1973.3.16放送
脚本：鎌田敏夫
監督：土屋統吾郎

早見淳が殺人の証人になってしまう。
七曲署門前で、マカロニが見た悲壮感漂う女は、
その不運なるも悲哀なる情感を醸し出す。

勝手にその女の相談に乗り出す淳を、知らず知らずのうちに
この女は自分で用意した犯罪の罠の壺に徐々に誘導していく。

元来持つ淳の「女へのだらしなさ」は
誰にでも感じられるが、殿下やゴリにない性分の露出。
一番初めにそれを感じたのは同僚シンコ。
「女を馬鹿にしている」と思った、女特有の
だらし無い男を嗅ぎわける動物的直感。チンピラ警察官だと。

シンコは元七曲署の名刑事、父宗吉にもそう言っている。

「48時間の青春」や「オシンコ刑事誕生」でその台詞をご確認下さいませ。

マカロニが見た、この常に悲壮感が漂う女は、
隣の部屋の住人の女から、すでに
現金2000万円を奪取してしまっていた。

あとは、
その痕跡を巧く消さなければならない。

しかし金を奪われた隣の女は
男と共に執拗に追いかけて、
この悲壮感漂う女を何処までも追い詰める。

その時、悲壮感漂う女は、女へのだらしなさを、
その女も直感した男マカロニを盾に、
自分が立てた殺人計画を成功せんとす。だがこれは、
女がこれは計画ではない事を現職の刑事に信じ込ませ、
さらに其れを警察の手によって証明させようとする。

マカロニには、狙われ襲われた理由を喋ろうとはせずに、
また、ただ刑事の前で怯えている事を演出する事で、
マカロニには女は「私は不運で、不幸な女」だと信じこませ、
上司や一係仲間たちにも同情を買わせようとしたのだ。

しかし、この時のマカロニも皆に断言している。
「ただ彼女は誰かに脅されているんだ！」と。

しかも、その女は、
自分で計画し、実行しようとする殺人であるにも拘らず、
殺人は自分が計画してはいないと言う思わせぶり。

これは、一種の自分を助けて貰いたい仄めかしだった、か？

また誰かに脅されていると
思わせる事が最も肝要。その為には、
全くの第三者がしかも
たまたまの出会を装った人間が必要だったのだ。

それが、予想もしなかった男。それが、
頼みもしないで執拗にくっ付いてくる
チンピラ刑事マカロニだった。

「えっ？この男が、警察官？　刑事？」

不幸な人生を歩んできた、不運な女が最後に取る道は、
自分に覆い被さる不幸を他人にも味合わせてやる事。
その為には、孤独な一人だけの計画が必要だ。

なのに、
シツコく引っ付いて勝手に協力したがるマカロニは邪魔だ。
気にはなるが、次第に鬱陶しいと思い始める弓子。

問題は、確かな証人がいる前で
この世から葬り去りたい女(隣部屋の女)を殺して
自分がこの女から殺害されるように見せかける事。
自分は助かり、その女を
見事に殺すことが果たして出来るか？

実は、かなり頭が良い女だったのだ！

それを第三者が証明してくれたなら、
もっと事件の真偽は明確になる。
さらに現職の警察官なら、なお言う事はない。

計画したら、やるしかない！
そう思って、この女深道弓子はマカロニに近づいた。

いや、
相談に乗ってもらう振りをして接近した。
全ては、あの計画を巧く実行させる為に。

最後に、モノレールで羽田空港駅に向かう弓子。
その時、部屋に戻ってきた野崎の調査報告で確定的になる。

やはり、二十の銀行に100万円ずつ貯金していたと。
マカロニはその時に、
初めて「自分に仕掛けられた愛の謀略」に気付くのだ。

女の擬似的愛情に、踊っていた馬鹿な自分をかなり惨めと悟る。しかしながら、それでも彼女への恋意は捨てきれない。

もう一度、七曲署門前に戻ります。

◆焼き芋500円で買えたのが4-5本だった1973年。
あの時代の経済状況が垣間見える。
マカロニが好んで吸うハイライトが1箱80円。
大卒の初任給がたった52,700円の時代(1972年)
大卒初任給 (現代の価値に換算)で 157,052円

