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魂(BLUES)の叫び「シオリ・エクスペリエンス」を推したいのだ

 ドーモ、タイラダでんです。よくいらっしゃいましたね。

 さて、まずはこれだ

そしてこれだ

 さあ、わかりましたね。わかったなら今すぐ「シオリ・エクスペリエンス」を全巻購入し、少なくとも6巻まで読むんだ

 僕は他人の評価ホイホイ信じるマンなので、TLに流れた来たこの第一話を読み、その後桃之字さんのこの記事を読んで、即全巻購入してしまったのです。その結果、今日一日で読み通して昼間っから大号泣しているよ。

 あまりにも刺さったので、カブり上等で記事を書くことにしました。すみません。

 「コバーン」と「ジミヘン」

 ※少々ネタバレを含みます。気になる方は先に全巻ご購入ください※

 作品の細かい紹介は先述の記事で見ていただければいいとして(タリキ・ホンガン!)、個人的に刺さったシーンをひとつご紹介。

 それは6巻。この巻のメインは、主人公のシオリ先生に取り憑いたジミ・ヘンドリックスと、別人に取り憑いた「ある男」が、即興でセッションする話です。

 まあ見出し通りなのですが、「ある男」とはコバーン、カート・コバーンです。バンド「ニルヴァーナ」のボーカル。ニルヴァーナを知らなくてもこの曲は聞いたことがあるのではないですか?

 作中ではカートがまだ生きていたときの、この曲を嫌悪していくまでを圧倒的画力で描いていきます。もちろん作中の独自解釈ですが、高い画力で描かれていくので説得力が段違いなのです。本当にこうだったのではないかと思わせる。

 自分の音楽を演っていたつもりが、その結果「売れすぎて」しまう。結果いつの間にか自分が一番嫌っていた商業ロックの波に飲み込まれていく。熱狂する観客が、そして自分自身が商業主義の豚としか思えなくなる…。

 ついには自分の人生を台無しにした、最も有名だが最も演りたくない曲とまでコバーン自身が称するようになる、それがこの、”Smells Like Teen Spirit”なのです。

 で、ですよ。

 紆余曲折あってジミとコバーンがライブハウスで並び立ち、セッションを始めるのですが、そこでジミが最初に演り始めるのが、自分の曲でもなく、得意の即興でもなく、この”Smells~”なんですよ。

 「ギタリストに言葉は無粋」の言葉とともにジミ・ヘンドリックスが! ”Smells~”の! イントロを! かき鳴らす!!!

「Come on!」

 それに応えるカートのボーカル! 「世界を変えた歌声」! サビでは激流と化した音が! オーディエンスに叩きつけられる! 描かれてはいないが読者の耳には間違いなく響き渡る”Hello, hello, hello, how low?”(ハローハロー、最低かい?)のフレーズ!

 いつしか二人のギターはケミストリーを起こし、観客の、そしてカート自身の感情を揺り動かしていく。曲が終わる頃には、あれだけ演るのを嫌がっていた”Smells~”で、確かに観客と一体化し、楽しんでいる自分に気づく…。

 ジミとのセッションを通じて、一人の偉大なアーティスト、純粋だったがゆえに自分をだまして生き続けることができず、自死の道を選ばざるを得なかった悲しい天才の魂が、もうひとりの偉大なアーティストとの魂のぶつかり合いを通して浄化されていく…。

 あああーーーー!!! 語彙力! 僕の中に渦巻くこの感情を表す言葉がほしい! 

「ジミヘン」と「コバーン」

 で、ですよ。

 一曲終わったと思った瞬間、間髪入れずに今度はカートがイントロを弾き始める。その曲は”Purple Haze”! ニヤリと笑うコバーン!

「Come on!」

 ここで実は、ジミもカートと同じだったということが明かされるわけです。

 観客は毎度のように”Purple Haze”や”Foxy Lady”を要求してくる。それに応えることは、みんなの期待に答えるジミ・ヘンドリックスを演じているだけで、真実の自分ではない。イメージのジミがそうだから、歯でギターを弾き、そのギターを燃やす。

 まるで自分が歪んだ鏡の中に閉じ込められた、哀れなピエロだと感じていたジミ、そのジミがもううんざりだとクサした”Purple Haze”。

 しかし、今回横でその曲をセッションするのはあのカート・コバーン! ジミが歌いだした瞬間、砕け散るファッキンミラーハウス! ジミの中にある爆発しそうな「魂の叫び”BLUES”」を見事に表現するカートのボーカル! その横で、心ゆくまでギターを奏でるジミ! 巻き起こる紫煙はいつしか嵐となり、観客を天まで吹き飛ばす!!

 そして後には、二人の天才しか残らない。

 曲が終わり、自分が咥えていたタバコをカートに手渡すジミ。それを口にするカート。見開き使って最高の笑顔を魅せる二人。爆発するオーディエンス。号泣する俺

未来へ

 そんなこんなで個人的イチオシ場面について書いてみましたが、こんな感じのエモエモエモシオンな話が既刊12巻通してひたすら読者に叩き込まれるという、ちょっと信じられない作品です。

 二人のアーティストを知らなくても、必ず刺さるはずですし、少しでも彼等の音楽に触れたことがあれば号泣必至の作品だと思います。

 皆さんも是非どうぞ。まずは記事冒頭のツイートから1話読んでみてはいかがでしょうか? 気に入ったらぜひ続きにも触れてみてください。そうすれば、きっと極上の体験(エクスペリエンス)に出会えると思いますよ。

◇いじょうです◇

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