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2020年から書き出した本作品を、書き直し始めています。新編の更新を暫く中止します。申…

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2020年から書き出した本作品を、書き直し始めています。新編の更新を暫く中止します。申し訳ございません。

最近の記事

(6)「緩急」による変化が、時として効果を齎す。

フィリピンとマレーシアの国境を跨ぐ様に散在するスールー諸島のとある島が、飲料水と蚊取り線香、殺虫剤を求めていると、フィリピンミンダナオ島とマレーシアボルネオ島に度重なるSOSのように何度も来ていた。 しかし、その海域の複数の島の周辺には中南米海軍の艦が配置され、航行出来なかった。 元々物資を届けていない取引先でもあるので、「軍に封鎖されており配送できない」と断っていた。 当初は上手くいっていた。島々では農作物や家畜を補い合い、ほぼ自給自足の環境を整えていたので、周辺海域を

    • ( 5 ) 無防備な時こそ、魔の手が忍び寄る

      約2kmの白砂のビーチと周囲がサンゴ礁で覆われた無人島で、日本人、インド人、ベネズエラ人の一行が区分けした訳でもなく、自然とミックスしあいながらグループごとに遊んでいた。 護衛の兵士達も、周囲に誰もいないエリアと判断し、人型ロボットとAIに警戒にあたってもらい、宇宙飛行士達と一緒になってシュノーケリングに興じたり、ビーチで肌を焼いている。 4人の子供たちは一部の女性宇宙飛行士達に可愛がられ、遊んでいた。 遠目では微笑ましいものであったが、母親であるパメラが近くに居たら、怒

      • (4) 怨嗟、怨みが 事実をねじ曲げる

        月面基地に向かう有人機が2ヶ月後に離陸するのに合わせて、建設最後となったフィリピンにおけるトレーニング施設が完成した。 種子島宇宙センターでトレーニングをしていた1次隊と2次隊がルソン宇宙センターに移動して、訓練を始める。3、4次隊は種子島で約1ヶ月滞在し、ルソンに異動する。新たに選定された5、6次隊が種子島宇宙センターに到着、訓練を始めている。 1次隊と2次隊の面々は日々打ち上がっている無人のシャトルと輸送機の打ち上げを見学し、新たに湧き出て来る意欲や決意を胸に秘め、己を

        • (3) 横展開と、増殖

          「スービック市の社会党本部、銃器を持ったグループにより襲撃を受ける」 という情報が、ニュース速報としてアジアと中南米全域で伝えられ 広まった。第2国籍によるフィリピン議員の日本人とベネズエラ人が狙われ、襲撃された、らしい。 本部と伝えられたものの実際は住居であり、政党を立ち上げた時に居住地を本部として登録したので、「社会党本部」と警察の広報が報じた。 即座に日本政府とベネズエラ政府がフィリピン政府や日本大使館とコンタクトして、犯行未遂に終わった事件を大胆なまでに「修正」し

        (6)「緩急」による変化が、時として効果を齎す。

          (2) 家族

          ベネズエラ大使 誘拐事件が起きてから、1ヶ月が経過した。 丁度1ヶ月となる日に合わせて、共に爆破現場となった交番と ビル街の2箇所に献花台が設けられ、既に様々な色の花束が供えられていた。日本では白菊が定番だが、亜熱帯園に近い台湾では献花する花々も多彩な色彩となり、統一感は希薄となる。一方で、花束に関する違和感はベネズエラの面々には殆ど無かったのだが。 ベネズエラ一行をメディア各社が撮影している中で、ここまで気丈に振る舞っていたミカエルが、献花台に掲げられた母の遺影に近づくに

