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日本でSaaSをはじめるべき10の理由

本日、倉林さん@Draper Nexus、浅田さん@Salesforce Ventures前田ヒロさん@BEENEXTと「BtoB SaaSが半端なく熱いわけ」というお題でパネルディスカッション(私は拙いモデレーター)をやりました。

そこでお三方から出た意見を参考に、「日本でSaaSをはじめるべき10の理由」について書きます。

①と②はSaaS一般に当てはまることで、③以降は特に日本市場に当てはまることについて書きました。

みなさん、SaaSやりましょう!SaaSは楽しい!

目次:
① 世界的なSaaSシフト、サブスクリプションシフトが起きている
② SaaSには一定の再現性があり、学習により成功確度を上げられる
③ 日本は高齢化、人口減少の課題先進国で、生産性向上ニーズが大きい
④ 日本は単一言語の巨大市場であり、ユーザーニーズの汎用性が広い
⑤ 日本には強力な言語バリアがあり、グローバルプレイヤーがエントリーに苦戦する
⑥ 日本の顧客候補企業は地域的に首都圏、東京に集中しており、セールス、マーケティングの効率性が非常に高い
⑦ SaaSはコンセプトメイキングよりリリース後の継続的なKAIZENが重要であり、これは日本のものづくり気質と合致する
⑧ 日本にはARR10億円でも上場できる世界的にレアな市場が存在する
⑨ 日本は起業家数が少なく、米国、中国、インドなどに比較して競合が少ない
⑩ ①〜⑨の理由でベンチャー投資資金がSaaSに集まり、資金調達しやすい

① 世界的なSaaSシフト、サブスクリプションシフトが起きている

所有から利用への流れが加速しています。

SaaSのマネタイズモデルであるサブスクリプション(継続課金)は、「すぐにはじめることができる」、「すぐにやめることができる」という2つの圧倒的なユーザー価値があるので、この流れが止まることはありません。

サブスクリプションシフトに成功した企業はAdobeが最も有名ですが、このシフトにより一時的な売上が減るにも関わらず、その間、Adobeの株価は大きく上昇し続けました。

世界的なサブスクリプションシフト。SaaSはこの流れの中心にいます。

② SaaSには一定の再現性があり、学習により成功確度を上げられる

SaaSビジネスには一定の科学があり、一定の再現性があります。

その多くのケースがネット上にオープンに共有されているため、それらを読んだりSaaS経営者や投資家から直接学ぶことで、成功確度を上げることができます。

CAC(顧客獲得コスト)とLTV(Life Time Value)の関係が代表的ですが、SaaS MetricsやSaaS Unit Economicsで検索すると、たくさんの資料がヒットします。

また、ストック型のビジネスなので、売上高、費用、利益、キャッシュフローなどがある程度予測可能で、計画を立てやすいという特徴もあります。

経験は蓄積されていくため、例え最初の挑戦で成功せずとも、挑戦を続ければSaaSビジネスにおける成功確率は上がるとも言えるかと思います。

③ 日本は高齢化、人口減少の課題先進国で、生産性向上ニーズが大きい

日本は生産性向上ソリューションのニーズが非常に高い国です。

中国、インド、インドネシアなどの人件費が低い国だと、SaaSの営業の現場において、

「10人雇えば同じことが実現できる。その人件費の方が安い。従って、そのプロダクトを導入する意味が分からない」

というような主張に頻繁に出会います。(SPEEDAでアジア営業を担当している人から聞いた話)

人件費が高く、採用も難しく、生産性向上サービスのニーズが高い日本は、そのソリューションとして、SaaSが爆発的に広がる可能性があるのではないでしょうか。

④ 日本は単一言語の巨大市場であり、ユーザーニーズの汎用性が広い

ヨーロッパは各国毎の特色が強く、かなりセグメンタルな(部分に分かれた)市場です。米国は、東海岸と西海岸で文化が大きく異なり、人種や言語も多種多様です。

日本は単一言語で、人種的な多様性も低く、ユーザーニーズが分散しにくいという市場特徴があります。

従って、ユーザーニーズの汎用性が高く、広い市場を取る開発計画が立てやすいと言えるかと思います。

⑤ 日本には強力な言語バリアがあり、グローバルプレイヤーがエントリーに苦戦する

④の逆ですが、グローバルSaaSプレイヤーは、言語バリア、商慣習バリアのために、容易に日本にエントリーできません。(もちろん、Salesforce、Marketo、Slackなど成功しているプレイヤーもいます)

