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幽霊を見た/元警察官の鍼灸師

今まで幽霊を2回見た

1回目は白い袈裟を着たお坊さん

夜警らの帰り、雨がシトシト降っていた
車を走らせ警察署から山奥の駐在所へ帰る途中
1台も車とすれ違わない
交通量は全くない
午前2時に近かった
モヤがかかりはじめた
じめじめして気持ちが悪かった
ダム湖のトンネルに入った
トンネルの出口に何か見えた
近づくと宙に浮く白いもの
次の瞬間、ゾッとした
白い袈裟を着たお坊さん、こっちを見ている
怖くて目を一瞬閉じた
消えていた

地元の人に聞くと江戸時代、お坊さんが川に入水自殺したと言う
遺体は上がらなかったそうだ
当時、川には渦が巻いていて、落ちたら助からないと言う

それから1か月後、対岸に鯉が釣れる場所があり、釣り人が訪れていた
午前中のパトロールで竿を垂らして釣りをしているのを見たが、午後、その人はおらず竿だけが水面に浮いていた
嫌な予感がした
落ちたのだ
捜索活動が始まった
遺体は見つからなかった

地元の人にその話をすると、以前オートバイで川に落ちた人がいたそうだ
オートバイは下流のダムで見つかったが人は見つかっていないと言う
道路は真っ直ぐで落ちようがないのだが、
2人とも引きずり込まれたのか?

2回目は髪の長い女

午前2時を回っていた
田舎道、人気が全くない
ある有名な寺の近くに来た
私がパトカーを運転し、助手席に後輩の部下がいた

小雨が降る中、ヘッドライトに人影が映った
髪の長い女の人
真夜中の小雨の中、街灯のない真っ暗闇を女性が歩いているはずがない
背筋が凍った
スピードを上げてやり過ごした
ホッとした
幻を見たのだ
念のため、ルームミラーで確認した
すると思わず、叫びそうになった
後部座席にそれはいた
後輩もすぐ察した
寺の入り口まで加速した
寺の入り口の横には墓地があった
寺の入り口を過ぎ、墓の前を通り過ぎると、それはいなくなっていた
2人とも一言もしゃべらなかった
いや、恐ろしくてしゃべることができなかった
そのまま警察署に帰った
すぐ当直休憩室で仮眠した

翌朝、引継ぎのためパトカーの清掃をした
後部座席が濡れていた
幻覚ではない、いや幻覚だ
そんなはずはない
仕事が終わって帰り支度をしていた
後輩に寺に行ってみようと思うと伝えた
後輩は
 「僕は信じない、幽霊はいないです
 よ」
と取り合ってくれなかった

ひとりで寺に行った
住職は言った
 「見たかね、髪の長い女、自分の
 子供を探して彷徨っているんだ」
住職は女性の墓の前でお経をあげてくれた
自分も手を合わせた

数年後、他の警察署へ異動した助手席の後輩が自殺した
体調を崩し休職していたそうだ
うわさで、頭がおかしくなったと聞いた
一緒に寺に行くべきだったと後悔している

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