないかと思います。

ぼくがここで言いたいのは、「みんな表出がうまくなったらいいよね」という話しではありません。どちらかといえば「みんなコントロールがうまくなったらいいよね」と考えています。

この2つの違いについて次に書いてみます。
まず「表出がうまい人」というのは、簡単にいえばこの状況にうまく適応している人です。ICTツールの扱いに長けており、オンラインコミュニケーション能力が高い人。自分もその1人だと思います。逆をいえば「表出がへたな人」は、今顔が見えない人、最近話していない人のことを思い浮かべてもらえればいいと思います。

これに対して「コントロールがうまい」とはどういうことでしょうか。少し寄り道も挟んで説明します。

オンライン環境はリアルよりも「疲れる」

まずオンライン環境というのは、物理的・時間的な制約がないことがまず大きな利点としてあげられます。そしてもう一つ、権力構造がリセットされやすいこともあげられると思います。

後者を少し補足します。オンライン環境では、「その場にいる」権力が働きにくく、全員が1ユーザとして均質化されます。Zoomのギャラリービューをイメージすればよくわかりますが、講師もスタッフも参加者も全てが均質な環境が作られています。「声の大きい人」というのも、マイクをはさみ音声処理がされることにより、存在しにくいといえるでしょう。そういう意味で、これまでだましだましやっていたような暗黙の前提が崩れやすいのがオンライン環境の特徴と言えます。

その点リアルという環境はとても面白い特徴を持っています。例えば物理的に人が存在している位置関係が、権力構造を生みやすいです。また同時に複数人が話しても、空気や聴覚はうまいこと音を処理し、聞きたい話しに集中することができます。前述したように「存在しているだけ」の身体が放つメッセージの量もオンラインとリアルでは雲泥の差でしょう。

逆に考えると、オンラインでは自分の存在を声を大にして伝えなければ存在感を担保できません。座っていればよかった授業や仕事で、進捗を報告しなければ、自分の存在を主張できませんし、会議で話していない社員が目立ったりもするでしょう。またリアルでは存在感を小さくすることに長けていた人にとっては、この存在感が均質化される特徴が、逆に自分の存在感が強く出てしまうことによる違和感が出てくる思います。

このように、リアルの存在感に比べて、オンラインでの存在感は均質化される傾向が強いため、普段の存在感が強いひとも弱いひとも、オンライン環境での存在感の違いに無意識ながらも疲れを感じているのだと思います。ぼくはこれがいわゆる「Zoom疲れ」にあたるものだと考えています。

かなり脱線しますが、ここまで文章を書きながら、これは会社の同僚が専門にしているインプロでいう「ステータス」に近いものかもしれないと考え始めました。「ステータス」についてはまた別で書くかもしれません。

オンライン疲れを調整するための方略

ここからは蛇足です。
問題提起に対して、どんなふうに日々を過ごしたらいいのだろうかということを何となく考えてみようと思います。

1.自己との対話の時間を持ち外化する
今回この文章を書こうと思ったきっかけはここです。他者との接触が減少している今、自己との接触を多くとることが重要な気がしています。そのためには、理解できない他者としての自分と対話をし、何らかの形で外化していくことが重要です。

前述した通り、この文章は他人のためではなく、自分のための文章です。今何を考えているのか、今何を感じているのか、どんな違和感を持ち、それが自分の中でどうつながっているのか。これをとにかく書いてみる、話してみる、表現してみる。その外化を通して、自己との対話を行うことができるような気がします。

このご時世なので、オンラインでの活動のTipsが溢れていますが、結果として他人のためになればそれはよし。でも本当の目的は自分のため。という外化が自分にとっては重要かもしれません。

2.外部からの刺激に対する自己の反応を捉える
先日國分さんの「中動態の世界」という本を読みわかったことです。これはこれでそれこそ3000文字くらいの文章がかけそうな内容なのですが、要するに外部からの刺激(緊急事態宣言、ライブの中止などなど)はぼくのコントロール外ですが、それに対してどう反応をするのか、はぼくのコントロール下にあるものだということです。能動、受動のパラダイムをこえて、自分の仕組みを改めて捉え直すこと。ここに時間を使えるといいのかもしれません。1と似た内容ですね。

少し疲れたのでここまでにします。
また公開して、読み直して、加筆修正するかもしれませんし、別記事で補足をするかもしれません。とりあえず自分としては、書きたい欲を満足させたのでここまで。またいつか更新します。

どこか部分的にでも皆さんの参考になるような内容があれば嬉しい限りです。

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