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SFショート チャーハンが消えた日


世の中からチャーハンが消え、早いもので3年の月日が経過していた。

3年前、政府が突然チャーハン禁止法を制定、施行したのだ。

一つ目の理由は世界的な人口増加、異常気象、農家の高齢化後継者不足、  作付面積の減少による深刻な米不足だ。

二つ目の理由は、チャーハン革命が起きたことだ。技術の進歩により    10年前に比べチャーハンが圧倒的にうまくなり、ラーメンを凌駕し、    国民食のトップに立ったのだ。

食堂、スーパー、コンビニ、メーカーの冷凍チャーハン、家庭で作る  チャーハンまで革命の流れは押し寄せ、もはや誰にもその流れを止める   ことはできなかった。

国民が一日3食チャーハンを食べる事が当たり前になった。


この流れは世界中にあっという間に広まり、世界的米不足で飢饉が     起きるほどだ。


                *


ぼくはいつものように仕事を終え、家に帰り、いつものように       テレビを見ていた。

「本日、T都S区で25歳と23歳の男二人がチャーハン禁止法違反      の現行犯で逮捕されました」                      

「挙動不審な男がいると警察に通報があり、警察官が近くに        いた男2人に職務質問をしたところ、チャーハンの材料5g         (末端価格で15万円相当)を隠し持っていることが判明」

「同法違反の逮捕者は今年に入り全国で83人に上ります」


「またか」ぼくはつぶやいた。それにしても何とかチャーハン       が食べたいものだ。

食堂、スーパー、コンビニからチャーハンが消え、メーカーも       冷凍チャーハンの製造中止。

家庭のキッチンの天井にはチャーハンセンサーの設置が義務付け      られ、音、においや隠れてチャーハンを作ろうとする微妙な動き      まで察知でき、警察に自動通報するシステムになっている。          変な動きはできない。


そうだ! ぼくは冷蔵庫の奥までくまなく探してみた。         あった、チャーハン禁止法が制定される前に買っていた          冷凍のザ・チャーハン。処分せずに隠し持っていたやつだ。

その夜、妻と子供が寝静まってから、ぼくはそっと電子レンジを      洗面所に持っていき、ザ・チャーハンを皿に移し、電子レンジの      スタートボタンを押した。

ブーンという音が鳴り、
中が光っている、あと30秒、あと20秒、あと10秒、そしてチーン。

ピンポーン、そのとき、玄関のチャイムが鳴った。           「警察です、開けてください」
えっ、どうして警察が、ぼくはドアを開け「何か」と素知らぬ顔で聞いた。

「とぼけないでください、いまチャーハン作っていましたよね、あなたが 使っている電子レンジは最新型でどんな料理を作っているか、何を温めて  いるか識別し、チャーハンだと判明したら警察へ通報されるシステムに  なっています」

「チャーハン禁止法違反の現行犯で逮捕します」

「待ってくれ、ぼくはただうまいチャーハンが食いたくて、       待ってくれ  頼む  ウォー」


                 *


それから長い年月が経った。。                     辞書、雑誌などすべての書物から「チャーハン」の文字が消えた。     チャーハンのことを知る人さえ誰もいなくなった。

ある日の事、町の中華食堂の前に看板が出た。

    「新発明、いろんな具とご飯の炒め物始めました」                       

そのうまさが評判になり連日行列ができている。

          

—あとがき—

いつか本当にチャーハンが食べられなくなる日が来るかも         知れません。何が起きてもおかしくない世の中です。

久しぶりに薫風飯店のチャーハン食べに行くか!!

                               おしまい