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テレビ東京とnoteクリエイターでつくる! 連続ドラマ『知らない人んち(仮)』のシナリオ応募作品 「ドールハウスでオママゴト」 作 重信臣聡

テレビ東京とnoteクリエイターでつくる!
連続ドラマ『知らない人んち(仮)』のシナリオ応募作品
#テレ東シナリオコンテスト

「ドールハウスでオママゴト」
作 重信臣聡

登場人物
きいろ 筧美和子
アク 戸塚純貴
キャン 秋山ゆずき
ジェミ 長井短

◯リビング・ダイニング
 きいろ、ジェミがいる。

きいろ「普段はどんな写真撮ってるんですか?」
ジェミ「・・・」
きいろ「私、youtuberだから、そういうのも勉強した方がいいかなって」
ジェミ「・・・人形」
きいろ「人形?それって・・・」

 玄関ドアの開く音。

アクの声「ただいま」

 アク、スーパーの袋を持って台所に入ってくる。

きいろ「お帰りなさい」
アク「二人だけ?」
きいろ「はい」
アク「キャンは?」
きいろ「さあ、見てないです。部屋じゃないですかねえ」
アク「そう」

 アク、ジェミを見る。

きいろ「あ、ごめんなさい、手伝います」

 きいろ、台所へいき、スーパーの袋から食材を取り出し、冷蔵庫へ入れる。

アク「え、ああ、ごめん」
きいろ「いえ、こちらこそ」
ジェミ「出かけてくる」
アク「・・・」
きいろ「どこ行くんですか?」
ジェミ「空き地」
きいろ「さっきの?」
ジェミ「落し物したから」
きいろ「何落としたんですか?私もついて行っていいですか?」
ジェミ「関係ないでしょ!」
きいろ「すみません」

 ジェミ、リビング・ダイニングから出ていく。
 アク、ジェミについていく。
 きいろ、食材の片付けを続ける。冷凍庫を開け、中を見る。
 冷凍庫の中にはタオルに包まれた物体が6つ置かれている。
 きいろ、恐る恐る包みを開ける。中から不気味な泥まみれの子供の人形の一部が
 見える。
 玄関ドアの開く音。アクの足音が近づく。
 きいろ、包みを戻し、冷凍庫を閉める。

アク「どうかした?」
きいろ「いえ、何も」
アク「汚れてる」
きいろ「え?」
アク「手に土が」

 きいろ、自分の手を見る、手が泥だらけになっている。

きいろ「どこでついたんだろ、洗ってきます」
アク「いいよ、ここで洗いなよ」
きいろ「二階のトイレ行って、ついでにキャンさんに声かけてきます」

 きいろ、逃げ出すように台所から出ていく。

◯二階・洗面所
 きいろ、手を洗っている。
 きいろ、洗い終え、洗面所を出る。

◯二階・廊下・暗室前
 キャンが暗室の前に立っている。

きいろ「どうしたんですか?」
キャン「別に、なんでもないの」
きいろ「もうすぐご飯作ろうかって、アクさんが」
キャン「ああ、うん」
きいろ「見たことあります?」
キャン「何!?」
きいろ「いや、ジェミさんの写真」
キャン「ああ、うん」
きいろ「ここで現像してるんですよね、すごいなあ暗室がある家って初めてで」
キャン「そうかもね」
きいろ「はい、珍しいですよね」
キャン「きいろちゃんは見たの?・・・写真」
きいろ「いえ」
キャン「そう」
きいろ「なんかジェミさんを怒らせちゃったみたいで」
キャン「そうなんだ」
きいろ「はい」
キャン「気にすることないよ、行こ。ご飯でしょ」
きいろ「はい」

 きいろ、キャンに促され、先に階段を降りていく。

◯階段

 きいろ、キャンはゆっくり階段を降りる。

きいろ「私も見たいな。キャンさんは見たんですか写真」

 きいろ、キャンに背後から肩を強く、つかまれる。

キャン「やめよっか、写真の話」
きいろ「ごめんなさい」
キャン「気にすることないよ」
きいろ「・・・はい」

◯リビング・ダイニング

 台所でアクが大きな包丁で大きな肉の塊を切断している。
 時折、ドンッドンッと肉を切断する音が響く。
 キャン、ダイニングの椅子に座り、じっときいろを見つめる。

きいろ「・・・」
アク「手は洗えた?」
きいろ「洗えました」
アク「そう、よかった。座りなよ」
きいろ「はい」

 きいろ、キャンと少し距離を空けてダイニングの椅子に座る。

キャン「まだ見てないんだって」
きいろ「・・・」
キャン「写真」
アク「そうなんだ」
キャン「ねえ」
きいろ「・・・はい」
アク「きいろちゃんは」
きいろ「はい」
アク「地元はこっちなの?」
きいろ「いえ、一人暮らしです」
アク「味の好みとかあるかなと思って」
きいろ「ありがとうございます」
キャン「一人なんだね。バイトはやめちゃったんだよね」
きいろ「はい」
アク「好き嫌いある?なんでも食べられる?」
きいろ「大丈夫です、お腹すいてるんで」
キャン「アレルギーとか大丈夫?」
きいろ「金欠なので、食べられるものなら、なんでも、お腹いっぱい食べたいで 
 す」
キャン「じゃあたくさん食べないとね」

 キャン、突然立ち上がる。

きいろ「どうしたんですか?」
キャン「ご飯、よそってあげるね」
きいろ「いいです、あの、自分でやります」
キャン「そう?」
きいろ「はい、座っててください」

 キャン、きいろをじっと見つめる。
 きいろ、台所へ。
 アク、思い切り、包丁を叩きつけて肉を切る。
 きいろ、驚く。

アク「ああ、ごめん、そこにあるから、しゃもじ」
 
 きいろ、炊飯器を開けると中には泥が入っている。

きいろ「何これ」

 きいろ、背後からキャンに肩をつかまれる。
 キャン、にっこり笑顔で。

キャン「いっぱい食べさせてあげるね」

 キャン、炊飯器からしゃもじで泥を茶碗によそう。
 床に泥が飛び散る。
 きいろ、キャンを見つめる。

キャン「どうしたの?」
きいろ「・・・」
キャン「早く食べたい?」
きいろ「なんなの」
アク「遠慮しないでたーんと召し上がれ」

 きいろ、後ずさり、リビング・ダイニングから出る。

◯1階廊下

 きいろ、和室に走る。

◯和室

キャンの声「きいろちゃーん、お行儀悪いよー」

 きいろ、急いで自分の荷物を手に取り、玄関に向かう。

◯玄関

 きいろ、ドアノブに手を伸ばす。ドアノブに触れようとした瞬間、ドアノブが回
 る。
 きいろ、後ずさり、ドアを見つめる。
 ドアがゆっくりと開いていく。

つづく


劇作家。演劇、ミュージカル、オペラの台本作家です。