2023年の曲ベスト20

 2023年、音楽ファンとして思うことも色々ありました。人気が期待されるアニメにJ-POPの人気ミュージシャンが起用されるケースは当たり前になりましたが、2023年はドラマも話題作が多かったなと思います。音楽的にはミュージシャンも多数出演した『パリピ孔明』、King GnuのMVにも出演したドラムが話題となった『VIVANT』もヒットしました。個人的にもドラマをよく観た年であったので、それが反映されたランキングとなっています。

20位 麻美は見た(fox capture plan)

 2023年の1月から3月まで放送されたドラマ『ブラッシュアップライフ』。バカリズム脚本による安藤サクラ演じる女性が人生を何度もやり直していく話で、考察大会や、時代時代に流行ったものが登場することも話題となりました。音楽面でも、平成の名曲たちがドラマ内に登場し、レミオロメン「粉雪」等を登場人物がカラオケで歌唱するシーンや、各話違うエンディング曲が使用されました。

 そんな中でも、印象的であったのがfox capture planによるサントラでした。ピアノトリオとして活動する一方、『カルテット』や『コンフィデンスマンJP』のサントラでも知られる彼らですが、『ブラッシュアップライフ』の様々な場面に合う楽曲でした。SF的な設定ながらも地元での日常がひたすら描かれるドラマだったこともありメインテーマもその印象。死後の案内人とのシーンでは輪廻転生を感じるインド的な音楽。ドラマ内で描かれる劇中のドラマでは、アクションモノなこともあり緊迫感ある音楽。感動的なシーンの音楽等。「麻美は見た」は本来のピアノトリオの印象が強いサウンドで、登場人物が大きな告白をした後のシーンでも使用されました。

 ドラマのシーンに合ったサウンドはどれも素晴らしかったのですが、やはりピアノトリオを感じるこの曲に彼らを魅力を楽しめます。


19位 ギャルになりたい(吉澤嘉代子)

 EP『若草』に収録された楽曲。Momがアレンジを担当しました。MomはAppleTV CMの「あかるいみらい」が話題となり、ゴスペラーズやサニーデイ、ももクロにも楽曲提供を行っています。

 Momのアレンジにより、これまでの吉澤にはなかったようなサウンドになった点も良かったです。

https://youtu.be/MEZ_pTxCM28?si=rpL6BIMjBdcZwQ-g

 「ギャルになりたい」という歌詞に共感が持て、この曲に合わせてギャル化した吉澤嘉代子も楽しそうでした。


18位 本音と建前(Sexy Zone)

 椎名林檎の作詞作曲編曲という事でも話題となった楽曲。菊池風磨主演ドラマ『ウソ婚』エンディング曲。演奏も椎名林檎が今年開催したツアー『椎名林檎と彼奴等と知る諸行無常』とほぼ同一の演奏陣。

 林正樹のピアノの高貴さ、名越由貴夫のギターの不穏さ、石若駿のドラムのおしゃれさ、鳥越啓介のウッドベースの心地よさ。それをもったいないと言わせない色気たっぷりのセクゾの歌声も含め、すべてが良質のポップを構築しています。

 歌詞も印象的で、「真相に関心ない外野の機嫌など窺うの止した」、「裏も表もないですごめんねもう全俺が愛だぜ共犯関係でしょう」なんて歌詞は、まさしくファンの需要を理解した歌詞。椎名林檎が提供先セクゾとファン(セクラバ)へのリスペクトも感じるさすがの裏方作家志望です。(裏方にいかないで!)

