12.昼下りのワルツ

時はダンパが終わった少し後、5月半ばにさかのぼる。

初めてのダンパを経験し、部活ではいよいよ本格的な競技ダンスの種目に突入した。

「今日からワルツを覚えてもらいまーす!」

「ワルツ」か。聞いたことはあるけど・・・。

「ワルツはハプスブルク帝国を起源としててね、ウィーンの王宮なんかでも踊られていたんだよ。」

へぇ〜、貴族の踊りなんですね。

「そう、昔はね。今はインターナショナルスタイルと言って、一般的に踊られているものが、これからやるワルツだよ。」 

一般的には踊られていないと思うんですが・・・。

「よし、じゃあまず見本を見せるね。」

私はこの後、今までのダンスがお遊びに過ぎなかったことを思い知るのである。

ゆったりとした3拍子の曲が流れだす。

先輩のカップルがおもむろにホールドを組む。

・・・なにぃ!?


私は目を疑った。

確かにホールドの形はこれまで教わったものであるが、その距離感は近いどころではない。

もはやゼロだ!


お腹とお腹、腰と腰、太ももと太ももが明らかに接触している。

密着である。


マ、マジか!?

こんなことがこの日本国において許されていいのであろうか?

付き合ってもいない男女がこんなにもカラダをまさぐりあっていいものなのか?

いーいんですっ❗


私の今までの価値観は完全に崩壊した。

これが合法だとはにわかには信じ難い。

最初からコレ教えてよ〜。


先輩のカップルはその状態のままゆっくりと踊りだした。

踊り出しても密着は崩れない。

そのままフロアを大きく移動していく。

時にはターンしながら。時には男女が入れ替わりながら。

しかしその間も密着が崩れることはない。くっつきっぱなしである。

なんと羨ましい!

・・・い、いやなんと優雅な。

結局踊り終わるまで先輩達のカラダが離れることは一度たりとも無かった。

スゲー❗やっぱ社交ダンス、スゲー❗


今までとはレベルが違うぜ! (密着の)

よーし、早速オレも!

意気込んでる私に例の先輩が声を掛けてくる。

「どう、坊や。今までのパーティーダンスとは全然違うでしょ。」

はい! 早く組みたいです!

「ダ〜メ💋 まだ早いわ。」

えー、何でですかー?

「だってまだステップ覚えてないでしょ。」

あっ、そうか。

「早くステップを覚えなさい。

そしたら組ませてア・ゲ・ル💋」


よっしゃー、頑張ってとっとと覚えてやるー!

こうして私はモチベーション高くワルツの練習に取り組み始めたのであった。

やっぱり原動力はシタゴコロな私。


次回、果たしてセクシー先輩とは無事組めるのか!?

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