◆井上順の♫「お世話になりました」でも、
当時の金がない、若い人の喫煙タバコの定番銘柄は
ハイライト、だった。

♫「お世話になりました」

50年前の1972年。そして放映は1973年初春。
そんな年に太陽にほえろ！は番組がスタートした。

女が企んだ上記のこの歪(ゆが)んだ計画を巧く実行する為には、
やはり協力してくれる警察官が必要だ。
協力すると見せかけてくれる奴、男を探すしか
他に道はない。
自分を守り、常に自分のアリバイを証明してくれる、
出来れば馬鹿で、ボッーとした警察官なら嵌めやすい。
それらしい警察官だと、マカロニに見当を付けた弓子。

ここから弓子の、演技した仄めかしが次第に奏功していく。

それを、マカロニが信じ、決して疑うどころか、
妙な好意を持ち始めてくれている、他人を蔑める為に、
これしかないと考えた女性独自の雌の直感が、
この犯罪の成功度を高めたのだ。

この焼き芋を持ったマカロニと
悲壮感漂う雰囲気を演出した女が門前でわざとぶつかる。

その時から、マカロニの悲恋は始まる。

同時に殺人を巧くやり遂げる為に
弓子のカモフラージュ計画がスタートするのだ。

◆第6話「手錠と味噌汁」で
マカロニの母は既に他界している事が語られている。
映像にも登場はして来ない。

上記回では、視聴者に知らされた早く他界した淳の母。

その母を知らぬ、よって母の温かみを知らない
マカロニが、女には誰にでも母性を抱き、
出会った女の、その慕情にくすぐられ
知らず知らずの内に、今回はその悲壮感漂う女に
惚れていき出し、女がじっくりと掘った深い穴に嵌る。
しかも簡単に。真っ逆さまに嵌(はま)っていく。

他にはもう何も見えなくなってしまう。
そのマカロニの弱点。「女に惚れっぽい」性根を
マカロニが判らぬように、逆手に取る女  深道弓子。
この陰りある美人は一体何を考えているか？
美人の美貌の裏には、何かがある。
デカ部屋に連れて行き、皆に紹介するも、
鬼と皆んなは、この女よりも、
浮ついたマカロニを誰もが心配する。

35話、その他蘊蓄話を少し。
あまり皆様が知られていない事
知っているファンはいらっしゃると思いますが。

◆同じ状況が、四年後の太陽！で再現される。

可愛い女を見たら、どうしようもなくなる。
マカロニのように「他には目が行かなくなる」
赴任して三年目の28歳のボン田口良。
これも35話を一部オマージュしたと思える作品。

ボン、ロッキー時代の
第279話「愛と怒り」
マカロニの「バスに乗ってたグーなひと」とも
絡んでいる、この部分のオマージュでもある。

また「危険を盗んだ女」
大原麗子にちょっと惚れた殿下という、
あの回にも。これは蘊蓄話で紹介済み。

大原麗子は
「バスに乗ってきたグーなひと」だった。

第279話「愛と怒り」
この回は下記２話の田口良バージョン。

マカロニの「バスに乗ってたグーなひと」
殿下の「危険を盗んだ女」そして今回の
マカロニの悲恋を描く35話「愛するものの叫び」

279話「愛と怒り」では、
「バスに毎日乗ってくるグーなひと」
という設定。その彼女を毎日見たい為に、
出来れば声を掛けて仲良くなりたい。
ボンは一人で毎日バス通勤するようになる。

「次は七曲警察署前でございまーす」

その彼女が、ボンがこのバス停で、
バスを降りたあとに車内爆発。
彼女はバスの中で殺されてしまう。

恋焦がれる彼女を爆殺した犯人を一人追う。
悲しみの中、捜査中のボンに、
実は彼女がとんでもない悪女だった事実
が証明されていく。

体育会系ゴリは、「ここまで証拠が出て来ても。
まだ判らないのかお前っ！頭を冷やせ、ボン！」
と怒鳴る。しかし
恋した女を想うボンを殿下は気遣う。
ロッキーも同居しているボンを心配する。
　

✅カメオ出演で、当時文学座研修生だった、
松田優作がショーケンと初共演。最初で最後。

「その子の姉が、人を殺したんだ？ それでも、アンタ方は規則が大事なのか！」と淳。

このマカロニの台詞に、熱を込めて反論する松田優作。

ショーケン相手に、新人とは思えぬ迫真の演技に、
制作側は太鼓判を押したという。長い台詞をしっかりと
情熱的に話し続ける。その情熱に萩原が押されているのが映像で判る。

