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シン・ゴジラに長澤まさみが出ない理由

映画『シン・ゴジラ』が依然として好評ですね。それに伴って、関係者のインタビュー記事などが徐々に増えてきました。制作委員会方式ではなく東宝の単独出資であること、10年ぶりの復活によって東宝社内のゴジラに対する呪縛が薄まったことなどが挙げられています。

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『シン・ゴジラ』では、石原さとみさんが米国大統領特使の日系人カヨコ・アン・パタースン役を演じており、実質的なヒロイン役となっています。こちらもインタビュー記事が掲載されており、役作りなどで相当努力された面を窺い知ることができます。

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東宝シンデレラ・長澤まさみの存在

ゴジラ映画といえば、東宝シンデレラ出身の長澤まさみさんは『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』『ゴジラ FINAL WARS』に出演しています。当時は初々しい雰囲気の美少女として、モスラを呼ぶ小美人役として登場しました。その後10年経って、名実ともに東宝を代表する女優となったことは周知のとおりです。

2015年の新宿東宝ビル竣工に際しては、東宝の看板女優としてゴジラとともにテープカットを行なっています。また2014年に公開した東宝配給の『WOOD JOB!~神去なあなあ日常』や2015年公開の東宝・ギャガ配給の『海街diary』にはしっかりと出演してますから、引っ張りだこではありますね。今年公開の『アイアムアヒーロー』も好調のようです。

歴代ゴジラ映画を支えた東宝芸能の俳優たち

ゴジラ映画では東宝芸能に所属する俳優が数多く出演してきました。代表的な女優は第2回東宝シンデレラグランプリの小高恵美さんでしょう。ゴジラ映画にも超能力少女・三枝未希役として最多の6作品に登場しています。東宝シンデレラでは今村恵子さんが3作品、沢口靖子さんも2作品とまさに代表作としての位置づけとなっています。

また『ゴジラvsメカゴジラ』(1993)では高島忠夫さんと高島政宏さんが親子出演するなど、東宝にとってはゴジラ映画において東宝芸能に所属するエース級の俳優を出演させることで、シリーズとしての安定感と売り出したい俳優の露出を両立してきたことが理解できます。

確信犯的な石原さとみの起用

ここまでの説明で、東宝の社運を賭けた作品である『シン・ゴジラ』に東宝シンデレラであり看板女優である長澤まさみさんが出演しない違和感は共有できたでしょうか。それでも石原さとみさんを起用したところに、この作品の強さがあると感じています。つまり配給会社(金の出し手)である東宝の意向よりも、制作サイドの監督らの意見が尊重されているということです。

『シン・ゴジラ』においては、高慢なパタースン特使の和洋折衷な発言が観客に大きなインパクトを与えており、そんな彼女が後半になって日本の味方になってくれるという国を巻き込んだ壮大なツンデレがかまされるという、非常に重要な役回りです。プロットになっているのはエヴァンゲリオンに登場する惣流・アスカ・ラングレーでしょう。

そのキャラの分かりやすさから、『シン・ゴジラ』に批判的要素を語るとすれば槍玉に上げられやすい役回りですが、大げさなボディランゲージを交えた生意気な小娘という難しい演技を通じて、突っ込まれ役を一手に引き受けているとも言えます。むしろこの観客に対する隙も制作サイドの意図と考えるべきでしょう。

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長澤まさみを温存した東宝の次の一手

これだけ大ヒットした『シン・ゴジラ』ですから、続編や海外展開も考えられていることでしょう。それでも庵野監督など同様の制作スタッフを継続することは難しそうですから、別の監督や俳優を起用する形になりそうです。ハリウッド版ゴジラの展開はいろいろと紆余曲折出てきていますが、それに呼応する形で日本版は引き続き東宝が版権を握って制作していくことでしょう。

長澤まさみさんはむしろ、この日本発のコンテンツを海外に売り込んでいくための切り札的存在として起用されるのではないでしょうか。そのためにはトリッキーな日系外国人の役ではなく、平和を願う大和撫子的な役回りを担うことも十分に想定できます。ハリウッド的な勧善懲悪ヒーローものでも、中国を意識したコマーシャリズムでもなく、脚本で勝負する日本映画を是非とも海外に発信していってもらいたいですね。


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