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大福帳とAI教師、それぞれへの所感

こんにちは、ひつじはねたです。
毎日ブログも気がつけば7日目。1週間が経ちました。新年も始まってもう15日。あっという間ですね。

今日はいくつかネタを書いておきます。

1.向後先生の講座における大福帳

ぼくは現在、早稲田大学エクステンションセンターの教える技術講座に参加しているのですが、そこで「大福帳」なる取組みが行われていました。

大福帳とは
講義が行われるグループにいる他の参加者に、その日の自分についてのコメントを書いてもらうワーク。全4〜5人のグループになっているため、毎回参加者のうち4〜5人の方からコメントがもらえる

実際やってみた感想としては、ワークだけやった相手に何か書くの難しいな……という印象でした。何のためにあるのか、正直自分としては微妙な気持ちだったわけですが、当日もらったエクステンションセンターの講座受講者を対象とした研究をもとにすると理由が見えてきます。

論文は下記リンクより
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjet/advpub/0/advpub_S42072/_pdf/-char/ja

この論文では、エクステンションセンターの参加者を対象に、受講動機と受講後の変化を調査紙から調べています。結果としては、

講座を通じてできた仲間との交流や,講座で獲得した知識が実際に活用されているという実感と,大学が開いていることへの信頼感が,その後の継続的な受講動機につながることを示唆している。以上のことから,大学エクステンション公開講座を設計するにあたり,仕事のみならず自分に役立つような知識やスキルを提供すると同時に,ともに学ぶ仲間をつくれるような活動を支援していく形態にすることが必要だろう。(論文より抜粋)

ということでした。つまり大福帳は「ともに学ぶ仲間をつくれるような活動を支援する」ための取組みだったというわけです。

そう考えると、恐らく全6回ある講座の中で、同じ人とグループになったときに、大福帳を元に「あ、あの人いたな」とか思い出すのには効果がありそうな気がします。でもそれが「ともに学ぶ仲間」となるかはまたわからないけど。

とはいえ様々な研究で、オンライン教育における重要なファクターとしてオフラインコミュニケーションがあることを考えると、一つ重要な取組みといえるんでしょう。6回終わったときに自分がどうなっているか楽しみです。

2.『「AI教師」が人間の学習能力・意欲を高める』を読んで

もう一つは上記記事を読んだ感想。内容は読んでください。気になったのは下記の2つの部分です。

Luckin教授らがAI教師に期待しているのは、数学に苦手意識を感じている学生の意識を変化させることだ。実際、テスト学習に参加した学生のひとりは、これまでの数学に恐怖心を抱いていたが、AI教師による学習後にその恐怖が消えた、と感想を述べている。
研究チームが開発したAIロボット「MONICA」は現段階で、子供がキーボードの打つ仕草や口の動きを読み取り、その心理状態をデータとして分析・把握。それらデータは最適なフィードバックを選択するアルゴリズムへとリンクされ、最終的にAIロボットが発話やジェスチャー、つまりアウトプットを通じて、対象に学習への興味や動機付けを促す仕組みとなっている。

気になったこと1:なんで恐怖が消えたの?
AIは膨大なデータからパターンを認識したうえで、人間には判断ができないような処理を行うわけですが、今回のケースであれば事後的に因果関係が推測できるはずです。

AIが何かしらのアクションをしたとして、そのアクションが導きだされた理由はわからないものの、「何が原因で苦手意識がなくなったのかは調査が可能」です。場合によってはAI自体の直接的な影響があったわけではなく、単純に「AIに教えてもらう⇒テストの点数が上がる⇒苦手意識がなくなる」なのかもしれないし、「AIに教えてもらう⇒苦手意識がなくなる」なのかもしれない。この2つには大きな違いがあります。そこのところ論文出てるか調べてみようと思います。

気になったこと2:デリバリースキルをAIに代替したとき、デザインはどうなる?
2つめの抜粋についてですが、ここで紹介されているAI側のサポートは基本デリバリー側のアプローチのように読めました。そもそもつまらない、ためにならない、身につきづらいデザインを今後どうしていくのか、ここもAIで可能なのか、はこれから注目どころだと思います。

特にデザインについて、マイクロな教材を用意しておいて、モジュールを組み合わせるようにAIが設計していく方法の効果がどの程度あるのか、とかはすでに研究があるのかもしれません。通常IDでは、学習ゴールや受講者設定をしっかり分析したうえで、デザインをしていきますが、その部分をAIに受講者情報を入力したら(なんならリアルタイム収集で)、オンライン上のモジュールライブラリから自動でカリキュラム設計していく、なんてことができるようになるのかもですね。

気になったこと3:メタ認知能力ってどうなってるの?
最後は少し老害のような懸念かもしれませんが、学習支援をAIにやらせるというのは、LearningAnalyticsが発展していく中で当然の動きかと思います。特に集合型の教育の無理が祟っている中で、うまく設計もできていない講座を受けさせるよりも、自分のペースで学習するほうがいいよね、というのはぼくも大賛成な部分です。

一方で、学習にはメタ的に自分を捉え直す能力が不可欠だとも考えています。今何がわかっていて、何がわからないのか。あと何を覚える必要があり、何を練習する必要があるのか。こういった内容を把握するには、それなりの訓練が必要です。

しかし今のAIにおける学習支援は、基本的にこの能力を必要ないものにしていくものだと思います。そうすると結果的にはメタ認知能力は下がっていくはず。それでもいいといえばいいのかもしれませんが、学習の醍醐味の一つは越境した学び。全然違う分野へ足を伸ばす可能性をどんどん奪っていってしまいそうな気もする。特に小さいころ、自分が何をわかっていないのか、がきちんと認識できるかは重要な能力な気がするんです。

あ、その能力を学べるような学習支援をAIがすればいい?と煮詰まったところで、ここまでにします。

実は今回は「気になったこと2」を書き始めたあたりでタイムアップだったのですが、さすがに途中でやめるのが気持ち悪かったので書ききりました。別日に2つに分けようと思います。

それでは本日はここまで。最後までお付き合いいただいありがとうございました。

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