この迫真の演技で、次期新人刑事に抜擢される。

実は、文学座の先輩だった村野武範が、麻雀に負けて、
その罰として岡田プロデューサーに同じ雀卓にいた松田を紹介して、このカメオ出演に繋がったという。

またその松田も、日テレに岡田プロデューサーを訪問した折、
次期新人刑事候補の写真の中で、
髭面の木之本亮を「この髭が結構面白いだろう」と推薦したとか。

↑↑左は26歳。右は年老いたロッキー、となっております、今では。

これは、裏話です。知っている人は、知ってます。

✅以降、全くのズブの素人の太陽！出演の登竜門。

最終の難関テストが、このカメラテスト。
新人刑事予定者は必ずこのカメオ出演を
クリアしなければならない。
というルーティンが
その後の太陽！には生まれていくのだ。

以下は各新人刑事のカメオ出演の回です。

※あくまでも芸能界デビュー前の
カメラテストが、このカメオ出演。

だから、後日の映像が確認できるのだ。
◆ショーケンが役を降りたいと言わなければ、
このルーティン継続は以降も無かっただろう。

✅実は一人だけ、2回のみカメオ出演。
それは山下真司。彼のみ二回。

何故なら 宮内淳が女性ファンの人気沸騰中で
ボンを殉死させる予定が伸び伸びになっていた為。

女性ファンから
「宮内淳を殉職させたら、局を爆破する」とか
「脅しや脅迫状がかなり多く殺到した」為らしい。
だからしばらくは延命となってしまう。
これが元でボンは、当時3年9ヶ月の延命となる。
しかし更にこれを超えたのがロッキー。
ロッキーは5年2ヶ月。新人の中では最長記録。

◆男前は辛いなあー(筆者)
殉死前ボン最盛期28歳頃と60歳代の宮内淳。

しかし、ボンも志村けん同様70歳で他界。

↓ 以下はカメオ出演の回

松田優作➡︎35話愛するものの叫び(上記)

勝野洋➡︎89話地獄の再会
◆藤岡琢也の後輩として殺される青木刑事役。

※この回は一年後156話「刑事狂乱」の布石に
　なっている。勝野洋がある女性が
　かつて愛した男性として蘇る。実は蘇ったと
　勘違いした。その勝野洋が演じる男との愛を
　再燃したい為に、しつこく言い寄る邪魔な男
　をアーチェリーの矢で刺し殺してしまう。

宮内淳➡︎148話友情　柔道部員役
◆ボンは柔道をやっていたのか？
黒帯やで？

◆柔道を真面目に取り組み、有段を取った人達に
あまりに失礼では？小学生も幼稚園児も
一所懸命に技能習得する人もいるじゃないか？

◆更にはテキサスは柔道3段。
物語上は4段と言う設定である。
テキサス刑事登場！時に、
ゴリが三上の身上書を読み上げるシーンで
視聴者にそれが判明する。

「おーい。お前柔道四段か！。今度署内対抗試合があってな？お前が加わったら、今度こそ勝てるかもしれんぞ」と。

木之本亮➡︎245話刑事犬対ギャング犬　犬調教師役

◆筆者も当時、この髭モジャには驚き、まさか
次期新人刑事だとは思いもしなかった記憶がある。
この時から促音の発音が出来ない？。

◆また、1980年正月の作品「ゴリラ」で、
ロッキーもスニーカーも黒帯で乱取り稽古を
しているシーンが登場するが、
上記と同じ感想です。

山下真司➡︎

324話愛よさらば、ではヒッピー役
◆実はこの回で、ロッキーの心臓が停止してしまうのだ。
一度死んでいる岩城創。北海道旭川ロケーション。
二週連続の前編作品。

341話同期生、ではゴリの同期生の後輩の刑事役

渡辺徹➡︎460話スニーカーよ、どこへ行く
◆ゴリに聞き込みされる若者。当時から太ってた？

又野誠治➡︎541話からくり
◆雀荘で、ドックから聞き込みされる兄ちゃん役

◆上記以外の刑事たちは、それなりの
キャリアがある為に、カメオ出演は免除？
されたか。世良公則もミュージシャンだから
免除されたか？

◆また、青木英美や中村雅俊も、カメオ出演している。

現在の青木英美↑

↑↑　第31話「お母さんと呼んで」より　↓↓

青木英美は、感情を出して涙を流すテストか。
継母に「私が悪かった。死なないでお母さん」と。
偽装誘拐を計画した当時女子高生役。

尚、「高校教師」では、女番長カミソリ節子を演じました。

太陽にほえろ！ゲスト女優番外編Iをご覧になってください。

血の繋がらない人間同士が涙を流せるか？
と言う回のテーマに、青木英美は挑戦し、
一年後にジーパンと同期生となり、
七曲署初の女性事務員、いわばお茶汲みの座を得る。