 数年前からSexy Zoneは改名を検討していたそうで、昨今の所属事務所の問題の影響もあり、改名する決断をした今、決めゼリフの「Sexy」も貴重に思えます。シティポップやR&B等のサウンドを取り入れる近年のセクゾは、改名後の音楽的期待値も高いです。

17位 サニーサイドへようこそ(笹川真生)

 同名の2ndアルバムに収録された「サニーサイドへようこそ」は、イントロから変則気味のサウンド。不穏さがありつつスタイリッシュなAメロ・Bメロを経て、サビはそこから解放されていく曲作りがクセになります。MVの世界観も画質が悪い映像も印象的です。

 笹川真生は”豆腐屋”、”なぎさ”、"mao sasagawa"と名義を変えながらボカロPとしての活動を経て、現在はシンガーソングライター・笹川真生として活動しています。


16位 熱風は流転する(WONK Remix)(フィロソフィーのダンス)

 元々は、ギターとホーンが印象的なロックという印象でしたが、そこにWONKによるRemixに生まれ変わりました。女性アイドルのリミックスという初めての経験の中、「WONKらしさを残したい」と制作しました。

 元の曲調に合った歌詞や歌唱なので、サウンドがロックからチルいサウンドになり、違和感はあるのですが、その違和感がクセになりました。フィロのスのリミックスにも注目です!


15位 ポラロイド(新東京)

 キーボードを中心に演奏全体が躍動している様に思うのが新東京の「ポラロイド」。

 新東京はギターレスな4人組バンドで、バンド組織を法人化し会社を設立している。”東京”を名乗っているだけあり、都会的なサウンド歌詞が味です。

 MVの内容も印象的な彼らは彼らでしか成し遂げられない形で、もっと大きくなっていく予感がしています。


14位 美しい鰭(スピッツ)

 劇場版『名探偵コナン』シリーズ第26作目として公開されたのが『名探偵コナン 黒鉄の魚影』であり、そのテーマソングに起用されたのがスピッツの「美しい鰭」でした。

 劇場版のコナンでは、コナン以外のキャラクターがフィーチャーされるのが近年のお約束となっていますが、今作では人気キャラながら、意外とフィーチャーされてこなかった灰原哀。灰原の心情を描いた歌詞も、話題で考察されていた点も作品へのリスペクトがあります。スピッツ印ある瑞々しいポップスながら、Aメロの変則的リズム、サビでの裏声と実はトリッキーなこともさらっとこなしているところに、流石のベテランと思わせてくれます。

 30年も活躍するバンドが、ここにきてヒット作を生み出して最近のミュージシャンとチャートで渡り合ってる姿は、スピッツを聴いて育ってきた世代としては嬉しいです。


13位 Blueberry Pie(由薫)

 ドラマ主題歌「星月夜」は作曲をワンオクのToruが行なっていますが、この曲はMonkey Majikがサウンドプロデュースを行っております。そのため、洋楽的な印象がありますが、由薫自身「洋楽と邦楽の間を漂うような曲を作っていきたい」とコメントしております。

 「星月夜」の繊細さとはまた違う軽やかさを感じます。10月期のドラマ主題歌にも「Crystals」が起用されており、2024年には1stアルバムとなる『Brigher』も発売されます。

12位 私は猫の目(椎名林檎)

 なるべく同じミュージシャンの関連作品が被らないようにしようとはしていますが、椎名林檎2曲目となることをお許しください。椎名林檎が2018年以来のツアーを開催した2023年。『椎名林檎と彼奴等と知る諸行無常』で披露され、その後シングルとしてリリースされました。

 林檎・事変の猫ソングはいくつかありますが、タイトルも猫で、楽曲やMVにもユニークさもみえつつも高い音楽性をこなしているのが流石の林檎さんです。


11位 2 Μ Ο Я O(King Gnu)

 4年ぶりのアルバムとなった『THE GREATEST UNKNOWN』も揮発曲のアルバムアレンジや、インターリュードもあって良作でしたが、新曲もタイアップやタイアップを想定した楽曲が多い中、楽曲としても興味深い作品が多かありました。

 常田が出演したシャンプーのCMであることもあり、常田ボーカルメーン曲でしたが、服を着たまま風呂へ入るという(笑)常田が、セクシーに歌っています。サウンド的にはホーンが楽曲を引き立ててくれてます

https://youtu.be/mplhKsWp8gQ?si=qtcVxpOsINsF4ipg

 収録アルバム『THE GREATEST UNKNOWN』のPR動画でドラムの勢喜遊が同CMのパロを宇宙人の変装でやってる姿も注目です。


10位 Queencard((G)I-DLE)