          (2) 家族

          11章 宿命 (1) 習慣が災いを呼ぶ

          雨季の間隙を縫って、順番の最後となった大統領府の引越し作業がおこなわれていた。 カラカス市内の議事堂の敷地内に合同庁舎が完成した。既に他のフロアには各省庁が転居を済ませており、国家として稼働し始めている。大統領府だけが一斉に転居できずに部門別、担当者ごとに旧大統領府からの異動を終えていなかった。 最上階の11階が大統領府となる。首相と外相のボクシッチ夫妻と官房長官のチームが真っ先に入居して、ベネズエラ政府として最低限稼働できる体制を整えたのだが、他の大臣は日頃の業務に追わ

          11章 宿命 (1) 習慣が災いを呼ぶ

          (12) 策士、 再び。

          甲板でのトレーニング、救命ボートの搬出等の作業で、大臣とSP(と思われる)2人は自衛官に劣らない動きを見せて、自衛官達も関心の眼差しを注いでいた。 「息子がセリエAに居るだけの事はあるな」と自衛官が囁いているのを、先任伍長の山本は耳にした。確か一人っ子だったな、と思いながら。 山本は大臣が全力を出して訓練に食らいついているのに、SPの2人はまだ余力があるかのように流しているのに気がついていた。陸自のSWATチームか、特殊部隊なのでは?と視野の端で確認していた。 ただ、メガ

          (12) 策士、 再び。

          (11) 盲点

          呉の造船所を出た巨大艦が出港する様を、居並ぶマニアの群れに混じって撮影している男がいた。 体型を悟られぬ為だろうか、わざと一世代前のオーバーサイズの服をだらしなく着こなして、髪は寝癖を直さないままでいる。古いフレームの伊達メガネを掛けると日本語で言う「オタクっぽい」感じとなり、同じような格好をした人々の一員のように、周囲に溶け込む事に成功していた。 警備を担当している自衛官やロボットが、カメラやムービーを構えた人々全員をデータ照合している。タブレットと人々を交互に眺めては

          (11) 盲点

          (10)続、教え子の成長が齎すもの

          空港からの道中は降っていた雨も、あがった。 子どもたちは庭に出て、カブトムシとノコギリクワガタの巣箱を清掃する、2人の小学生の手の動きに注目している。 兄弟達の異母兄に当たる30過ぎのサッカー選手達が飼っていた昆虫の23年目、23世代の子孫にあたる甲虫たちだ。アユミの娘、蒼と翠の姉妹は、スズムシの卵が孵化して、透き通った色をした23世代の幼体の入ったケースを眺めている。姉妹はスズムシ等の秋の音色を奏でる虫達には関心があっても、幼虫期から常に戦う事を求められる甲虫には、何の関

          (10)続、教え子の成長が齎すもの

          (9) 教え子達の成長が齎すもの

          「ええっ、こんなに深く掘るの?」  「地震国、デルタ地帯ではこれが標準の工法だって言うんだから、ビックリよね。ベネズエラ・ブラジルだとオリノコ川、アマゾン川河口部か流域、後は埋立地での建設くらいだからね、今まで玲ちゃんが見なかったのも仕方ないよ」 マタニティ姿にヘルメットを被った杏が説明する。妊婦と並んでも違和感の出ないようにと、玲子が気遣って珍しく外出時にワンピースを纒った出で立ちで、チタン鋼材を何本も打ち込んだ地下を覗き込んでいる。前傾姿勢となり、手すりを握ったポーズ

          (9) 教え子達の成長が齎すもの

          (8)平時の方が、やるべきことが増える・・・のかもしれない

          皇居で任命式を済ませた新閣僚たちが、首相官邸に帰って来る。 新任大臣の先頭役を担ったのが官房長官から外務大臣に転じた、モリ・ホタルだった。 各メディアが新外相は2度目の任命式と伝えているが、実は何度も何度も経験していて、回数も忘れてしまっている。また、実の名の頃の選挙区と明らかに異なるのに、 「またしても、当選2回目の2世議員からの異例の大抜擢」と、世襲制を踏襲したかの様に表現するのは、発行部数減少の一途を辿る古株の新聞社だった。 ワイドショー番組では「新外相のお嬢さんがフィ

