イエローハットのV字回復に学ぶ❶  「多角化戦略の失敗を思索する」

概要

ダイヤモンドオンライン「イエローハット社長が語る、『経営危機から12年連続増収へ」V字回復した理由

この記事は私にとって久しぶりヒット記事であったので、それこそ久しぶりに、こちらで思索(深堀り)してみます

この記事は
■自動車業界全体は伸び悩みの中、イエローハットの業績が好調
■社長交代から12年連続増収、この3年は過去最高益を更新
■生え抜き社員から社長になった堀江社長にその理由を聞く

現在の自動車業界、国内では新車販売が縮小する中において、モロに関係するカー用品業界も苦しい業界であることは一目瞭然

その中で経営環境の中で堀江社長はどの様な戦略をとっていったのか?

その具体的な戦略を深堀する前に、堀江社長は2008年に社長就任されてますが、その前のイエローハットの経営状態を見ていきましょう

イエローハットの多角化戦略

「掃除哲学」で我々、中小企業経営者の中で有名な創業者「鍵山秀三郎」氏
その秀三郎氏は同社社長を1998年に退任して相談役に。後継の社長は長男の幸一郎氏に。

1998年は金融ショックの時期であり、1991年のバブル崩壊から始まった「失われた30年」の流れの中で本格的な不況の始まりの時期

その中で後継社長が取った戦略は「多角化経営」
カリスマ的な経営者の後を継いだ親族の後継者は、会社の大きさに関わらず私が見る限り、この「多角化戦略」を取る傾向があります

「多角化戦略」とはその名の通り「いくつかの方面にわたる」戦略です
「アンゾフの成長マトリクス」の言うところの

新規市場(顧客) ✖︎ 新規製品(商品・サービス)

どの様な戦略を取ったかは記事の中で堀江社長がこの様に語ってます

2000年以降、中古車販売、ホームセンター、海外進出、携帯電話販売、介護用品販売など、事業の多角化を進めたが失敗。2004年ごろから経営不振に陥り、本業であるカー用品販売にも悪影響が出始めました。

凄い展開ですね(笑)「介護用品など」とありますので多分、その他の業種にも進出したと推測します

これらの業種展開をアンゾフの成長マトリクスを使って深掘りすると

■ 中古車販売:既存顧客✖︎新規製品(新製品開発)
■ ホームセンター:新規市場✖︎新規製品(多角化)
■ 海外進出:新規市場✖︎既存製品(新市場開拓)
■ 携帯電話販売:既存顧客✖︎新規製品(新製品開発)
■ 介護用品販売:新規市場✖︎新規製品(多角化)

新製品開発である中古車販売は別にして、同じ新製品開発である「携帯電話販売」は競争相手は商社やメーカー等々、自社より規模が大きいライバル会社との戦いになります

新市場開拓である「海外進出」これも体力が必要なのは容易に想像できます
その規模や地域は詳しく調べてませんが、現在の状況はウィキペディアに

2020年3月、国内738店舗、海外3店舗、総店舗数741店舗となる。

とあるので、収益の柱としての成長はなかったと推測されます

そして問題の「多角化」であるホームセンターと介護用品販売
この時期(2000年前後)は、今と違ってホームセンターも介護用品もまだまだ大手といった会社は少なく魅力的な業種だとは思いますが、副業的な取り組みでは既存の企業に競争で負けてしまうでしょう

竹田ランチェスターの視点

師匠の竹田陽一は自身の教材である「1位づくりの商品戦略(DVD」の「新商品開発マトリクス」の中で、多角化戦略に当たる項目についてこの様に書かれてます

④商品(製品)は異なり、客層と販売方法も異なる場合について
これは最悪の条件になる。卸売業などの販売業は商品知識の習得に1年はかかる。次に新規開拓に3〜4年はかかるので、合わせると4〜5年は必要になる。もし強い競争相手がいれば、この2倍はかかると考えるべき。

アンゾフの成長マトリクスの「多角化戦略」に当たるこの条件は「最悪の条件」だそうです。

商品知識の習得はとは、その業界特有の商習慣、商品の特性の習得や仕入れルートの確保、またそれに合わせた組織づくり等々

新規開拓は経営の中で最高レベルで難易度が高い項目
見込み客づくりから収益がしっかり確保できるレベルになるまでの営業システムの構築

それらを合わせて考えれば大会社であろうと事業が軌道に乗るまで5年に近い年月は優にかかると思います

その上、その事業ドメインに強い競争相手=ライバル企業が多数いれば、その倍の10年は驚く数字ではないと思います

この様に考察すれば結論として

経営では多角化は禁じ手

その様な結論になるのではないでしょうか?

結局は本業回帰

過去、日本一の流通グループになった「ダイエー」はその絶頂期である1990年代はホテル、球団経営、大学、金融から、BARの経営と100業種に近い業種展開をしていたといいます

1990年代後半、業績悪化が表面化し、吸った揉んだの末、2015年にイオンの完全子会社となり、現在では、本業回帰で総合スーパーとして創業の地、関西方面を中心に展開されてます

この後、こちらでゆっくり考察していきますが、イエローハットのV字回復もやっぱり本業回帰からスタートします

わたしも含め、多角化戦略を選択する経営者は、元気で承認欲求が強い創業者か、先代と差別化をしたい後継者

しかし私の知るところでこの「多角化戦略」を成功させた中小企業経営者はまだ見たことがありません

確かに事業を沢山されている企業はありますが、その事業全てが利益がしっかり出ているのか?こう考えればお荷物になっている事業が多く、本業の利益を食い潰していると言うのがほとんどでしょう

こんな時期だからこそ一本足打法の経営でなく他の収益源が欲しい!

先代からの古い事業でなく新しい事業で未来を切り開かなければ!

こんな思いを持つ経営者・また後継者は多いと思います
そんな方は是非!行動に移す前に竹田ランチェスター「商品戦略」を学んでいただき、その知識をベースにゆっくり考察されることを切に願います





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