 私の推しの一人である私立恵比寿中学の桜木心菜がカバーしたことにより認識し、好きになった曲です。イントロのリズムから惹かれる楽曲です。メンバーには韓国、中国、台湾、タイ出身のメンバーが所属しています。

 「Queencard」は6thミニアルバム『I feel』のタイトル曲でした。ありのままの自分を可愛がってほしいというメッセージ性も素晴らしい内容です。

 なお、THE FIRST TAKEでも披露され、歌唱力のみでもパフォーマンスしています。



9位 ORANGE(feat.MC waka)(星野源)

 世界陸上とアジア大会のテーマ曲「生命体」等を担当した2023年の星野源。オードリー若林正恭との番組『LIGHTHOUSE』でも話題となりました。そんな若林がMC wakaとして参加したのが「ORANGE」。若林は以前にもmiwaのライブでラップを披露したり、星野源のオールナイトニッポンでの「Pop Virus」でのラップも注目されました。

 「阿佐ヶ谷 高円寺 朝方 オレンジ」の韻の踏み方も心地よいし、太田田中、前健さん、有村崑と若林ならではの固有名詞が登場する点も面白い。

 若林らの半生を描いたドラマ『だが、情熱はある』でもKing & Princeの高橋海人演じる若林が「ヒップホップが好き」と発言するシーンもありましたね。


8位 こっから(SixTONES)

 若林の話からのこちら。『だが、情熱はある』でもう一人の主人公・南海キャンディーズの山里亮太を演じたのがSixTONESの森本慎太郎。まさかの見た目からの再現度の高さも驚きでしたが、それ以上にオープニングとエンディング曲(第7話以降はKing & Prince「なにもの」が担当)に起用された「こっから」には驚きました。

 ラップ担当田中樹以外のメンバーもラップ。それでいて生演奏のサウンドもファンクサウンド。ヒップホップとファンクの融合的サウンドがかっこよい。歌詞も、憧れ嫉妬しながら情熱を燃やしていく、山里や若林をかっこよく描いた内容に感じます。

  6人がそれぞれ異なる音楽を好み取り入れることにより、多彩な音楽がグループの楽曲として成立しているのがSixTONESの良さに思いますし、歌唱レベルも中々高いので、今後ボーイズグループとしての新たなあり方も提示してくれるでしょう。


7位 eden(ひかりとだいち love SOIL&"PIMP"SESSIONS)

 かつてFolderで共に活動し、その後、ソロシンガー兼ダンサーとして唯一無二の地位を築いた三浦大知と、女優として活躍し、シンガーとしての活動も行う満島ひかり。その二人のコラボに、DEATH JAZZを名乗るSOILの演奏というForder時代のダンスミュージックとはまた違う音楽に乗っかったのが新鮮でした。

 SOILはドラマーみどりんの逮捕・脱退がありました。一時サブスク配信停止(その後再開)にもなってしまうショッキングな出来事でしたが、その後の活動再開。ドラムはサポートに参加してもらう体制を取っています。


6位 スケベなだけで金がない(礼賛)

 タイトルにまず驚かされますが、お笑いコンビ・ラランドのサーヤがCLRを名乗りボーカル・ソングライターを務めるヒップホップバンド。ギターには晩餐を名乗るバンド掛け持ちモンスター・川谷絵音。ベースは春日山こと休日課長が担当しています。

 CLRのセリフから始まるこの曲は、「スケベなだけで金がない」をリズム感たっぷりで、口ずさみやすいフレーズです。そんなパワーフレーズに上質な演奏が入るのが礼賛の楽曲の中でも特に印象的です。

 ライブでは、「スケベなだけで金がない」をコール&レスポンスするシーンはシュールではありますが楽しいです。


5位 ブラックコーヒー(DISH//)

 2023年は、『情熱大陸』で密着されたDISH//。Vo.北村匠海の俳優としての活躍が目立ちながらも、DISH//としてもアルバム『TRIANGLE』やEP『HAPPY』を制作。多くの楽曲を自身の制作にシフトした2023年、他者制作のシングル曲とメンバー制作の楽曲が並んだ作品であった『TRIANGLE』の中でも、DISH//全員が作詞作曲を担当したのが「ブラックコーヒー」でした。

