振り下ろす拳が空を切る

親愛なる僕の憂鬱よ
邪推なこの世界を許して
残念ながら今後も変わらないだろうけど

際限なく感情が溢れ
反射的に注いでしまうんだが
まだ前のが残っていて 仕方なく薄めて飲む

もう随分 長いこと自分に期待を寄せていない
別に諦めたわけではない そういうのじゃないんだけど

振り下ろす拳が空を切る
闇の中で描いてみる理想の自分を重ねて
それでも身体は起き上がる
間違ってもないのに敗ける この仕組みを睨みつけて
憎めなくて

拝啓 昨日までの僕等へ
受け取ったバトンが重いよ
幾度も落っことしたんだな 補修だらけ 握りづらい

あっという間に日は沈み 明かりがぽつぽつと灯る
導かれるように追いかけて どこへ行けるだろう

老いぼれた眼が夢を見る
必要ではない 似合ってもない だけどじっと目を逸らさず
限りある時の只中で
ひとり 真っ直ぐに 疑わずに 走り抜けるその偉大さよ

振り下ろす拳が空を切る
闇の中で震えている架空の自分を責めないで
必ず心は立ち上がる
間違っていない 夜が明けて この痛みが癒えなくても
憎めないんだよ

P.S. これからの僕等へ
稚拙なこの世界を愛して
僭越ながら今後も変わらないであろう でも

#489  2021.1.30

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