          (8)平時の方が、やるべきことが増える・・・のかもしれない

          (7) 覇権は一切求めない一方、 実力は余す事なく開陳する。

          ただ、 圧倒的だった。            各国が非難し続ける一方で、一般大衆への報復を恐れて攻撃対象とはならずに、存続し続けたイスラム国、ISが、唯一の武力敵対組織である中南米軍の攻勢を受けて壊滅しようとしていた。 これまで、IS構成員が何度も中南米諸国まで出向いてテロ行為を試みようと画策してきたが、中南米諸国連合の入国審査をクリアーすることが出来ずに水際で逮捕され、尽く処罰されてきた経緯がある。中南米諸国へのテロ行為が難しいとして、同盟国の日本や北朝鮮への侵入を試みたも

          (7) 覇権は一切求めない一方、 実力は余す事なく開陳する。

          (6) 休み明け早々、脚本だけでなく 演出まで手掛けてみた。

          この日も大統領府に、各大使館、中南米軍諜報部隊から膨大な量の各国の情報が届く。大統領の不在時は序列ナンバー2の首相と、ナンバー3の外相兼国防相のボクシッチ夫妻がベネズエラ以外の中南米諸国に対して開示する情報と、ベネズエラ内で秘匿する情報に夫妻がダブルチェックしながら区分けしてゆく。この時期、顕著に多かった情報はモリが休み明けに訪問するシリアとイラクに関するものだった。             ドラガンとタニアの夫妻が先日訪問した、イスラエルの第二弾とも言える今回の2か国訪問

          (6) 休み明け早々、脚本だけでなく 演出まで手掛けてみた。

          (5) 続、 世界は転がり続けるの巻〜ある夏の一コマ

          ベルギー・ブリュッセル郊外の農家視察と、日本の出資で建てられたベルギー王立農業試験場の除幕式に出席した若き日本の農学者3人は、海斗とサンドラット夫妻とベルギー内で数日間行動を共にした。          ベルギー滞在に続いて、日本と古い関係にある隣国に5人で移動し、首都アムステルダムから10km離れたスキポール国際空港に到着する。    オランダ政府から招かれた5人は、空港ロビーに出ると政府関係者と数組のマスコミに囲まれる。ブリュッセルでの事件の後、EUから親善大使に任命され

          (5) 続、 世界は転がり続けるの巻〜ある夏の一コマ

          (4) 長期休暇中でも、 世界は転がり続ける。

          日本の長期休暇と言えば、年末年始、GW、そして夏休みが3大休日となっている。        8月は夏季休暇期間でもあり、日本経済の活況、ドル・ユーロ・元暴落中の余波による円高騰の波を味方にした海外渡航者が、過去最高を更新するのではないかと言われていた。  国際便が発着する空港には大勢の人々が連日のように集まっていたが、嘗てメディアが混雑する空港の映像や苦笑いする人々のコメントを得るために、出発ロビーで搭乗手続きの長蛇の列に並ぶ人々に「もう、どの位並ばれているのですか?」と尋ね

          (4) 長期休暇中でも、 世界は転がり続ける。

          (3) 戦勝国の賞味期限と、敗戦国のしたたかさ

          8月14日、平壌から板門店まで汽車で移動したモリは韓国政府の高官に出迎えられ、ヘリでソウルの大統領府へ移動する。 韓国と中南米諸国間の防衛協定に則り、中南米軍の最高司令官として光復節の式典に参列する。 司令官という肩書にしたのも、政治の色合いを少しでも薄めたい韓国側の意向なのだそうだが、モリは疑問視していた。式典の翌日16日には韓国とベネズエラの首脳会談が行われるからだ。 大半の人がモリを大統領だと見なしているのに、軍の最高司令官だと言い張った所で、何も意味を成さないと思うの

          (3) 戦勝国の賞味期限と、敗戦国のしたたかさ