 あいみょん提供の大ヒット曲「猫」に象徴されるように、他者制作楽曲で人気を獲得してきたDISH//は、一方で自身制作楽曲でなければ実力とはいえないという葛藤があり、その中で制作されたことが『情熱大陸』でも取り上げられていました。

 骨太のロックナンバーでタイトルの通り、苦い想いを飲み込む楽曲が印象的でした。矢部のギターがその苦さを象徴しているように思います。

 DISH//は独自の地位を築きつつあり、フェスにも多数出演してる中、自作楽曲にシフトしているので今後も飛躍していくと思います。



4位 Hyper(Kroi)

 テレビアニメ『アンダーニンジャ』のオープニングテーマです。歌い出しからロックとヒップホップとファンクの融合を全面に押し出しています。

 ミュージックステーションや週間ナイナイミュージック等、地上波の音楽番組への出演も増え、今後の活躍も期待です。


3位 yonaki(BREIMEN)

 ベースボーカルの高木が「喜怒哀楽だけには収まらない複雑かつ絶妙な人間の感情。」を表現したという「人力セルフサンプリングトラック」。ブラックミュージック要素の強いメンバーにはサックスも所属しています。メロウなサウンドも好みでした。

 ポルノグラフィティ岡野昭仁とKing Gnu井口理とのコラボ曲「Melody」も制作していたBREIMENですが、2024年より、King Gnuらも所属するアリオラジャパンからメジャーデビュー予定です。今後も期待ですね。



2位 2○45(millennium parade & 椎名林檎)

 ついに実現したというべきか。常田大希と椎名林檎(椎名林檎関連3曲目、常田大希2曲目となりました笑)のコラボ。King Gnuの前身、Srv.Vinci時代から交友関係があったという二人。アニメ『地獄楽』のテーマ曲となった「W●RK」。椎名と常田の歌が掛け合う楽曲はMVと共に「とんでもねぇカッコよさ」以外の言葉が見つかりません。(語彙力)

 タイアップのために制作された「W●RK」に対して、それとは別に制作されていたのが「2○45」です。2019年から目的もなく制作されていた楽曲は、作詞椎名林檎、作曲常田大希とクレジットされています。

 ベースの新井和輝は東京事変「能動的三分間」を意識したフレーズを入れたり、椎名林檎「長く短い祭」を連想するようなフレーズもあったり、林檎・事変リスペクトな点も大好きです。


1位 Summer Glitter(私立恵比寿中学)

 元々、挑戦的な楽曲の多かったエビ中。チルいナンバーは、人によっては”エビ中っぽくない”という感想を抱く人もいましたが、過去のエビ中の楽曲やライブでのカバーを追いかけてきた立場としては、意外性はありませんでした。歌声としても熱量がすさまじい歌、可愛い歌、コミカルな歌、クールな歌を歌いこなしつつ、チルさも表現できる器用さ。それもこの歌い方もしっかりフィットしています。

 K-POPが世界的人気を獲得する中、K-POPとJ-POPの距離感が一つのテーマになっていたように思います。世界的に注目されているYOASOBI「アイドル」はK-POP的な場面もありながら、サビは日本のアイドルポップス感もあるYOASOBI印という印象で絶妙な距離感だったと思います。

 K-POPっぽさを指摘されていた”サマグリ”ですが、実はサウンド的にはそこまでK-POP的ではなく、歌い方にK-POP的要素があるのにとどまっており、ボサノバ調のブラジリアンナンバーとなっております。RIP SLYMEの「楽園ベイべー」要素も指摘されました。ラップ部分もこなすのはさすがのエビ中。

 ”サマグリ”はさらに注目されても良い楽曲と思いますので、未聴の方は是非とも聴いてほしいです。

 12月リリースの「BLUE DIZZINESS」は、作詞を佐藤千亜妃、作曲は韓国作家とESME MORIな点にも、トレンドへの意識と、トレンドに流されすぎない意識のバランスも感じます。



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