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【中薬を故事で学ぶ】 柴胡の故事 〜内容的に「柴慢」と名付けて欲しかった薬草〜

このnoteでは中薬の故事(由来となった話)を書いています。

ただただ中薬の名前を覚えるのは大変です。
でもストーリーで覚えると記憶に定着しやすくなります。

今回ご紹介する中薬は「柴胡(さいこ)」です!

柴胡は、大柴胡湯(だいさいことう)や小柴胡湯(しょうさいことう)を始め、

  • 乙字湯(おつじとう)

  • 十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)

  • 抑肝散(よくかんさん)

  • 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

など、とても多くの漢方薬に含まれています。

そんな柴胡ですが、故事を読んだ後は「柴慢と名付けて欲しかった!」と感じてしまうと思います。

「なぜ柴慢?」

その謎は、故事を最後まで読むと解決します。

どうぞ、お楽しみください!


柴胡の故事

昔、中国の地方に胡進士という人がいました。

胡進士の家には「二慢」という名前の長工がいました。
※長工:常雇いの作男(長期間雇われて耕作する男)

ある秋の日、二慢は「寒熱往来」の症状を示す疫病にかかりました。

胡進士は二慢が働けなくなることや、その病気が家族に感染することを危惧し、「二慢、もはやお前は必要ない。去るがよい。」と彼を追い出しました。

二慢は哀願しました。

「私には帰る家も友もないのです。どうしてこんなに病んだ状態でどこへ行けばいいのでしょうか?」

しかし、胡進士は冷たく言い放ちました。

「私には関係ない!君は1日働いたら、私は1日食事を提供する。働けないのなら、お前を養う理由もないのだ。」

二慢は怒りを露にし、「何年もあなたに忠実に仕えてきました。どうしてこんなに冷たくするのですか!」と叫びました。

周りの労働者がこのやり取りを聞いて動揺しないよう、胡進士は急いで二慢に金を渡し、「病気が治ったら戻って来い。」と言いました。

二慢は仕方なく金を受け取り、家を後にしました。

彼は寒気がしたかと思うと、今度は熱くなるという不思議な症状に困惑していました。

その上、両脚が痛むので歩くのもままなりませんでした。

彼は彼は池のそばに辿り着くと雑草の中に横たわり、一日中そこで過ごしました。

喉の渇きと空腹に苦しみ、力を振り絞って近くの草の根を掘り食べました。

そうして7日間、彼はその場所を動かずに草の根を食べ続けました。

7日後、彼は立ち上がってみると、不思議と体に力が戻ってきたのです。

彼は元気を取り戻し、胡進士の家に戻りました。

胡進士は二慢を見るなり、眉をひそめて言いました。

「どうして戻ってきたんだ?」

「病気が治ったら戻ってくると言ってくれたじゃないですか?

「病気は完全に良くなったのか?」

「はい。なので、これから仕事に戻ります。」

二慢はそう言い終わると、クワを担いで畑に向かいました。

胡進士は驚き、疑念を抱きつつも二慢を受け入れました。

二慢は以前と変わらず働き始め、それ以降は病気にかからなくなりました。


数日後、胡進士の息子が同じ症状で病に倒れました。

寒くなったり熱くなったりする症状は、まさに二慢の病と同じでした。

胡進士には子供はこの息子しかおらず、とても心を痛めました。

胡進士は多くの医者を呼びましたが、誰も治すことができませんでした。

そこで胡進士は二慢のことを思い出し、彼を呼び寄せて尋ねました。

「以前、お前が病気になったとき、何の薬を飲んで治したんだ?」

二慢は「私は薬を飲んでませんよ。」と答えました。

胡進士は驚きました。

「薬を飲まないでどうやって治したんだ?」

二慢は「自然に治ったんです。」と答えましたが胡進士は信じませんでした。

「何か食べたんだろう?さっさと教えろ!」

彼が食べていた草の根について話しました。

「あなたの家を離れた後、村の外にある池のそばに辿り着き、そこで倒れました。その時、私はお腹が空いたので、その場に生えていた草の根を掘り食べました。」

胡進士は「何の草の根を食べた?早くそこに連れて行って教えてくれ!」というと、二慢の返事も待たず彼を連れ出しました。

二慢は胡進士を池のそばに連れて行きました。

彼は食べた草の根を抜いて、それを胡進士に渡しました。

胡進士は急いで家に戻り、その根をきれいに洗い、煎じて息子に飲ませました。

数日間、息子はこの「薬」だけを飲みました。

すると、息子も回復したのです。

胡進士は非常に喜びました。

そして胡進士はこの草に感謝の気持ちを込め、名前を付けたいと思いました。

彼は考えた末、この植物が元々、薪(柴焼)として燃やしていたものであり、自分の姓が胡であることから、「柴胡」と名付けました。

おしまい


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