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【CRAの勉強日記(4)】がんの支持療法

こんにちは、たいしです。
今日はお勉強シリーズ第4弾です。

前回記事はこちら。

シリーズの前提として、がん治療は多岐に渡っており、中には科学的におかしな民間療法等も蔓延っているからこそ、
医療に携わっていない方々ほど、きちんとした知識を学んでいただきたいと思って作成しています。

専門の方や患者様はもちろん、まだがんを身近に感じたことのない方も、ぜひお目通しいただければと思います。

◆前提

【支持療法とは】
がんに伴う症状や治療による副作用に対しての予防や、症状を軽減させるための治療のことです。
感染症予防の抗生剤、副作用である貧血や血小板減少に対する輸血、吐き気に対する制吐剤などが該当します。


◆支持療法を要する薬剤

【殺細胞性薬剤】
がんのDNA合成や細胞分裂の阻害によりがん細胞を死滅させる薬剤。
(ex:5-FU、イリノテカン、ビンクリスチン、シスプラチンなど)

【分子標的薬(低分子)】
がん細胞内で細胞増殖シグナル伝達を阻止する薬剤。
(ex:ゲフィチニブ、ソラフェニブ、ラパチニブなど。〜ニブとか〜イブと語尾につきます)

【分子標的薬(高分子)】
がん細胞表面で受容体と結合し細胞増殖シグナル伝達を阻止する薬剤。
(ex:リツキシマブ、セツキシマブ、ベバシズマブなど。〜マブと語尾に着きます)


◆症状ごとに必要な支持療法

【悪心・嘔吐】
○ポイント
・持続すると、脱水/電解質異常/低栄養を引き起こします。
・QOL維持と治療継続のためには予防が第一で、症状が出た際には適切なコントロールが必要です。

○発症機序(ちょいと難しいです)
・抗がん薬の作用により、回腸の腸クロム親和性細胞がセロトニンを分泌し、これが上部消化管の5HT3受容体を介して嘔吐中枢に至る経路
・血中の抗がん剤が直接、もしくは間接的にCTZ受容体が刺激を受け、嘔吐中枢に至る経路
・感覚などの情動刺激によって大脳から嘔吐中枢に至る経路

○催吐性リスク分類
高度(90%以上)/中等度(30〜90%)/軽度(10〜30%)/最小度(10%以下)に分類されます。

・高度:シスプラチン、シクロホスファミドなど
・中等度:ドキソルビシン、イリノテカン、シクロホスファミド
・軽度:ドセタキセル、エトポシド、S-1
・最小度:セツキシマブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ

○支持療法
・NK1受容体拮抗薬(アプレピタント)
・デキサメタゾン
・5HT3受容体拮抗薬(〜セトロン)


【下痢】
○ポイント
・薬剤によって発現率は異なるが、高いもので70%以上発現するものもあります
・1日3回以上で水様性排泄の増加を伴う、と定義されています
・重篤化することで脱水/腎機能障害/電解質異常を起こす可能性もあります

○発症機序
・直接的な粘膜障害による一次性のもの
・白血球と好中球現象などの骨髄抑制に引き続く、感染に伴う二次性のもの

○支持療法(Grade1/2のマネジメント)
・ラクトースを含む食事、アルコールや高浸透圧の食事を中止
・大量の飲水を促す
・ロペラミドの投与
→48時間以上持続する場合、ロペラミドを中止してオクトレオチドを開始

○支持療法(Grade3/4のマネジメント)
・十分な補液
・オクトレオチドの投与
・抗菌薬の投与
・ロペラミドの投与
・ケースバイケースで、乳酸菌製剤やタンニン酸アルブミン製剤の投与


【薬剤性肺障害】
○ポイント
・重症化すると肺繊維症や呼吸不全を発症
・息切れや発熱、空咳が見られたら即時にX線、CT検査を行います

○支持療法
・被疑薬物の中止
・強力な抗炎症治療(ステロイドパルス療法)


【骨髄抑制】
○ポイント
・殺細胞系の薬剤では非常に起こりやすいです
・白血球数は7〜14日目に最低値となることが多いです
・化学療法に伴う好中球減少の程度と期間の長さに比例して感染症の頻度が増加する

○代表的な病気
発熱性好中球減少症(FN):38.0℃の発熱が1時間以上持続、及び<500/μLの好中球減少が見られる。この場合、直ちに抗菌薬を開始します。

○支持療法
・G -CSF製剤:顆粒球産出の促進、好中球の機能を高める採用があります。
(ex:〜グラスチム)
・赤血球濃厚輸血:貧血に対する治療法。Hb:7g/dlを目安に輸血開始します。


【アレルギー反応・Infusion Reaction】
○ポイント
・蕁麻疹、浮腫、嘔吐、呼吸困難、血圧低下、失神が症状として出ます。
・症状は投与中止後や介入治療後も継続します。
・症状は投与速度の減速や投与中断で改善することが多いです。

○支持療法(軽症)
・原因薬剤の中止
・症状に応じて、抗ヒスタミン薬や解熱剤、ステロイドを投与

○支持療法(重症)
・原因薬剤を中止
・酸素投与
・バソプレシンやアドレナリン投与
・大量輸液
・抗ヒスタミン薬投与
・ステロイド薬投与


支持療法の概要については以上となります。
がんに関する知識の一助となれば幸いです。

また見に来てくださいね。

サポートいただけますととても嬉しいです!!いつもありがとうございます。