見出し画像

デジタル通貨は世界を変えるか?

FacebookによるLibraや中国政府によるデジタル人民元など、デジタル通貨に関するニュースが世間を賑わせています。

デジタル通貨というと、人によってはビットコインをはじめとする仮想通貨のトレンドを想起されるかもしれませんが、個人的にはやや違う整理をしています。

ビットコインは当初、送金や決済(支払手段)の為に開発されましたが、今のところそれらの実用にはあまり向かず、投機の手段になっているのが実情ではないでしょうか。

これに対してデジタル通貨は、その価値が一定の資産に連動するように設定され、送金・決済などに使用しやすいよう実用的な設計になっています。

デジタル通貨のトレンド

日銀は「中央銀行発行デジタル通貨」について、次の3つを満たすものと説明しています。(1)デジタル化されていること、(2)円などの法定通貨建てであること、(3)中央銀行の債務として発行されること。

また日銀は欧州中央銀行と共同でProject Stellaを進めています。これは分散型台帳技術(DLT)の登場が金融市場インフラに対してもたらし得る潜在的な利点や課題を検証することを目的とするもので、主に国際間の送金に焦点をあてているようです。

その一方で中国政府は先日、ブロックチェーン技術に基づくデジタル人民元の発行可能性について示唆する発表を行いました。これにより、これまで国際的な基軸通貨として不動の地位を築いていた米ドルにとってかわろうとしているのでは?との論調がなされています。

中国政府の野望?

デジタル通貨は、キャッシュレスとの関連性が強いトピックでもあります。

中国はスマホ決済によるキャッシュレス化が浸透している国として有名ですが、その大半をアント・フィナンシャル(Alipay)とテンセント(WeChat Pay)の二強が占めています。デジタル人民元の発行に向けて、これらプレイヤーを無視することはできません。いずれは彼らも政府の枠組みの中に取り込まれていくのではないでしょうか。逆に言えば、民間の大手二社さえ押さえてしまえばいっきにデジタル人民元が普及することになるので、中国政府にとっては素晴らしいお膳立てが既にできていると言えるのかもしれません。

中国の場合には、まず商業銀行に限定して試験的に導入すると見られており、最初の入口としては国内の大口決済など一部の利用に特化した形で活用されそうです。

しかしAlipayやWeChat Payは既に中国外でも多くの国で商業利用されており、日本でも店頭でこれらのロゴを見るのは珍しくなくなってきました。これら中国系のスマホ決済がデジタル人民元ベースになれば、あっという間に世界中に流通することになります。

また、シンガポールやマレーシアといった東南アジアの国々では華僑が大きな経済力をもっている国も多く、デジタル人民元がこれら経済圏を取り込むことは難しくないのではないのでしょうか。

中国の掲げる一体一路構想に向けて、強力な一手になります。

Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOは、たとえLibraが実現せずとも中国などがデジタル通貨を発表して圧倒的な地位を築くだろう、と繰り返し訴えてきました。まさにこういった、米国にとって危惧すべき現実に向けて着々と進んでいるように見えますね。

というわけで、デジタル通貨は個人的にとても面白いテーマだと感じています。次回は、デジタル通貨を導入することのメリット・デメリットや、金融政策への潜在的影響、そして日本での導入検討についても考えてみたいと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?