このお茶汲みも、青木英美から、浅野ゆう子、木村理恵、友直子と、続く。

太陽にほえろ！「人質」より

これが、中村雅俊の芸能界デビュー作。
松田優作との初共演。その後、松田優作の太陽にほえろ！卒業記念作「俺たちの勲章」に繋がっていく。
制作プロデューサーは太陽！も俺たちシリーズも、同じ岡田晋吉プロデューサーです。

実は、勝野洋と宮内淳で、「俺たちの勲章II」の企画がされていたというが、オジャンとなったらしい。理由は岡田プロデューサーに聞いてみて下さい。

しかし、あっと、驚く！ことが、、、

筆者がもっと驚いたのは、マツケンサンバのあの男。

松平健もカメオ出演をしています。ジーパン時代に。
次期テキサス刑事候補、の一人だったようです。

皆様、吃驚したでしょう？
そのカメオ出演はどの回か？
上記映像を参考に探してみて下さい。
これはまたの蘊蓄話、ジーパン時代をご覧ください。

✅また劇中に流れるGSサウンド。
「僕達の夜明け」唄うはデイブ平尾

YouTubeのリンク↑で歌って下さい。
70年代GSサウンドを懐かしみ聴いて下さい。

1973年早春の朝焼けの海岸を
マカロニジムニーが疾走する。
海岸の水飛沫の中で戯れ合う二人。
演技を忘れている？萩原健一。
萩原健一最初の夫人となる小泉一十三(ひとみ)。
この回の共演がキッカケの結婚であった。

最後に浮ついたマカロニに
これ迄の捜査結果を鬼が話すシーン。

「何ですか、ボス。改まって、、」

「これは、俺の勘だがね、、」と左手に鬼がいる。

「一人の貧しい娘がいた。
　その娘には小児麻痺の弟がいる。
　弟は20歳になったら、今の施設を
　出て行かないといけない。または
　凄く金の掛かる施設に代わるしかない。

　娘は悩んだ。

　そんな時、隣りの部屋に
　二千万円を盗んだ女がいた。
　娘はある時それを知ったんだな？

「まさか？」とマカロニ。顔が歪む。

　娘は盗んだ。

　しかも盗んでも警察沙汰にならない金だ。
　しかし金を盗まれた女は男と
　一緒に娘を探した。

　そして見つけたんだ。

　やっと手にした金を
　自分の物にする為には
　男も女も殺すより他に道はない。
　しかし ただ殺したら見つかってしまう。

　娘は考えた。

　刑事をアリバイにしよう。
　刑事が見ている前で人を殺せば。
　自分が殺される振りをして、
　人を殺せば判らないだろう。

　その刑事が、マカロニ。お前だ！」

「嘘だ！そんな事、嘘だ！」

あとは、マカロニが一人で考えるしかない。
刑事である淳は、一人で答えを出すしかない。
皆んなの、先輩たちの苦労で、手札は揃った！

ストーリーは皆様がご存知でしょうが、少し続けます。

最後の一つ前のシーンで終わります。

↓↓

羽田空港駅に着いた切札の深道弓子を
マカロニが追いかけて、追い詰める。

井上堯之バンド♫「衝撃のテーマ」

映像はスローモーション。
自分のバンドバックを投げて弓子は
マカロニに捕まらないと疾走。
バックからは、
マカロニがあげたサングラスが転がるシーン。
その上をマカロニが飛び越える。

マカロニの頭では、初めてのデートが交錯する。

そして、マカロニに手錠を打たれた弓子は、
観念するどころか、
女の狂気が尚も咆哮する！
「チキショウ、畜生！」

いつの時代でも女には、男は気を付けなければならない。女は突然に、毒が注入された刃を男に向ける。

弓子を逮捕した後、連絡をしてこない淳。

マカロニからの連絡が無しの飛礫。
一係では遅くまでマカロニを心配している。
山村席に野崎が、隣りでは山村席に殿下が腰を掛けている。
その山村が刑事としては先輩野崎の肩を揉んでる。
一係の年長者の身体をほぐす山さん。
これは珍しい。

次回は

マカロニ時代★★★優秀作004
第41話「ある日、女が燃えた」

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