これは、独自言語、独自商慣習に適合した日本のプレイヤーがグローバルに飛躍しにくい理由にもなり得ますが、日本の起業家が、日本市場を取るチャンスは他国と比較して大きいと言えるかと思います。しかも、その市場は巨大。

⑥ 日本の顧客候補企業は地域的に首都圏、東京に集中しており、セールス、マーケティングの効率性が非常に高い

米国は非常に広い国土で、エンタープライズセールスは飛行機を多用し、一日に回れる商談は1〜2件程度です。ヨーロッパも事情は同じで、エンタープライズセールスは各国を飛び回ります。

一方、日本は東京、首都圏に顧客候補企業が集中しており、一日に5件以上の商談をこなすことも可能です。第二の都市の大阪を考えても、東京-大阪間は、新幹線によりNewYork-Boston間くらいの時間で移動することが可能です。

オフラインイベントを開催しても、東京だけで多くの顧客候補企業を集めることが可能です。数十分の列車移動だけで参加できる人が多く、集客は容易です。米国だと、オフラインイベントに参加するためだけに飛行機移動し、前泊する必要があったりします。

従って、日本は、SaaSのキモの一つであるフィールドセールス効率、オフラインマーケティング効率が非常に高い国であると言えるかと思います。

⑦ SaaSはコンセプトメイキングよりリリース後の継続的なKAIZENが重要であり、これは日本のものづくり気質と合致する

ユーザーニーズを愚直に拾い上げ、「開発+カスタマーサクセス」で価値をつくり続けていくことがSaaSのキモの一つです。

すなわち、継続的なKAIZENでユーザー価値を積み上げていくことが重要であり、日本のKAIZEN文化との親和性は高いのではないかと思います。

日本のものづくり文化が、SaaSものづくり文化にも広がればすばらしいですね。

⑧ 日本にはARR10億円でも上場できる世界的にレアな市場が存在する

マザーズ市場には功罪があると思いますが、世界でもレアな、上場、EXITしやすい市場であるのは事実です。

ARR(年間経常売上高)10億円の規模で上場できてしまいます。ちなみに、米国市場はARR100億円が上場の一つのターゲットだそうです。

ただ、個人投資家比率が異常に高い市場なので、マザーズでエクイティファイナンスを実施するのは困難です。マザーズ上場後に成長資金をファイナンスできない「死の谷」に入ってしまうベンチャーも多いことに留意する必要があります。

上場ゴールにならない様、死の谷にはまらない様、上場後もARRを向上させ続けるエクイティストーリーを持って、上場を目指して欲しいです。

⑨ 日本は起業家数が少なく、米国、中国、インドなどに比較して競合が少ない

この主張を裏付けする一つの数字として、VCからの資金調達を実施したスタートアップの社数を見てみましょう。

2017年の数字ですが、米国は8,815社、日本は530社です。
(米国の数字の出典はPitchbook、日本はentrepedia)

これは16.6倍の規模であり、両国の経済規模比から大きく外れた数値です。したがって、経済規模と比較して、日本はスタートアップの数が少なく、スタートアップ同士の競合が少ないと言えるのではないでしょうか。

ちなみに、米国のスタートアップの資金調達状況については、こちらのレポートが詳しいです。

⑩ ①〜⑨の理由でベンチャー投資資金がSaaSに集まり、資金調達しやすい

①〜⑨の事実は、ベンチャーキャピタルなどの投資家に広く認知されており、ますます多くの資金が日本のSaaS企業に集まるようになって来ています。

従って、その資金を元に大きな挑戦がしやすい環境ができてきているとも言えると思います。

まとめ

①〜⑩を再掲します。みなさん、SaaSやりましょう!SaaSは楽しい!

① 世界的なSaaSシフト、サブスクリプションシフトが起きている
② SaaSには一定の再現性があり、学習により成功確度を上げられる
③ 日本は高齢化、人口減少の課題先進国で、生産性向上ニーズが大きい
④ 日本は単一言語の巨大市場であり、ユーザーニーズの汎用性が広い
⑤ 日本には強力な言語バリアがあり、グローバルプレイヤーがエントリーに苦戦する
⑥ 日本の顧客候補企業は地域的に首都圏、東京に集中しており、セールス、マーケティングの効率性が非常に高い
⑦ SaaSはコンセプトメイキングよりリリース後の継続的なKAIZENが重要であり、これは日本のものづくり気質と合致する
⑧ 日本にはARR10億円でも上場できる世界的にレアな市場が存在する
⑨ 日本は起業家数が少なく、米国、中国、インドなどに比較して競合が少ない
⑩ ①〜⑨の理由でベンチャー投資資金がSaaSに集まり、資金調達しやすい